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2002年12月29日(日) テーマは『脂肪肝』

今週のドクター今週のドクターは、
順天堂大学医学部 消化器内科
竹井 謙之先生


【略歴】

’81年

大阪大学医学部卒業

’87年 ノースカロライナ大学医学部留
’98年12月 順天堂大学消化器内科講師

【ドクターの一言】
肝臓は永らく沈黙の臓器と言われていましたが近年肝臓の機能と病気に対する理解が急速に進みつつあります。生活習慣病と肝臓の関連は最たるもの。21世紀は肝臓が自らを雄弁に語り始めそうです。


CONDITION OF ILLNESS 病気と症状のメカニズム

データ今年も残すところ後少し。クリスマスから忘年会と追われるこの時期。皆さんもついつい飲み過ぎ、食べ過ぎになっていませんか?健康診断で肝臓に異常アリと言われた経験を持つ方も多い筈。そう、日本人の5人に1人肝臓にある病気を持っているんです。本来、健康な肝臓は血液や栄養分をタップリと含んで、赤褐色でスベスベしています。でも皆さんが気がつかないうちに脂肪がコッテリとつき、肝臓が白っぽくブヨブヨになってしまうのが、脂肪肝。脂肪肝を放っておくと、実は命に関わる病になる危険が一杯。例えば肝硬変。更には肝臓ガン。脂肪肝は、恐ろしい病の前触れだったのです。脂肪肝の最大の原因、それは肥満。食べ過ぎ、飲み過ぎで体に入った余分なエネルギー。そのほとんどが中性脂肪に変化して、体に貯えられます。肝臓にもたっぷり。肝臓に含まれる脂肪が5%を越えたら、それは立派な「脂肪肝」です。お腹が痛くなったり、腫れてたりする、特徴的な症状が脂肪肝にはなかったため、問題にされませんでした。しかし、最近の研究では、糖尿病や高血圧など、生活習慣病と脂肪肝の関わりが指摘されるようになり、以前とは見方が大きく変ってきました。脂肪肝と生活習慣病、その鍵を握っているのはインスリンです。インスリンは本来、血液中の血糖値を下げるホルモン。データしかし、それだけではありません。エネルギー源として蓄えるため「ドウ糖を中に取り入れなさい!」。そんな指令をインスリンは肝臓の細胞に出しているのです。この指令が妨害される状態を、「インスリン抵抗性」と呼んでいます。脂肪肝の場合、なぜかインスリン抵抗性が起こる場合が多いのです。脂肪細胞は脂肪を蓄えながら、何種類ものホルモンを作り出します。最近の研究で、それらのホルモンがインスリンが肝臓に糖分を蓄えさせる指令を邪魔する事が分かったのです。その上、インスリンには元々脂肪を溜める働きもあります。そのため、肝臓には益々脂肪細胞がついてしまう、という悪循環も起きていたのです。ここで登場するのがアルコール以外のカロリー摂取過多で起きる脂肪肝が悪化した肝炎。ナッシュと呼ばれています。脂肪肝になっている人が強いストレスや障害因子を受けたとします。すると、悪化はしないと考えられていた脂肪肝でも悪化が起こり、肝硬変を引き起こしたり、更にはば肝臓ガンへ繋がる。そんな因果関係が判明したのです。脂肪が作り出し、データ脂肪肝を悪化させるホルモンは色々ありますが代表格と言えるのがレプチンです。レプチンの特徴は肝臓野組織を繊維化させる事。脂肪肝の肝臓は肝炎になり、線維化を進めます。更に繊維化が進めば肝硬変、そして肝臓ガンへ。命の危険は確実に高まって行きます。20年前まで病気とは思われていなかった脂肪肝。しかし、その陰には「インスリン抵抗性」や「レプチン」など、凶悪な存在が潜んでいたのです。

脂肪肝をめぐる常識
脂肪肝は良性の病気
脂肪肝は悪化することはない
インスリン抵抗性が高くなる糖尿病の原因になる
非アルコール性脂肪性肝炎肝硬変肝ガン

インスリン抵抗性
インスリンの働きが低下して細胞内に
糖分が取り込まれなくなる
  インスリン抵抗性が高くなる
       糖分が取り込まれない
  血糖値が高くなる
       糖分が取り込まれない
インスリン
が分泌
脂肪がたまる

糖尿病

非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)
脂肪肝
 
ストレス などの障害因子が働く
レプチン
NASH
 
レプチン
脂肪細胞が産生するホルモン
線維化が進むと肝硬変・肝ガンになる
EXAMINATION 検査
【検査が必要なとき】
体重が3〜5年の間に5〜10kg増えたときは、肝機能の検査を受けましょう。
脂肪肝の検査
血液検査 肝細胞が壊れると出る酵素
GOT・GPTの値を調べる
超音波検査 肝臓の炎症の有無や
脂肪肝かどうかわかる
肝生検 肝細胞に含まれる脂肪の量や
細胞の線維化の進行度合を調べる
MEDICAL TREATMENT&MEDICINE 治療と薬
脂肪肝の治療
減量が一番効果的
 食事療法 1日20品目以上の食品をとる
 必要カロリー数:身長(m)×身長(m)×22×25Kcal
 運動療法 軽い運動を毎日15分以上行う
 治療薬 メトフォルミン
ピオグリタソン
【BMI Body Mass Index】
BMI = 体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)
標準・・・22 肥満・・・25以上
【作業強度】
あまり動かない人(デスクワークなど)・・・25kcal
身体を動かす人(肉体労働など) ・・・30kcal
FRONTIER 最先端技術
これまで脂肪肝自体を治せる薬はありませんでした。しかし最近、ある薬が注目を集めています。40数年前、その薬の激しい副作用は世界に大きな薬害をもたらしました。その薬の名はサリドマイド。しかし、副作用を取り去る工夫が近年研究されています。サリドマイドは脂肪肝治療に、かつて無い効果を期待される薬となるかもしれないのです。データ肝臓の脂肪細胞が生み出すホルモンの一つ、TNFアルファ。このホルモンは周囲の正常な肝細胞を壊し、厄介なインスリン抵抗性を作り出します。サリドマイドには、このTNFアルファの発生を抑制する効果があるのです。こちらは脂肪肝になったラットにサリドマイドを与えた場合と、サリドマイドを与えなかった場合を比較した映像です。データ与えたラットの場合、肝細胞の中にあった脂肪細胞が減り、正常な状態に近づいているのが分かります。多数の実験からも、TNFアルファに対するサリドマイドの効き目を立証するデータが得られています。現在研究されているのはTNFアルファに対する効き目を高めたスーパーサリドマイド。脂肪肝治療の現場からも大きな期待が寄せられています。
SELF MEDICATION 自己管理
生活習慣病である脂肪肝の予防や治療。それには食生活の管理が欠かせません。アルコールの摂りすぎには、十分気を配って下さい。アルコールネが全くいけない訳ではありません。適度な摂取は健康増進にも効果があるんです!

データ
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データ
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この「Jカーブ」と呼ばれるテータが示すように、少量の飲酒は、心臓や血管障害のリスクを下げてくれます。酒好きには嬉しいカーブです。では、飲み過ぎ、食べ過ぎてしまった人の場合、不健康な状態は何より血液に現れます、濁ってドロドロの血液になっているんです。犯人は中性脂肪。体内で余った糖分の大半は中性脂肪になって内蔵などに蓄積されます。脂肪肝も、中性脂肪が体内を巡って、肝臓の細胞にタップリと溜まったものです。
【食事】体内に中性脂肪が溜まるのを防いでくれる食べ物もあります。その代表格がサバイワシといった青魚!青魚に多く含まれるDHAEPAの働きで血液がサラサラになります。こうした効果を高めるのに一番良い食べ方は、火を通さず、刺し身などの生で食べるスタイル。脂肪が体内に溜まるを防ぐのは青魚に含まれるDHAやEPAといつた高度不飽和脂肪酸。勿論、脂肪肝の予防にも、これらを適度に摂取する事が必要です。
生活習慣病の中でも、糖尿病などに比べ、まだ軽く見られがちな脂肪肝。陰に潜む重い病気を避けるため、皆さん、食生活をもう一度見直しましょう!

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