広島大学による研究が今年の6月に発表されました。髪の毛のもとになる毛母細胞に限らず、人間や動物の細胞は
分裂できる回数があらかじめ決まっており、その回数の細胞分裂が終われば分裂が停止するしくみになっています。染色体の端で
光っているのが「テロメア」。この「
テロメア」は細胞分裂の
回数をチェックしています。テロメアは、細胞分裂を繰り返すたびに短くなっていくという特徴があります。例えるなら、「
細胞分裂のための回数券」。細胞が分裂するたびに、回数券は減っていき、回数券が短くなれば、細胞は分裂できなくなってしまいます。老化の原因ではないか、との説もあります。広島大学では、毛根の細胞にあるテロメアを元に戻せば髪の毛が復活するのではと考え、毛母細胞を作り出す毛乳頭の細胞に「
テロメラーゼ」という酵素の遺伝子を
組み込んだのです。「テロメラーゼ」とは生殖細胞や幹細胞にしかない酵素で短くなった「テロメア」を
元に戻す力を持っています。
テロメアラーゼを組み込んだ毛乳頭細胞は、組み込まないものに比べて
分裂回数が倍以上に増え、増殖を続けることが分かったのです。毛乳頭細胞が増え続ければ、より多くの毛母細胞が作り出せると考えられます。毛母細胞が増えるということは、髪の毛がより多く作られる。つまり、これは失われた毛髪を蘇らせる
遺伝子治療の
第一歩。