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2002年9月22日(日) テーマは
『潰瘍性大腸炎』

今週のドクター今週のドクターは、
慶應義塾大学 医学部
日比 紀文(としふみ) 先生


【略歴】

’73年 慶應義塾大学医学部卒業
’82年 トロント大学留学
’90年 慶應がんセンター診療部長 兼 慶應義塾大学助教授
’96年 同大学医学部内科学教授 兼 慶應がんセンター所長

【ドクターの一言】
日常診療で得た経験を研究で生かし、研究の成果を診療に還元し、本疾患の根本治療の開発に努力していきたい。

【著書】
「潰瘍性大腸炎」 毎日ライフ 2002年5月号
「便秘の悩み」 NHKきょうの健康 2002年5月号
「潰瘍性大腸炎の正しい知識と理解 」 杏文堂
「炎症性腸疾患診察ハンドブック」 真興交易(株)医療出版部
「下部消化管疾患の治療指針」 トーレラザール・マッキャン


CONDITION OF ILLNESS 病気と症状のメカニズム
お腹の調子か悪く、下痢が続いたけれど治ったかな‥?そう思っていたら、何だかまた調子か悪いゾ!しかも血便まで出てしまった!もし、こんな症状に見舞われたら、それは‥‥。
潰瘍性大腸炎」の初期症状。




「潰瘍性大腸炎」になると、内側に炎症が広がりこんなに荒れた状態に更に悪化すると大腸の粘膜が剥がれて、デコボコになってしまうのです。元々、「潰瘍性大腸炎」は欧米に多い病気。日本人には珍しかったのに、近年になって急増しているのです。 しかも、病気になる年齢は20代をピークに若い世代で多いのが特徴!何らかの原因で大腸の粘膜に炎症が起こり「びらん」から「潰瘍」に進行します。この炎症は、肛門に近い直腸から結腸に向かい、次々と広がっていくのが特徴です。時には「穿孔」といって大腸に穴が空く事さえあります。
【潰瘍性大腸炎】
症状 下痢粘液便
血便腹痛
特徴 慢性の炎症
炎症が起きて症状が悪化している時期(活動期)と症状が治まっている時期(緩解期)を繰り返す
全身に合併症が起こる場合がある
関節痛皮膚病口内炎結膜炎
肝機能障害肺機能障害腎臓結石
症状の始まりは下痢や血便です。血便は、大腸の粘膜が炎症で剥がれ落ちて出血するために起こります。この時、治療すると一旦は良くなる場合が多いのです。でも、安心して放置すると、再び下痢や血便が始まり、下腹の痛みも出ることがあります。症状が重くなると、さらに激しい腹痛や血液の交じった激しい下痢。また発熱、体重の減少、頻脈といった症状も出てきます。このような症状が良くなったり、悪くなったりをくり返す。それがこの病気の最大の特徴!原因は?実は残念ながら、明確な原因はまだ分かっていません。現在有力なのは「細菌説」と「自己免疫異常説」、この二つ。「細菌説」にも様々な説があるのですが、まず、何らかの原因で腸の中に住む細菌のバランスが 崩れます。すると、悪玉菌の大腸菌などが多くなり、大腸の粘膜を 刺激。炎症を引き起こすというもの。または、何らかの微生物の感染により、その感染に大腸の粘膜が異常に反応してしまうことも原因だと考えられています。 一方、自己免疫異常説は次の通り。本来ウイルス等の外敵から体を守るはずの「抗体」。その「抗体」などが、何らかの原因で、外敵ではなく、大腸の粘膜組織を攻撃して破壊。そのため、慢性的な炎症が起きるというのです。その他にも、食生活遺伝的な原因。 環境の影響など、様々な説がありますが、今だ解明には至っていません。 また、下痢や腹痛など、腸の炎症による症状だけでなく、腸とは直接関係なさそうな所に、全身性の合併症が現れる特色もあります。全身の合併症の中で最も多いのが「関節痛」。これは、全体の10%前後の患者に見られる症状です。特に肘やひざなど、比較的大きな関節が、炎症の起きている時期と、連動して痛む事が多いようです。そのほか、合併症としては「皮膚病」。「口内炎」。「結膜炎」など眼の症状。「肝機能障害」。「肺機能障害」。「腎臓結石」などが起きる場合もあります。但し、腸の炎症が鎮静化すれば、治まる症状がほとんどです。
EXAMINATION 検査
【潰瘍性大腸炎の検査】
触診・打診 腹部の痛みの有無と
腸内のガスのたまり具合等を調べる
血液検査 炎症や貧血の状態を調べる
便検査 便の中の血液や細菌を調べる
内視鏡検査 画像により直接 大腸粘膜の状態を確認する
 
 
MEDICAL TREATMENT&MEDICINE 治療と薬
【潰瘍性大腸炎の治療】
薬による治療 5・アミノサリチル酸製薬 大腸粘膜の炎症を抑制
副腎皮質ステロイド
免疫抑制剤 免疫反応を抑える
手術による治療 (腹腔鏡下)全大腸切除手術 炎症の起きている大腸を摘出
【薬による治療】
潰瘍性大腸炎はまだ原因の明らかでない病気のため、完治させることはできません。治療は炎症を鎮め、症状を緩和。症状が治まった状態を長引かせることが目的になります。
【手術によるの治療】
【切除方法】
 
【腹腔鏡下全大腸切除手術】
   
【腹腔鏡の手術後】
 
FRONTIER 最先端技術

2000年の4月から行われているのが「白血球除去療法」。血液を体外の「血液循環装置」の「白血球フィルター」に通し、再び体内へ戻す治療です。フィルターを通して、活性化した白血球を血液から取り除く。その事で、炎症が長引くのを防ぎ、免疫システムの悪循環をストップする治療です。一回の治療では2〜3リットルの血液を処理します。 潰瘍性大腸炎が活動期だと、週一回の治療を4〜5回行います。これまでの治療で、約70%程度の患者に有効というデータが出ています。
そして現在、注目されているのがドラッグデリバリーシステム。ドラッグデリバリーシステムとは、大腸の粘膜の炎症を抑える薬「5ムアミノサリチル酸製剤」を胃や小腸で吸収されることなく、大腸のみで作用させるというものです。そのために、キトサンというカニやエビの甲羅の成分で作ったカプセルに薬を入れます。キトサンのカプセルは胃酸では消化されず、大腸内にいる腸内細菌には分解されるという特徴があるのです。そのため、薬は胃や小腸を移動する際はカプセルに守られ、大腸に来た時点で初めてカプセルが分解されます。カプセルが分解すると中に入っている薬が放出され、大腸で効果を発揮するというわけです。

SELF MEDICATION 自己管理

















「潰瘍性大腸炎」は現代でも、ハッキリした原因の分かっていない病気。そのため、明確な予防法と呼べるものも、現段階ではまだ存在していません。しかし、病気の解明は行われつつあり、原因の一つは食生活にあるのでは?と言われるようになっています。
中でも脂肪分の摂取量が、大きく増加している事は、直接的な原因の一つ、と考えられてもいます。地図の赤い部分をご覧下さい。これは潰瘍性大腸炎の多い地域。
脂肪分の多い欧米型食生活の地域と、不思議なくらい一致しています。また、患者の多い若い世代の食生活を考えた時、若者の好んで食べるファーストフードも、原因の一つではないか?と推測されています。
「潰瘍性大腸炎」は、確かに難病に指定されていますが、だからといって、直接命に関わる病気ではありません。病気とのつき合いは長くなりますが、次の事に気をつければ、大きな支障もなく、普通に暮らせる筈です。症状が治まっている時期なら、基本的に食事に関する制限はありません。但し、刺激の強い、香辛料や、アルコールを摂りすぎるのは控えるべき!学校・会社・家庭などの日常生活も、基本的に今まで通りで全くかまいません。しかし疲労を溜める事は禁物。疲れを翌日に残さないよう、睡眠は十分に摂って下さい。勿論、どんな病気でも同じですが、ストレスもよくありません。
潰瘍性大腸炎では、症状が治まっていたのにストレスが再び活動期への引き金となることがあるのです。

病気の事も気にしすぎないよう、ストレスを溜めない生活を心掛けましょう!

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