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2002年8月18日(日) テーマは
乳がん

今週のドクター今週のドクターは、
慶應義塾大学 医学部専任講師
池田 正 先生


【略歴】

’74年 慶應義塾大学医学部卒。
栃木県立がんセンター外科医長などを経て
’96年 現職(慶應義塾大学医学部専任講師)。
専門は腫瘍外科学。
中でも乳癌を中心に診療、研究を行っている。

【ドクターの一言】
癌との戦いは患者さんだけがするものでもお医者さんだけがするものでもありません。お互いが共同して行うものです。
そのためには信頼関係が最も大切だと思っています。


CONDITION OF ILLNESS 病気と症状のメカニズム
赤ちゃんに母乳を与える、女性にとって、大切な胸。しかし近頃、女性のライフスタイルが変化したことにより、この胸に異変が起きています。それが「乳がん」。乳がんは、いわば女性の現代病です。

厚生労働省の調べによると、乳がんの患者数は年々増加。1975年と比較すると、実に3倍も増えているのです。一方、年齢別で見てみると、40歳代後半でピークを迎えます。さらに女性に限れば、がんの中でも乳がんが一番多いという恐ろしい病気なのです。

1位 乳がん
2位 大腸がん
3位 胃がん
【女性の罹患数】

乳がんは、早期発見が可能で、患者の多くは、最初に自分で乳房のしこりに気付くといいます。乳がんはがんの中でも「自分で発見できる唯一のがん」なのです。
でも男性の皆さん、「自分には関係ない」なんて安心してはいませんか?
実は、男性にも乳がんは発症するのです。
乳がんは、自分でしこりに気が付いて発見することが多いのです。

早期乳がん
    
しこりの大きさ2cm以下
他の部位に転移していない
乳房を残した
治療が可能
非早期乳がん
他の部位への転移に関係なく
しこりの大きさ2cm以上
乳房を全部取る
必要あり

更に乳がんは、がん細胞がリンパの流れにのって、脇の下のリンパ節へ転移しやすいため、リンパ節まで切除する事も多くあります。がんが大きくなっていくと引きつれを起こしたり、乳頭の陥没を招いてしまうことがあります。これはがん細胞が乳腺と皮膚を結合させている繊維を引っ張るために起きてしまうのです。さらに、乳頭から黄色や褐色の分泌物が出てくる事があります。乳房内の病変から出血して、時間がたって出てくるためです。皆さんは、これほどの状態になるまでよく放っておいたなと思うかもしれません。
残念なことに、形のはっきりした2センチくらいの大きさにならないと、しこりは発見しにくいのです。ただ、しこりなどで、病院を訪れる患者さんの95%は、良性の腫瘍です。

EXAMINATION 検査
【乳がんの検査法】
乳がんかどうかを検査
    
・超音波検査
・マンモグラフィ
(乳房のX線検査)
乳がんを確定するための検査
・組織診
がんの転移を調べる検査    ・骨シンチグラム
・胸部X線写真
・肝臓のCT/超音波
手術を行う場合乳房内の広がりを調べる検査
・MRI、CT検査

超音波検査










【1.超音波検査】
乳房の上から超音波をあてて反射してきた音を画像に写し出す検査です。手に触れない数ミリのしこりを見つけだすことができるのが利点。乳腺は年を取ると脂肪に変わります。そのため、まだ乳腺組織が 残っている、若い女性の検査に適しています。 黒く抜けているところが、乳がんの腫瘍です。
【2.X線検査】
マンモグラフィという、乳房専用のレントゲン装置を使います。乳房全体をプラスチック板などで、左右および上下から圧迫しながら 特殊なX線で撮影します。白くなっているところが、乳がん。乳がんはしこりになる前に細胞が壊死し石灰化することがありますが、マンモグラフィではこのような初期の乳がんも発見できます。
超音波やマンモグラフィで乳がんの疑いがある場合は、さらに詳しい検査が行われます。
【3.組織診】
これは小さなメスを使って、しこりの一部を切り取り、細胞や組織を顕微鏡で調べる方法です。この方法だと確実にしこりの診断を 行う事ができます。ただ、組織を取る場合は、針が太いので局部麻酔を 行なわなくてはなりません。
【4.骨シンチグラム】
乳がんの場合、最も気を使うのは、他の部位にがんが転移していないかということ。そこで、乳房以外に、がんが広がっているかどうかを調べるために、「骨シンチグラム」を行います。これは骨に転移しているかどうかを調べるためです。 ごく微量のアイソトープを血液に 注入し、それが組織に沈着する様子を特殊なカメラで撮影。黒く染まっている部分が骨へ転移しているところです。
【5.MRI、CT検査】

さらに、乳がんの位置、大きさが確認され、手術を行うことになったら MRIやCT検査を行います。


MEDICAL TREATMENT&MEDICINE 治療と薬
局所治療
全身治療
・乳房温存手術
・乳房切除手術
・放射線治療

・抗がん剤
・内分泌治療剤
(抗女性ホルモン剤)
【乳がんの治療】

【乳房温存手術】

【乳房温存手術】
FRONTIER 最先端技術

検査マントーム















確実な検査で注目を集めているのが「マンモトーム」。 これまでの乳房専用のレントゲン、マンモグラフィでは、 しこりを感じない場合は、針の刺しようが無く、その病巣が、がんなのかどうか確認するためには、外科的手術をしなくてはなりませんでした。マンモトームは、乳房に太いヘアピンぐらいの大きさのに、さやのような管をつけた針を刺し、病巣とその周辺の組織を切除・吸引して採取します。採取時間は、10分ほどで、針を刺す傷口の大きさ4〜5ミリと小さいため、痛くなく、傷口も目立たないのが特徴です。 この細胞を検査し、良性、悪性の判断をします。 この検査により、かなり確実な乳がんの診断が行えるようになりました。
そして、薬で注目されているのが、「ハーセプチン」。 2001年4月に転移性乳がんの治療薬として承認を受けたばかりの薬 この薬はがん細胞の表面の「HER2」と呼ばれるタンパク質のみを狙い撃ちし、乳がん細胞の増殖を抑えます。特定の細胞を見分けるため、正常な細胞を傷つけず、副作用もないという、今後が期待されている新薬です。
そして、センチネルリンパ節という、乳がんの転移を防ぐ手術も注目されています。 乳がんの転移で一番多いのは、リンパ節への転移。従来は、脇のリンパ節を全て切除する手術が不可欠でした。 しかし、この手術を行うと、術後腕が腫れたり上がりにくいなど 後遺症が起こる事もあります。 そこで、注目されているのがセンチネルリンパ節。センチネルリンパ節とは、がん細胞が一番最初に流れ着くと考えられる リンパ節のこと。このセンチネルリンパ節に、がん細胞が見つからなければ、他のリンパ節へのがん移転はないと考えられるのです。方法としては、このナビゲーターと呼ばれる機械を使って、アイソトープでリンパの流れを感知します。音が大きく数値が高ければ、リンパの流れにのって、がん細胞が存在する可能性があるというわけです。

SELF MEDICATION 自己管理





乳がんは、しこりやひきつれなど、自覚症状があるため、自分で早期発見できる唯一のがんです。 そのため、自己検診は欠かせません。
自己検診の時、乳房を強くつまんではダメ。しこりと間違う可能性があります。自己検診は1ヶ月1回行うと良いでしょう。さらに、世界の乳がんの調査により、乳がんにかかりやすい人が分かっています。 データによると、乳がんの死亡率は、出産経験の少ない未婚の人が圧倒的に多い。さらに、初経が早い人、閉経が遅い人も発症しやすいので、注意が必要です。これが、エストロゲンの分泌期間が長いことが大きな原因のようです。
そして、もう1つ、動物性脂肪を好む人は、乳がんにかかりやすいことが分っています。動物性脂肪は、女性ホルモンのエストロゲンを作る、皮下脂肪の 蓄積を招くためだと考えられているからです。また、1日2杯以上のアルコールを飲むと、乳がんの発がん率は24%上昇するというデータもあります。
乳がんの予防には、自己検診生活習慣が大切。毎日の生活に 気をつけましょう。

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