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2002年8月4日(日) テーマは
小児肥満

今週のドクター今週のドクターは、
東京医科大学 名誉教授
村田 光範 先生


【略歴】

’60年3月 千葉大学医学部卒業
   東京女子医科大学附属第二病院小児科講師、助教授
’83年8月 同大学教授
’00年3月 同大学定年退職
現在現在和洋女子大学教授
専門は肥満など小児内分泌・代謝学

【ドクターの一言】
今の子どもは肥満の増加などその生活習慣に大きな問題を抱えている。その原因は豊かな社会・経済的状況であり、これを解決するにはわれわれ大人が豊かなことと贅沢なことを区別することである。


【著書】
こどもの肥満       日本小児医事出版社


CONDITION OF ILLNESS 病気と症状のメカニズム
夏休み真っ盛り!子どもたちは、降り注ぐ太陽の下、思い切り体を動かし、食べることも忘れて、遊びまくる!
と、思っていたら・・・ いるんです。外に出たくなーい、というこどもたち。暑い夏だって、涼しい部屋なら、食欲も衰えない!ついつい食べ過ぎちゃう! 夏は小児肥満が増える季節!肥満気味の小中学生の数はここ20年で、なんと3倍にも増えています。とくに小学校高学年の肥満児は急増! 問題はその中に、なんと「糖尿病」や「動脈硬化」「高血圧」といった生活習慣病がみられること。 しかも!小児肥満の6割から8割もが、大人の肥満に移行すると言われれば、放っておくわけにはいきません!
肥満と診断されたこどもを調べたところ、半分以上が4歳までの間に太り始めており、8割のこどもが11歳までに肥満が始まっていることがわかりました。
正常な人と太っている人の脂肪細胞を比較すると、その違いは歴然!大きさがまったく違います。 これが、内臓脂肪や皮下脂肪となって現れます。皮下脂肪型の肥満は、体全体が洋ナシ形に太っていくといわれ、健康障害につながることは少ない肥満。これまで日本人に比較的多いといわれてきました。 内臓脂肪型の肥満は、少々やっかい。これまでは欧米人に多いといわれてきましたが、最近は日本人にも増えているんです。この内臓脂肪型肥満、「大網」と呼ばれる内臓をささえる膜に脂肪がたまってしまう肥満です。
太っている大人は、通常よりも8倍の割合で、高血圧になりやすいのですが、こどもの場合、肥満していると、なんと通常より10倍から15倍もの割合で血圧が高くなるといいます。肥満していると、からだの隅々まで血液をいきわたらせるために、普通の人よりもたくさん血液がひつようとなります。量が増える分、血管に与える圧力も高くなり、高血圧になってしまうのです。
小学生
135/80mmHg以上
中学生
140/80mmHg以上
135/80mmHg以上
【高血圧の目安】
EXAMINATION 検査
こどもの年齢成長過程によって太りすぎかどうか判断しなければいけません成長の時期でみきわめることが大切です。肥満かどうかを知る検査の第一歩は、身長と体重の測定。しかも、できるだけ頻繁に記録しておくことが大切なのです。身長の伸びに比べて、体重がどのように増えているか。これを生まれてから今までの分、ずっとグラフにしたものを「身長体重成長曲線」と呼び、こどもの順調な発育をみるうえで重要なてがかりになります。もとになるグラフには、平均値と、それぞれの許容範囲のラインが引かれています。 このグラフに実際に測った数値を記入していき、カーブをチェックします。 体格差がありますが、ここで見るのはその変化の仕方。 自分の数値と近いモデルのカーブと、同じような曲線を描いているかが、ポイントです。
そしてもうひとつ重要な決め手単なる肥満なのか、病的な肥満症なのか、それを見分けるカギは、おへそを通るおなか回りのサイズにあったのです!もしこどものときにおなか回りが80センチ以上あると、肥満症の可能性大!ちなみに大人では、男性が85センチ以上、女性で90センチ以上が要注意です。

【身長体重成長曲線】

MEDICAL TREATMENT&MEDICINE 治療と薬
小児肥満には、夏休みを利用して、2泊3日程度のサマーキャンプで、食事や運動を指導する治療法もあります。
栃木県の石原総合病院では毎年、医師や看護婦、栄養士、運動指導員が一体となって、小児肥満のサマーキャンプを行っています。太っているということは、常に重い荷物を抱えているようなものだと説明し、規則正しい共同生活のなかで、食べる前に、これから自分が食べようとしているものの栄養バランスや、カロリーなどの説明を聞き、理解して、納得してから、ようやく食事開始!これなら、暴飲暴食はつつしみたくなります。
また、できるだけ体を動かすことにも慣れさせます。太りすぎのこどもは、重い荷物を抱えて生活しているのと同じ。だから、たいていは動くことが苦手です。こちらも本人の自覚を促しながら、体を動かすことの楽しさを教えていきます。
この運動指導、実は、最初に集中して行うことが、その後の意識変化に大きな影響を与えることがわかっています。
FRONTIER 最先端技術








アメリカの医学誌「ネイチャーメディシン」に発表!!
「肥満」のメカニズムに、「GIP」という、十二指腸から分泌されるホルモンが重要な役割を果たしているというのです。「GIP」この聞きなれないホルモンに注目したのは、京都大学医学部、清野(せいの)裕教授らの研究グループ。
「GIP受容体」のないマウスを作って、普通のマウスとともに実験を行いました。
普通のマウスの場合、高脂肪食を与えたマウスは、通常の食事を与えたマウスより35%も体重がふえ肥満したマウスになってしまいました。「GIP受容体」のないマウスには、食べものの違いによる体重の差はありませんでした。高脂肪食をとり続けても太らなかったのです。
「GIP」が「GIP受容体」と結合すると、血液中の脂肪分を取り込みやすくする脂肪合成酵素が出ることもわかりました。
さらに 「GIP受容体」がないマウスは、高脂肪食を与えられた直後から普通のマウスよりも脂肪をたくさん消費することも分かったのです。これまでの肥満の治療薬は、食欲をおさえることが主流だったのですが、今後、GIPや、GIP受容体の働きを抑える薬ができれば、脂肪の蓄積という「肥満のモト」を断ち切ることができるかもしれません。
SELF MEDICATION 自己管理










実は、小さい頃の生活習慣がその後の思春期の肥満と大きく関係していることが判明しました。およそ2000人のこどもの生活習慣をつぶさに調査したのは、山梨医科大学の山縣然太郎教授。
こどもたちの1歳半と、3歳の時点の生活習慣を聞き取り、肥満とどんな相関関係があるかを調べました。
【1歳半の肥満は?】
1歳半の時点であることをしている子は、肥満になりやすい! 
さてそれは? 答えは「1人遊び」。家の中でひとりで遊ぶことが多い子供は、運動不足の習慣がついてしまい、その習慣が思春期まで持続してしまうのです。
【3歳の肥満は?】
3歳の時点であることを決めておかないと、肥満になりやすい!
それは何? 答えは「おやつの時間」。
この時点で、時間をきめた食生活を送っていないと、欲しいときにいつでも食べてしまう子になり、食べる量が増えて、太りやすくなるのです。
【肥満を抑える飲み物は?】
あるものを飲む習慣のあるこどもは、肥満しにくいことがわかりました。それは何? 答えは「牛乳」。
なんと、牛乳をよく飲むこどもは肥満になる割合が低かったのです。山梨医科大学、山縣教授は、小児肥満を予防するためにこどもを外で十分遊ばせる。子供のおやつの時間をきちんと決める。そして、牛乳を飲ませる ということを提唱しています。

小児肥満は、アメリカでも問題になっています。
ペンシルバニア州立大学で提唱しているのは、こちら、キッズ・アクティビティー・ピラミッド。これは、子供たちにも分かりやすく運動・食事の関係をピラミッドで示したもので、毎日できるだけたくさんしましょう、ということが一番下に出ています。イラストは、毎日口にする主食の食材。パスタやパンが、毎日、外で遊ぼう、エレベーターではなく階段を使おう、お店まで歩いて!などとこどもたちを励まします。
2段目週に3〜5回したほうがいいこと。最低20分以上の有酸素運動やリクレーション。自転車こぎ、縄跳び、スケートなどを週に3〜5回はやりましょう。週に2〜3回、おすすめなのは、カヌーやパターゴルフ、ジムでのトレーニングなど。食べものは、乳製品や、高カロリーのうなぎがでています。ピラミッドの頂上は、なるべく減らしていこうという習慣。
テレビや ビデオ。コンピューターゲームが入っています。 コーラとバターが並んで、「一回に30分以上座っていることも少なくしていこう」といっています。自分だけの目標を作っていけるよう、

白紙のピラミッドもついています。これは、自分自身の習慣を見直し、楽しみながら目標をつくっていくプログラムです。


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