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2002年11月24日(日) テーマは『肺炎』

今週のドクター今週のドクターは、
慶應義塾大学医学部内科学助教授
山口 佳寿博先生


【略歴】

’79年 慶應義塾大学大学院医学研究科修了
’82年 ドイツMax−Planck実験医学研究所留学
  慶應義塾大学病院呼吸循環器内科診療副部長等を経て
現在に至る

【ドクターの一言】
人類の歴史は感染症との戦いでもあった。種々なる抗生物質の開発は人命を救うと同時に微生物界の質的変化をもたらし耐性菌など問題をもたらした。これは抗生物乱用に対する自然界の警鐘である。


【著書】
・「呼吸器内科処方ノート」
 (編集)
中外医学社店
・「研修医のための呼吸器診療マニュアル」
 (分担執筆)
桂書房
・「内科研修マニュアル 」
 (分担執筆)
南江堂


CONDITION OF ILLNESS 病気と症状のメカニズム
データ「ゴホッ、ゴホッ」いやに咳がでる。身体がだるい。ただの風邪かと思って、放っておいたら大変。もしかしたら「肺炎」かもしれません。実は肺炎は、ガン心臓病脳卒中に続き日本人の死因第4位という、重大な病。特に多いのが年配者。肺炎の発症率は、70歳以上の老人が90%を占めているほどなんです。肺炎の症状は、風邪とよく似ていて見逃されがち。そのため、発見が遅れ、死に至ることがあります。寒くなるこれからの季節は要注意!鼻や口から吸い込んだ空気は、のど、気管などを通って肺に送り込まれます。データ肺の末端には、肺胞というところがあり、ここで酸素と二酸化炭素の交換が行われます。肺炎とは、細菌ウイルスなどが肺に感染して、肺胞炎症が広がった状態をいいます。風邪と肺炎の違いは、炎症が起こる場所。風邪は、鼻や喉のあたりに、ウイルスや細菌などが感染して、炎症が起こります。次に、気管や気管支などに炎症が及んだものを「気管炎」や「気管支炎」。データその先の肺胞にまで炎症が広がった状態が「肺炎」なのです。しかし、健康体であれば肺炎に感染する前に、防御してくれる機能が生まれつき備わっています。まず、鼻や喉では、線毛粘液が細菌やウイルスをキャッチして、くしゃみとして、口の外へ排出します。気管や気管支にまで病原菌が侵入したとしても、今度は、気管の内壁にある線毛が、咳や痰として排出してくれるのです。肺胞まで進んだ場合でも、マクロファージ白血球が戦って、病原菌を追い出そうとします。しかし、インフルエンザに感染した後や、お年寄りなど免疫カが低下している場合は、これらの防御機能が働かなくなり、肺炎に感染してしまうのです。肺炎を起こす原因は、主に3つ。細菌、微生物、ウイルスです。細菌」の代表的なものが、「肺炎双球菌」です。肺炎双球菌は、晋段から身体の中に住み着いているものですが、体カが低下したことをきっかけとして、急激に増殖します。こうした細菌の感染が原因で起こるものを「細菌性肺炎」といいます。肺炎の60〜70%は、このタイプ。細菌性肺炎は、急激に進行して重症化しやすいため、注意が必要。免疫力が低下しているお年寄りに多く感染するのが特徴です。症状は、風邪とよく似ています。肺炎のサインは、38度前後の高熱が一週間以上続くケース。データ肺胞内に細菌が侵入して増殖すると、白血球が集り、細菌を攻撃します。白血球からは、様々な物質が分泌されますが、その中の物質の一部が、血液中の温度を上げ、38度以上の高熱を出てしまうのです。ただし、お年寄りの場合は、熱がでないこともあります。次に、咳がひどく、長く続きます。そして、黄色い痰が出ます。細菌性肺炎は、黄色や緑色を帯びた膿のようなが出るのが特徴です。ひどい場合は、悪寒、倦怠感があり、肺胞への酸素の取り入れが悪いため、息苦しくなります。微生物」の主なものは、マイコプラズマです。マイコプラズマは、咳、痰からの飛沫感染がほとんど。こうした微生物によって感染した肺炎を「異型性肺炎」といい、肺炎の30〜40%を占めています。一般に、細菌性肺炎よりも症状は軽いのですが、若くて元気な人が突然感染します。発熱もありますが、特徴は痰を伴わない、強烈な咳。ウイルス」の主なものは、インフルエンザウイルスです。インフルエンザウイルスは、空中を浮遊し、広い地域で集団感染します。このウイルス性肺炎も、痰を伴わない、強烈な咳がでるという特徴があります。肺炎にかかりやすい時期は、風邪やインフルエンザが治ったかな〜とホッとしている時が、要注意なのです!
お年寄りの肺炎は肺炎双球菌が主な原因ですが、風邪をひいた後は危険な黄色ブドウ球菌など、若者ではあまり感染しないような菌にも感染してしまうのです。また炎症のため、食べ物を飲み下すことが出来にくくなり、重症化しやすく、治りにくいのです。さらに、熱がでない場合もあり、わかりにくいため、周りの人の配慮が特に必要です。「元気がない」「食欲がない」といった普段と違う様子が見られたら、なるべく早めに病院に行くようにしてください。
細菌性肺炎
(肺炎双球菌など)
異型性肺炎
(マイコプラズマなど)
ウィルス性肺炎
(インフルエンザ
ウィルスなど)
高熱・咳・痰・息苦しい 痰を伴わず、咳が出る
EXAMINATION 検査
【聴診・打診】
肺に炎症があると水泡がはじけるような音がします。打診では濁音がします。
【血液検査】
白血球の数、CRP(たんぱく質)の量、赤血球の沈降速度
【動脈血ガス分析検査】
肺のガス交換機能がわかります。
血液中の酸素濃度の正常値=83〜108mmHg
聴診・打診 肺炎かどうかの検査
喀痰検査 病原菌の検査
血液検査 炎症の程度を検査
X線・CT検査
病巣の部位、大きさを検査
動脈血ガス分析検査 血液中の酸素量を検査

データ
 
データ
【喀痰検査】
 
【血液検査】
データ
  データ
【X線検査】
 
【CT検査】
データ    
【動脈血ガス分析検査】
 
MEDICAL TREATMENT&MEDICINE 治療と薬
肺炎双球菌 マイコプラズマ インフルエンザウィルス
ペニシリン
ニューキノロン
カリパペネム
マクロライド
ニューキノロン
症状にあった治療を行う
【ペニシリン】
アレルギー反応が現れる場合があります。
【ニューキノロン】
妊娠中、授乳中の患者さんには服用できません。
FRONTIER 最先端技術
データ肺炎は、重症になると治りにくく、死に至ることもある恐ろしい病気。どうにか、肺炎を予防するワクチンが出来ないものか、昔から登場が待ち望まれていました 。そしてついに、「肺炎ワクチン・ニューモバックス」という予防薬がアメリカで開発されたのです。このワクチンは、肺炎を引き起こす、肺炎球菌の8割に有効で、安全性も高いのが特徴。平成元年から日本でも実施されていますが、残念ながらまだ保険の適用外で、使用している施設は数少ないのが実情です。特に、65歳以上のお年寄りには有効で、一度接種すれば、5年以上効果が持続します。また、肺炎は、風邪、特にインフルエンザに感染した後、二次感染により発症する事が多い病気です。そこで、インフルエンザウイルスを撃退する薬剤の開発が進められてきました。そして近年、ついにインフルエンザウイルスに有効な特効薬が登場したのです。それが 「ザナミビル」という薬です。ザナミビルは、インフルエンザウイルスの増殖に関与する、ノイラミダーゼという酵素を阻害するという、新しい作用をもたらす薬。 ザナミビルは、ウイルスが増殖する気道で、インフルエンザウイルスに作用し、新たな感染を防ぐ働きがあります。ザナミビルは、インフルエンザA型とB型、どちらのウイルスにも有効で、副作用がないのが特徴。ドライパウダー型の吸入薬で、インフルエンザにかかってから2日以内に吸入すると、効果があります。

データ
ザナミビルの立体構造

これはウイルスの3次元構造をもとに、コンピューター技術を駆使して設計されたという、画期的な薬なのです。オーストラリアの調査によると、インフルエンザにかかると、発症後2,3日は高熟が続きますが、ザミナビルを服用した過半数の患者は、24時間以内に高熱や筋肉痛などの全身症状から解放されたそうです。日本でも最近、ザミナビルの使用が認められるようになりました。今後も、肺炎に効果のある新薬の開発、新たな治療法に期待がかかります。
SELF MEDICATION 自己管理
これからの季節、多くなるのが冬場細菌性肺炎。細菌性肺炎の多くは、インフルエンザにかかった後に起こります。インフルエンザが流行した年は、肺炎の患者数が多くなるというデータもあるほどです。肺炎予防は、インフルエンザに感染しないようにすること。




データ
データ
データデータ
【インフルエンザの予防】
予防をするには、空気感染と、皮膚からの付着を防ぐ事がなにより大切です。
(1) インフルエンザを予防するには、「マスクをすること」です。インフルエンザウイルスは、より広い範囲で空気感染します。そのため、マスクが有効なのです。あなたの鼻や喉を守りましょう。また、
(2) 外出する時は、手袋をするのもウイルスの付着防止に効果的です。
(3) 皮膚からの付着を防止するには、「外出から帰ってきての手洗い」が必要です。帰ったら、すぐに手を洗う習慣をつけましょう。この時、指と指をこすり合わせて手を洗うのをお忘れなく。指の間は、意外と洗えていないものなのです。
(4) 最後は「うがい薬によるうがい」。インフルエンザウイルスだけでなく、その後の細菌感染の予防にも役立ちます。

日頃の生活習慣により、肺炎から身を守っていきましょう!


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