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2002年12月22日(日) テーマは
『深部静脈血栓症』

今週のドクター今週のドクターは、
航空医学研究センター
三浦 靖彦先生


【略歴】

’82年

東京慈恵会医科大学卒業・第2内科学教室に入局

’88年 国立佐倉病院内科医長等を経て
’94年 東京慈恵会 医科大学講師
’98年 (財)航空医学研究センター研究指導部長

【ドクターの一言】
深部静脈血栓症は簡単な予防法で防ぐことのできる病気です。海外旅行を楽しく過ごすためにも機内では足の運動・マッサージと水分の補給に留意しましょう。


【著書】
「飛行機旅行における結核感染」
三浦 靖彦、福本正勝、津久井一平、
嶋田甚五郎、細谷龍男
日本医事新報
「いわゆるエコノミークラス症候群の現状と問題点」
三浦 靖彦、福本正勝、津久井一平
綜合臨床


CONDITION OF ILLNESS 病気と症状のメカニズム
データみなさん、覚えていらっしゃいますか?2002年サッカーの日本代表候補だった高原選手を襲った病気。「エコノミークラス症候群」!彼はこのために、ワールドカップに出場を断念しました。正式な病名は「深部静脈血栓症」という病気です。飛行機などの狭い座席に長い時間じっと座ることを強いられて・・・やっと到着して歩き始めた時、急に胸が苦しくなり、呼吸困難に・・・最悪の場合は、死亡することさえあるのです。実はこの病気、飛行機に乗ったときだけ起こるとは限りません。渋滞にはまってしまった「自動車」長距離の移動に利用する「列車」そして、データ日常のデスクワークでさえ起きる危険はあるのです。「足のむくみ」や「痛み」。これこそ「深部静脈血栓症」いわゆる「エコノミークラス症候群」の初期症状です。さらに症状が悪化すると、突然の動悸、胸の痛み、呼吸困難、さらには意識がなくなり、最悪の場合は突然死!「深部静脈血栓症」というのは、文字通り、深いところにある静脈に血栓ができてしまう病気です。足の静脈には皮膚の近くを走る「表在静脈」と深いところをはしる「深部静脈」があります。そこに血栓ができると「深部静脈血栓症」となるのです。立っている状態で足の血管を見てみましょう。血液がスムーズに流れているのがわかりますね。速さは、1秒間に12センチとなっています。次に座った状態での足の血管です。血液の流れはちょっと遅くなりました。データ速度は1秒間に5センチと、立っているときの半分以下です。さらに同じ姿勢で30分間じっと座っていてもらいます。すると血液の流れは・・・さらに遅くなっていることがおわかりいただけますね。速度は1秒間に2.5センチにまで落ちてしまいました。いったいなぜ、同じ姿勢で座っている血液の流れが遅くなってしまったのでしょうか?血液は、心臓というポンプによって送り出され動脈を通って体の隅々まで酸素や栄養を届けます。血液は今度は、老廃物を回収しながら静脈を通って心臓に戻されますが、静脈には血液を戻すポンプはありません。そこで、足のふくらはぎの筋肉がポンプの役目を果たします。しかし、そのポンプの力は心臓ほど強力ではありません。そのため静脈には、押し出された血液が逆流しないための弁がついています。データ長い時間同じ姿勢で座っていると、足の筋肉は収縮しないので血液を心臓に戻すポンプとしての働きが悪くなります。そのため血液の循環も悪くなって血液がたまり、血流が遅くなるのです。ふくらはぎを軽くもんむだけで、血液の流れは速くなります!海外旅行などで何時間も同じ姿勢を続けていると、足の血管に血液がたまった状態になります。たまった血液の水分は血管の周りに少しずつもれてきます。そのために「足がむくむ」という症状があらわれるのです。さらに、飛行機の中は乾燥しています。1時間に80ml近くの水分が、体から蒸発します。12時間のフライトなら人が一日に必要な水分、なんと、およそ1リットルが失われるのです。体の中の水分が不足すると、足にたまった血液は粘り気を帯びたドロドロ血液になります。そして、血液の塊「血栓」がつくられるのです。長い時間同じ姿勢で座ること。それが「深部静脈血栓症」の原因。そしてそのあと、立ち上がって歩く!筋肉が収縮して血液が流れだします。すると、足の静脈にできた血栓がはがれて血管の中を流れ出し、心臓を通って、肺の動脈につまってデータ肺動脈血栓症」を引き起こしてしまうのです。肺は血液に酸素を取り入れて二酸化炭素を放出する場所です。肺動脈がつまると酸素を取り入れることができなくなります。「息が苦しい」「胸が痛い」という症状を起こすのです。最悪の場合は、そう、突然死も招いてしまうことも。いったん「深部静脈血栓症」を起こすと取り返しのつかないことになる可能性があるのです!
深部静脈血栓症
足の深部静脈に血栓ができる
症状・・・むくみ・痛み・腫れ・皮膚の変色
肺動脈血栓症
足の静脈に出来た血栓が流れて、
肺の動脈に詰まる
症状・・・胸の痛み・呼吸困難・意識消失
EXAMINATION 検査
【血液検査】
血漿の中には、血液を固める作用のある「FDP」があります。
FDPの量が10μg/mlを超えていたら、血栓が出来ている可能性があります。
【肺血流シンチグラフィー】
軽い放射能を持った物質を使った検査。肺のどこに空気が入っているかをチェックし、次に血管に放射性物質を注入し、肺の中の様子をみる。肺に空気が入っているのに、血管の流れが止まっている場合、「肺動脈血栓症」の確定診断となる。
深部静脈血栓症の検査
肺動脈血栓症の検査
血液検査

超音波検査

血管造影検査
血液検査

心電図

CT検査
血管造影検査
肺血流シンチグラフィー
MEDICAL TREATMENT&MEDICINE 治療と薬
深部静脈血栓症の治療
坑凝固治療「ヘパリン」
  血栓が大きくなるのを防ぐ
血栓溶解療法「ウロキナーゼ」
  血栓を分解して溶かす
下大静脈フィルター
 

下大静脈フィルターを挿入して
血栓が肺に流れないように防止する

FRONTIER 最先端技術
データ静脈にできた血栓をカテーテルで取り除く。たとえば、カテーテルの先端にバルーンをつけて血栓を取り除く、カテーテルの先端から血栓を溶かす薬を注入するなどいろいろな治療法があります。しかし、血管を傷つける薬による副作用などいまのところデメリットも多いのが現状です。そこで、流体力学を応用して水で血栓を採り除くカテーテルが開発されました。まずは超音波検査や静脈造影で血栓がつまっている部分を確認します。そして、カテーテルが、静脈から血管を傷つけないように挿入します。データ血栓ポイントに到達したら、カテーテルの先端からは高圧の水が血栓にむかって噴射されます。水の圧力で血栓は粉々。砕け散った血栓は、水流にのって再びカテーテルを通り、回収パックに蓄積されていくのです。水の圧力で血栓を取り除くため、血管も傷つかず、副作用もなく、患者への負担も少ない。今、注目の最先端医療です!
SELF MEDICATION 自己管理
年末年始目前。この機会に日本脱出を目論む方も増える季節!長い時間、飛行機やクルマに乗っていること、多くなりますよね。心配なのは「深部静脈血栓症」。でも、ちょっと気をつければ、簡単に防ぐことができるんです。

データ











データデータ
【チェックその1】水分補給
水分は、血液の流れをスムーズにして血栓がつくられるのを防ぎます。人間に必要な水分量は体重1キロあたり1時間に1ミリリットル。60キロの人なら、1時間に60ミリリットルの水分が必要です。しかし、飛行機の機内は乾燥しているので通常の2倍以上の水分を補給しましょう。ただし、アルコールコーヒー、そしてお茶も、水分補給には適していません。アルコールやコーヒーなどに含まれるカフェインには利尿作用があり、水分補給どころか、かえって脱水症状になってしまうこともあるので気をつけてください。
【チェックその2】体を動かすこと
立ったり座ったりという動作を繰り返すだけで筋肉が収縮して血液の循環はよくなります。しかし、乱気流もありますから、飛行中に機内をウロウロ歩き回るのは危険ですよね。
そこでオススメ!座席にすわったままでの「足の運動」。座ったまま太ももを上げて足首を曲げ伸ばしするだけ。足の筋肉を動かすことで、血液が心臓に戻りやすい状態を作ってあげましょう。足の運動と一緒に、ときどき深呼吸することも大切です。深呼吸することで、足にたまった血液が心臓に戻る手助けになるのです。

小さな気使いが、あなたを深部静脈血栓症から
救ってくれる
のです!


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