Self Docter Net
BS-i TOP

健康DNA ロゴ
ONAIR
CONTENTS TOP番組紹介今週のDNA!!
今週のドクター
ドクターQ&A
ご意見募集
バックナンバー
著書紹介

バックナンバー
2002年10月6日(日) テーマは『糖尿病(1)』

今週のドクター今週のドクターは、
東京都済生会中央病院
渥美 義仁 先生


【略歴】

’77年 慶應義塾大学医学部卒業
卒業後 東京都済生会中央病院にて内科を研修
現在、 糖尿病患者さんの生活習慣指導や薬物療法、足病変を中心に日々の臨床に従事している

【ドクターの一言】
糖尿病は自覚症状が乏しいので、治療に取り組むのが遅れがちです。糖尿病は医者まかせにできない疾患ですので、ご自分とご家族でよく理解して上手く付き合って下さい。

【著書】
「分子糖尿病学の進歩2001」
渥美義仁 門脇孝編 矢崎義雄監
金原出版
「遺糖尿病足病変 糖尿病足病変に関する国際ワーキンググループ編」
内村功 渥美義仁 監訳
医歯薬出版


CONDITION OF ILLNESS 病気と症状のメカニズム
データ 生活習慣病の中で最も恐ろしい病気。それが糖尿病。その恐ろしさの特徴は、特有の自覚症状が現れにくいため、気づいた時には全身を合併症に蝕まれている場合が多い事。 「最悪の場合は失明」「命にも関わる腎不全」「徐々に腐り落ちていく足の壊疽」といった具合に糖尿病の合併症は全身に大きなダメージを与えるのです。糖尿病の患者はこの40年間で実に50倍も増加、現在は700万人、さらに、糖尿病の危険がある予備軍まで合わせると1400万人と、今や国民病とも言える存在!糖尿病とは、血液中の糖分が異常に増える病気。糖尿病では無く糖血病・高血糖症と言った方が相応しい病気です。人の血液に含まれる糖分はブトウ糖の形で僅か0.1%。しかし、この糖分が生きて行く上では、とっても大切!ブドウ糖は体を動かすためのエネルギーです。肝臓にグリコーゲンの形で蓄えられたり筋肉や脂肪組織など全身の細胞に運ばれ、各細胞が働くためのエネルギーとして使われています。データこれは、血糖値の一日の変化のグラフです食後に上り、2時間ほどの間に自然と下がる。その上下が繰り返されているのが特徴。しかし糖尿病に罹ると、血糖値全体が高まり、高いままの状態が続くようになります。体の中で血糖を下げる働きをするのは唯一、インスリンというホルモンです。インスリンは血糖の上昇に合わせて、随時膵臓から分泌されています。データ膵臓の組織の白く見える所がランゲルハンス島と呼ばれる細胞。このランゲルハンス島の中でも、B細胞と呼ばれる部分から血液中の糖分、血糖を下げる働きをするインスリンは分泌されているのです。インスリンは、筋肉や脂肪の細胞にあるインスリン受容体と結びつき、血液が運ぶブドウ糖エネルギーとして取り込む時の手助けをします。その一方、肝臓でブドウ糖をグリコーゲンに変えて貯蔵する手助けもしています。
【糖尿病の分類】
1型糖尿病 膵臓のランゲルハンス島B細胞からインスリンがほとんど分泌されない
子供や若い人が多い
2型糖尿病 インスリンの作用・効きが悪い
インスリンが分泌されても上手く動かない
成人に多い
インスリンの働きや分泌を低下させるのは、体内で増えすぎた脂肪分!食べすぎで太った脂肪細胞からは、インスリンの働きを妨げる物質が出ます。そのため、ブドウ糖は細胞に取り込まれずエネルギーとして使われなくなります。これが糖尿病の始まり。この状態を放置するとエネルギー不足を補おうと体の脂肪分やタンパク質が使われ始めます。糖尿病が進むといくら食べても痩せるという症状が現れます。また、血糖が下がらないので膵臓はインスリンの分泌を増やして対処しようとします。 やがて膵臓が疲れインスリンの分泌量が低下するのです。このような悪循環で高血糖が慢性化し、糖尿病は進行するのです。糖尿病が進行すると体内の脂肪分がエネルギーとして使われ、血液中にケトン体という老廃物が作られます。この物質が増えると、血液が酸性化して脳の働きが低下し、危険な昏睡状態を起こす場合さえあるのです。さらに血液によって体のあちこちに運ばれたブドウ糖は、細胞のタンパク質とくっついて、「糖化タンパク」と呼ばれるタンパク質を作り出します。「糖化タンパク」に変化すると、タンパクは本来の機能が果たせなくなってしまいます。 例えば、赤血球の中のタンパク、ヘモグロビンAとブドウ糖が結合すると「グリコヘモグロビン」という糖化タンパクに変化します。この「グリコヘモグロビン」は、ヘモグロビンが本来持っている酸素を全身の細胞に運ぶ役割が果たせなくなるのです。 特にダメージを受けやすいのが全身の細かい血管。 血液中に不要な「糖化タンパク」が増えると、血液の流れを悪くするばかりか「糖化タンパク」が血管の壁や小さな傷などに溜まり、血管を脆くする動脈硬化の一因となります。
【糖尿病の合併症】
病名   症状
糖尿病網膜症 データ 目の網膜の毛細血管が脆くなり視力の低下や、時には失明を引き起こす
糖尿病性腎症 データ 腎臓の毛細血管が動脈硬化などで機能しなくなるもの。腎不全を起こせば命に関わります。
足の壊疽
(えそ)
データ 「糖尿病性神経障害」に伴いちょっとした傷から壊疽に至る場合もあります。
血管の異常によって起こる全身の合併症は、糖尿病がかなり進行してから起きるもの。しかし恐ろしいのは糖尿病同様、合併症も、その初期には殆ど自覚症状が無く、知らぬ間に忍び寄って来る事なのです!
EXAMINATION 検査
血糖値と血液中のグリコヘモグロビン含有量を調べることがポイントとなります。
【糖尿病の検査】
空腹時血糖値 安定した条件下での血糖値の変動知る
正常値 110mg/dl 未満 
 糖尿病 126mg/dl 以上
食後血糖値 食後の血糖値の上昇を知る
<食後2時間>
 正常値 140mg/dl 未満
 糖尿病 200mg/dl 以上
ヘモグロビンA1C 過去1〜2ヶ月の血糖値の状態を知る
基準値 4.3〜5.8%
MEDICAL TREATMENT&MEDICINE 治療と薬
【糖尿病の治療】
経口血糖降下薬 スルホニル尿素薬/
速効型インスリン分泌促進薬
ヒグアナイド薬
αグリコシダーゼ阻害薬
インスリン抵抗性改善薬
インスリン注射 持続型インスリン(4回注射療法)
中間型インスリン(2回注射療法)

【低血糖の症状】
症状 対処方法
動悸・息切れ・
冷や汗・手の震え
角砂糖・果物などで速やかに当分の補給を行う
【薬による治療】
インスリンの分泌を促す場合、インスリンの働きを回復する場合に使用します。薬以外に食事療法や運動が大切です。
【注射による治療】
インスリンが分泌させない1型糖尿病患者や2型糖尿病で経口血糖降下役が効かなくなった患者に使用します。
FRONTIER 最先端技術
糖尿病を根本から治そうとするならば、ランゲルハンス島から、インスリンが正常に分泌されるように治療する必要があります。今年8月、ドナーからランゲルハンス島の細胞を移植するための方法が完成したと発表されました。
この治療方法とは、まずドナーから摘出した膵臓を特別な酵素で液体状に溶かし、細胞分離機を使って、ランゲルハンス島の細胞だけを取り出します。データ臨床試験によると、最もランゲルハンス島細胞の移植に適していると判断されたのは膵臓ではなく、「人体の化学工場」、肝臓。その肝臓の入り口に当たる「門脈」に、点滴でランゲルハンス島細胞を注入、移植するのです。ランゲルハンス島細胞は、門脈から肝臓に入ると肝臓内張り巡らされた細い血管の中に根付いて、やがてインスリンを分泌するようになります。なんと肝臓が膵臓の代りにインスリンを出すのです!この点滴を使って行う細胞移植では、膵臓全体を移植する時のような手術がいらず、入院日数も短くて済みます。また、もし拒絶反応が起きても再摘出をする必要もありません、このように患者への負担が非常に少ない移植法なのです。そのため、この移植法が確立すれば糖尿病を根本から治療できることになるのです。
データそしてもうひとつブタの膵臓から取り出したランゲルハンス島細胞を、特殊な高分子の膜で包む方法が開発されているのです!人間とよく似た成分を持つブタのランゲルハンス島細胞を高分子の膜で包み、カプセルにして患者さんに移植するという計画なのですが、この膜が優れ物!データランゲルハンス島細胞の分泌するインスリンや、細胞に必要な栄養分・酸素は通過させても、細胞を攻撃する免疫細胞や抗体などはシャットアウト。人とブタの間の移植で起きる拒絶反応を防いでくれるのです。このカプセルを糖尿病のマウス10匹に移植するという実験を行ったところ、全てのマウスの血糖値が正常値に近い値まで下がった、という結果が得られました。
SELF MEDICATION 自己管理











データ

データ


データ

糖尿病だからといって、食べてはいけない食品がある訳ではありません。大切なのはあくまでも規則正しい食生活!糖尿病の食事療法は、栄養バランスの取れた食事を、その人の健康状態に適したカロリーで摂るのが基本。普段の食生活を見直し、糖尿病を防ぐ上でも有効です。
【一日三食の基本】
毎回、必ず主食副食野菜を忘れずに組み合わせる事。
【主食】
主食はご飯・麺類など、体を動かすエネルギーとなる炭水化物を多く含む食品。食物繊維の多い玄米や全粒パンが適切。毎食、ご飯なら軽く一膳。食パンなら1,2枚が適量でしょう。
【副食】
肉・魚・卵など。
1食分の目安は、ブリのような脂肪の多い魚なら1切れが目安。カレイのような脂肪が少ない魚なら小さい切り身に絹漉し豆腐3分の1丁という食べ方も出来ます。
【野菜】
体を作るタンパク質を多く含んだ食品野菜は毎食必ず、タップリと摂るように心掛けましょう。
1日300〜400グラムを目標とします。毎食ごとの目安は生野菜なら、両手に1杯程度が適量。一方、煮物やお浸しのように過熱したり、味をつけて調理した野菜の場合は、片手1杯程度が適量です。

食事療法は糖尿病治療の基本!食材や調理法で工夫しましょう。

copyright(C)