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2002年11月3日(日) テーマは『くも膜下出血』

今週のドクター今週のドクターは、
山王クリニック 院長
山王 直子 先生


【略歴】

横浜市立大学医学部卒、
研修後メイヨークリニック(USA)留学
日本医科大学脳神経外科講師、
付属多摩永山病院脳神経外科部長、を経て、
この4月より山王クリニック院長。脳神経外科学会専門医

【ドクターの一言】
くも膜下出血は命にかかわる病気。頭痛もちの方は一度専門医の検査を受けましょう。日常生活ではストレス・過労を避け禁煙を。毎日の生活習慣の改善が健康のための何よりの薬です。

【著書】
知っておきたい意識障害の診断と治療
内分泌疾患と意識障害(分担)
松本 清編
真興交易医書出版部
脳神経外科レビュー2001年度版(分担)
菊池 晴彦監修
三輪書店


CONDITION OF ILLNESS 病気と症状のメカニズム
データ今まで経験した事の無いような激しい頭痛が、突如襲って来る。それはまるでかなづちで殴られたような、頭の中に雷が落ちたような激しい痛み。これがくも膜下出血特有の発作です。くも膜下出血とは脳の動脈が破れてしまい、くも膜の下出血するという病気。死亡率が高く、およそ4割が発症と同時に死に至るというとても恐ろしい病です。しかもこのくも膜下出血は季節や時間、場所を問わずに突然現れる事がほとんど。くも膜下出血は心筋梗塞などと並んで3大突然死の一つに数えられています。くも膜とはどこにあり、どのように出血するのでしょう?私達の頭をちょっと触ってみると頭皮を通して固い頭蓋骨がわかります。この頭蓋骨に守られている私達の脳。実は頭蓋骨と脳の間にはいくつかの膜があります。頭蓋骨の内側にあるのが硬膜。硬膜はその名の通り弾力があまり無く、伸び縮みもしません。役割は脳を外部の衝撃から守る事。更に硬膜には神経が走っていて、痛みを感知します。頭痛はこの硬膜が圧迫されて起こるのです。データそしてこの硬膜の内側にあるのが、くも膜です。くも膜は繊維が集まって作られた膜で、クモの巣のように見えることから「くも膜」と名付けられました。くも膜は繊維で出来ているため硬膜よりも弾力があります。実はこのくも膜と脳の間には少し隙間があり、これをくも膜下腔といいます。この隙間には髄液が循環していて、脳はこの髄液によって水中に浮いたような状態になっているのです。髄液は外部からの衝撃を吸収し、脳を守るために役立っています。くも膜下出血が起こるとこの髄液で満たされている、くも膜下腔に血がたまり、圧力が上昇します。そして脳を圧迫してダメージを与え、これが突発的な激しい頭痛、さらには吐き気を催すのです。脳の表面にはたくさんの動脈が走っています。くも膜下出血はこの脳動脈が破れて、出血を起こしてしまうのです。脳の動脈が破裂してしまう原因は、血管にできたこぶ「動脈瘤」です。データこの動脈瘤は、ほとんど決まった場所にできます。血管が枝分かれする根元の部分です。動脈が枝分かれする部分に血流が当たると、流れの激しさから動脈の壁が薄くなり、風船のように膨らんでしまうのです。ここに血液が入り込み、膨らんで動脈瘤になります。人血管は通常、内膜、中膜、外膜の3つの層で出来ていますが、脳にある動脈の血管の血管壁が他の場所と比べると薄いのです。脳動脈瘤は血圧の上昇などで破れ出血、くも膜下腔に流れ出てしまうのです。データこれが、くも膜下出血のメカニズムです。脳は固い頭蓋骨で覆われているため、血液の逃げ場がありません。人間の脳は内側からのダメージにはとても弱いのです。くも膜下出血で特に注意しなければいけないのが、再破裂です。脳動脈瘤が破裂した時、動脈瘤の破れが小さいと、切り口が、脳の圧力や血栓によってふさがる事があります。出血が少ないので頭痛も軽くなります。そのため偏頭痛や風邪と誤解されて、見逃されてしまうこともあります。しかし、出血が止まるのはあくまでも一時的。血圧が上昇したり、血栓が洗い流されたりすれば、再び出血し、大きな破裂がおこります。これが再破裂です。再破裂が起こった時は、実に「40%が即死する」という怖ろしいデータがあります。単なる軽い頭痛だと判断して、そのままにしておくと、かなり危険なケースがあるのです。普段から頭痛持ちの人は、特に注意が必要と言えるでしょう。この再破裂は、最初の発作から6時間以内に起こる可能性が高く、以前は救急車や病院での検査中に起こることも少なくなかったようです。
くも膜下出血のメカニズム
脳の動脈に瘤ができる

血圧の変化などによって瘤が破裂

くも膜下腔に出血

くも膜下出血の症状
要因
激しい頭痛
嘔吐
高血圧
遺伝(家族歴)
中高年(年齢)
EXAMINATION 検査
CT検査 出血の有無を確認
     確認できない時
髄液検査 脳から下りてくる髄液を調べる
脳血管造影検査 脳動脈瘤の位置・形を特定する

データ
 
データ
【CT検査】
 
【髄液検査】
データ
  データ
【髄液検査】
 
【脳血管造影検査】
MEDICAL TREATMENT&MEDICINE 治療と薬
クリッピング手術 脳動脈瘤の根元をクリップではさみ
破裂や再破裂を防ぐ
脳動脈瘤塞栓術 プラチナ製のコイルで脳動脈を
内側から埋めてしまう

データ
 
データ
【クリッピング手術】
 
【脳動脈瘤塞栓術】
FRONTIER 最先端技術
データくも膜下出血のメカニズムは、現在のところ完全には解明されていません。近年、医学界だけでなく他の分野からのアプローチも試みられているのです。そのキーワードがバイオ流体力学。東京大学生産技術研究所で研究が行われています。流体力学とは、空気や水の流れがどのような現象を引き起こすのかを研究する学問。身近なところでは自動車の車体デザインで空気抵抗がどのように変化し、スピードにどのような影響を与えるのか?燃費を向上させるにはどうしたらいいのか、流体力学が利用されています。バイオ流体力学の研究工程は、まずコンピューター脳動脈瘤CT画像のデータを取り込んでいきます。集められたCT画像のデータから、コンピュータグラフィックスによる3D画像を製作します。ここに血流などのデータを計算し、脳動脈瘤の場合、どのような血液の流れが起こり、血管のどこに力が加わっているのかシミュレーションするのです。画面を見ると、脳動脈瘤の赤い色の所、つまり根元に、大きな力が、かかっていることがわかります。動脈瘤はてっぺんから破裂するとイメージしまいがちですが、データ実際は根元に力が加わり、そこから破裂したことがシミュレーションでわかります。血管の中の血液の流れ方もシミュレーションできます。白いところが流れの速い部分。血管壁へのぶつかり方が分かります。将来的に手術のシミュレーションに使おうと考えています。例えばコイルを使った動脈瘤塞栓術。動脈瘤にコイルを入れたら、10年後にどのような影響が出るのか?コイルはずれたりしないのか?シミュレーションによって探っていきたいと研究を進めているようです。まだ完全に解明されていないくも膜下出血のメカニズム。その解明に向けて、専門分野の垣根を越えた研究が今も行われているのです。
SELF MEDICATION 自己管理


データ

データ

データ

データ

【対処のしかた】
もしもあなたの近くに、くも膜下出血で倒れる人がいたら、その人に対し、どのように対処したら良いのでしょうか?
(1)意識の確認
(2)救急車を呼ぶ
まずは速やかに救急車を呼ぶことが第一。
(3)呼吸の確認
その間私たちが行わなければいけないのは、呼吸の確認です。頬に唇を近づけ、また胸が上下しているか目で見て、呼吸の確認をします。
(4)気道の確保
右手を上にし、左手をお腹の上にのせ肩と腰を動かし、体勢を横にします。顔の下に手を置き、頭を少し後ろにずらして、気道の確保を行います。
(5)身体の固定
このような体勢で、身体を固定させましょう。再破裂はほんの少しの刺激でも起こり得ます。それを防ぐためにも体勢を固定することを守りましょう

脳疾患が疑われる時は、頭を揺らしたりしてはいけません
例え意識があったとしても絶対に歩かせてはダメです。
なるべく動かさないように、救急車の到着を待ちましょう。

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