糖尿病を根本から治そうとするならば、ランゲルハンス島から、インスリンが正常に分泌されるように治療する必要があります。今年8月、ドナーから
ランゲルハンス島の細胞を移植するための方法が完成したと発表されました。
この治療方法とは、まずドナーから摘出した膵臓を特別な酵素で液体状に溶かし、細胞分離機を使って、ランゲルハンス島の細胞だけを取り出します。
臨床試験によると、最もランゲルハンス島細胞の移植に適していると判断されたのは膵臓ではなく、「人体の化学工場」、
肝臓。その肝臓の入り口に当たる「
門脈」に、点滴でランゲルハンス島細胞を注入、移植するのです。ランゲルハンス島細胞は、門脈から肝臓に入ると肝臓内張り巡らされた
細い血管の中に根付いて、やがて
インスリンを分泌するようになります。なんと肝臓が膵臓の代りにインスリンを出すのです!この点滴を使って行う細胞移植では、膵臓全体を移植する時のような手術がいらず、入院日数も短くて済みます。また、もし拒絶反応が起きても再摘出をする必要もありません、このように患者への負担が非常に少ない移植法なのです。そのため、この移植法が確立すれば糖尿病を根本から治療できることになるのです。
そしてもうひとつ
ブタの膵臓から取り出したランゲルハンス島細胞を、特殊な高分子の膜で包む方法が開発されているのです!人間とよく似た成分を持つブタのランゲルハンス島細胞を
高分子の膜で包み、カプセルにして患者さんに移植するという計画なのですが、この膜が優れ物!
ランゲルハンス島細胞の分泌するインスリンや、細胞に必要な
栄養分・酸素は通過させても、細胞を攻撃する
免疫細胞や抗体などは
シャットアウト。人とブタの間の移植で起きる拒絶反応を防いでくれるのです。このカプセルを糖尿病のマウス10匹に移植するという実験を行ったところ、全てのマウスの血糖値が正常値に近い値まで下がった、という結果が得られました。