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2002年10月13日(日) テーマは『糖尿病(2)』

今週のドクター今週のドクターは、
東京都済生会中央病院
渥美 義仁 先生


【略歴】

’77年 慶應義塾大学医学部卒業
卒業後 東京都済生会中央病院にて内科を研修
現在、 糖尿病患者さんの生活習慣指導や薬物療法、足病変を中心に日々の臨床に従事している

【ドクターの一言】
糖尿病は自覚症状が乏しいので、治療に取り組むのが遅れがちです。糖尿病は医者まかせにできない疾患ですので、ご自分とご家族でよく理解して上手く付き合って下さい。

【著書】
「分子糖尿病学の進歩2001」
渥美義仁 門脇孝編 矢崎義雄監
金原出版
「遺糖尿病足病変 糖尿病足病変に関する国際ワーキンググループ編」
内村功 渥美義仁 監訳
医歯薬出版


CONDITION OF ILLNESS 病気と症状のメカニズム
データ 現在、40歳以上の10人に1人が糖尿病、予備軍を含めるとその数は約1400万人にも上る。糖尿病で恐ろしいのは合併症。糖尿病には特徴的な自覚症状が無いため、高血糖状態を5,6年も放置するのが1番危険!やがて全身に様々な合併症が出はじめ、命に関わる状態に陥る事も少なくないのです!糖尿病の合併症の中でも代表的なのが、成人で失明する原因NO.1「糖尿病網膜症」!腎不全で命を危険にさらすのは「糖尿病性腎症」足の壊疽から切断を招くこともある「糖尿病性神経障害」。この3つは「糖尿病三大合併症」として恐れられています。
[血管や神経の障害]血管の障害が引き起こす合併症では「糖尿病網膜症」「糖尿病性腎症」が代表的。一方、神経の障害による合併症の代表は「糖尿病性神経障害」です。この神経障害は、合併症の中でも血糖コントロールが悪いと比較的速くから症状は現われます。体のあちこちがジンジン痺れたり、チクチク痛むのが特徴ですが、なぜ糖尿病が神経の障害に繋がるのでしょう?神経と一口に言っても、脳および脊髄から出ている中枢神経、そこから枝分かれした末梢神経と大きく分けて、この2つに分類されます。糖尿病で神経の障害が出やすいのは、データこのうちの末梢神経。特に、座骨から足先まで伸びるものなど、距離の長い末梢神経ほど糖尿病に冒されやすいとされています。神経障害では感覚も鈍り、例えば小さな靴ずれでも、痛みが分からずに悪化。潰瘍に繋がります。こちらはこたつの熱が感じられずに起きた低温やけど。
[糖尿病の神経障害]原因は完全に究明されていませんが、2人の犯人が推測されています。最初の犯人は「ソルビトール」。食べ物を摂ると血液中に糖分が増えます。
その糖分はブドウ糖に変化しますが、その際、血管を作る細胞の中で「ソルビトール」という副産物が生まれます。血糖値が正常ならば「ソルビトール」を果糖に変化させエネルギー源として使われます。しかし、高血糖が続いていると、次々と「ソルビトール」が作られ処理しきれなくなって神経細胞の中にもたまってしまいます。その結果、神経細胞が正常に機能しなくなって、情報を脳に伝えるのに時間がかかったり、誤った情報を伝えるようになります。そのため、体の末端部分で異常な痺れや痛みを感じるようになるのです。神経障害のもう1人の犯人は「糖化蛋白」!「糖化蛋白」は糖分とタンパクが結合して生まれるもの。赤血球のタンパクで起きると酸素を運ぶ役目が阻害されるのです。血液中に糖分が増えると赤血球のタンパクと次々に結合して、「糖化蛋白」が生まれます。増え過ぎた「糖化蛋白」は酸素の運搬を妨げるだけでなく、神経の障害も引き起こします。データその結果、神経細胞に栄養が行き渡らず、痛みなどの感覚が鈍るのです。同時に、足などの細胞に栄養や酸素が行き渡らなくなり、細菌などに対する抵抗力・免疫力も低下して、小さな傷からも、潰瘍や壊疽を 引き起こしやすくなるのです。神経障害の次に起こるのが「糖尿病網膜症」糖尿病が6年以上続いた患者さんの、実に50%以上が、「糖尿病網膜症」!しかも、成人になって失明する原因のうち、ダントツ1位の恐ろしい病!
[眼の合併症]眼の中で映像を結ぶフィルムの役目をするのが網膜。実は、網膜には「ソルビトール」を生産する「アルドース還元酵素」が大量にあるのです。そこで、高血糖状態が続くと、眼の血管に沢山の「ソルビトール」が生まれ、網膜へ酸素や栄養を運ぶ血管に、様々な障害が現れると考えられています。毛細血管の障害が広がると、網膜に酸素が十分供給されなくなります。データ酸素不足を血管の量で解消しようと、網膜の組織は「新生血管」と呼ばれる未熟な細い血管を、毛細血管から枝分かれする形で発生させます。この新生血管は大変弱くちょっとした衝撃や血圧の上昇で簡単に破れ、眼球内に出血をもたらします。この出血が、眼に入る光を遮断して、視野に黒い点がちらつく「飛蚊症」が現われます。最悪の場合、失明という事態に陥る事もある訳です。自覚症状が無くても油断は禁物。糖尿病の合併症は、体の末端の血管を蝕み、いつか最悪の事態を招く所に本当の恐ろしさがあるのです。
【糖尿病性神経障害】
症状

眼筋麻痺
顔面神経麻痺

手足のしびれ、痛み
手足の感覚が鈍くなる
足の潰瘍、壊疽
こむらがえり

【糖尿網膜症の進行】
初期 単純網膜症 自覚症状が現れない
中期 前増殖網膜症 自覚症状はほとんど現れないがまれに視力の低下が起こる
末期 増殖網膜症 視力低下以外にも視野の中に虫が飛んでいる「飛蚊症」が現れる
EXAMINATION 検査
血糖病網膜症の検査でまず行われるのが眼底検査。網膜の血管を正確に把握するためには、蛍光眼底映像検査を行います。
【糖尿病網膜症の検査】
データ

【眼底検査の周期】
糖尿病患者 年1回
単純網膜症 3〜4ヶ月に1回
前増殖網膜症 1〜2ヶ月に1回
増殖網膜症 1ヶ月に1回

【糖尿病神経障害・足病変の検査】
腱反射検査 足の神経反射を診る
皮膚の知覚テスト 足に感覚があるかどうかを調べる
下肢動脈の超音波検査 足の血管を超音波で映し出し
 動脈硬化を起こしていないかを調べる
データ
 
データ
データ
   
MEDICAL TREATMENT&MEDICINE 治療と薬
【糖尿病合併症の治療】
レーザー光凝固治療 網膜にレーザーを当てて新生血管の発生を阻止し網膜症の進行を止める
硝子体手術 硝子体出血を取り除き低下した視力を回復させる
足の治療 タコ・イボ・靴ずれ・水虫などの
足の病気を早く治療して悪化を防ぐ

【治療方法】
FRONTIER 最先端技術
データ糖尿病で動脈硬化の進んだ脚の血管を再生する!画期的な治療法が話題となっています。その元になったのは人間の骨の骨髄。以前から骨髄の中にある「骨髄液」は、血液の源である事が分かっていました。しかし、最近の研究で「骨髄液」は血液だけでなく、血管の細胞の源でもある事が判明したのです。そして、この発見から開発されたのが「血管新生療法」!まず、全身麻酔をして患者さん本人の腰の骨から「骨髄液」を採取します。次に「骨髄液」の中から血管を作る「単核細胞」だけを分離。その「単核細胞」を、患者さんのふくら脛約40箇所に注射します。治療後、脚の血管の変化を見ると、治療前に比べ血管の数が増えているのが 確認されました。「単核細胞」から、新しい丈夫な血管を体が作り出したのです。血管の新生により治療後皮膚温度の上昇が見られ、免疫力なども回復したのか「足の先の潰瘍も治った」という報告もされています。末梢の血管の障害から引き起こされる糖尿病の合併症。それだけに、血管の新生という新たな展開には大きな期待が寄せられています。
SELF MEDICATION 自己管理


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【日頃のフットケア】
糖尿病で脚などに出る神経障害は知覚が弱まり、感染症にも罹りやすい!そこで、日頃のフットケアが重要となります。まず、お風呂の前は脚を必ず観察!怪我火傷タコ水虫などは無いか、皮膚は変色していないか、足の変形は無いか?などなど。痛みを感じにくい神経障害の場合、気付かずに傷を悪化させては大変です!お風呂では、足の裏や指の間も丁寧に洗う事が大切。洗った後はタオルで水分をよく拭き取ります。この時、皮膚がなるべく乾燥しないよう、クリームを丁寧に塗っておくのも忘れて欲しくないケアの1つです。実は、神経障害で自律神経の機能に異常が出ると、汗をかきにくくなり、足にひび割れの出る事があるため。ひび割れに細菌などが入り、潰瘍や壊疽になる事もあるのです。
【爪の手入れ】
伸びた爪は皮膚を傷つける元。糖尿病で抵抗力が低下していると、小さな傷からも化膿しやすくなります。伸びた爪の逆に深爪も危険!深爪をした箇所は細菌が入りやすくなる危険地域です。そこで正しい爪の切り方を覚えましょう。原則的にハサミは使用禁止です!爪を切る場合は爪やすりを用意して削り取るよう、日頃から心掛けておきましょう。そして、爪やすりを使う場合はは指と直角に構え、真っすぐに爪を削って行きます。仕上げは爪やすりを少し傾け、爪を真っ直ぐな形に整えて下さい。先端を丸くすると爪の横に圧力が集中して、傷を作る原因になるからです。神経障害は体の隅々まで危険が及ぶもの。フットケアも基本は小さな所を見逃さない事。

観察力を養い潰瘍や壊疽の危険を避けて下さい!

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