"DNA"とは?〜親子鑑定・どうして親子と分かる?〜親から子へと受け継がれるDNA。 親子鑑定は、そこから始まります。 |
父親のDNAと、母親のDNAを半分ずつ受け継いで、子供のDNAが決まるのです。 |
では一体、DNAのどこをどのように調べれば、親子かどうかが分かるのでしょうか?
犯罪捜査などで証拠を医学的に分析する法医学の専門家、神奈川歯科大学・山田良広先生に伺いました。 |
23対の染色体が集まった、DNA。調べるのは…?
山田先生:「例えば、この8番目の染色体は、真ん中辺りの塩基配列を調べることによって、父親と子供の、あるいは母親と子供の遺伝を発見することができます。」
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塩基の配列!それが、親子鑑定のキーワード。 DNAというのは、たった4種類の塩基という化学物質がいろいろな順番で並ぶことで、さまざまな遺伝情報を伝えているのです。 A,G,C,Tという4つの塩基の並び方が重要なポイント。 親子鑑定では、この配列を調べるのです。 |
では、DNA鑑定がどのように行われるのか見せて頂きましょう。 どこの細胞でも同じDNAが鑑定できますが、通常、口の中の粘膜の細胞を採取します。ここは痛みも少なく、たくさんの生きた細胞がとれるのです。 採取した粘膜に特殊な液体を入れて、DNAだけを取り出してゆきます。 |
たんぱく質など、DNA以外の成分を溶かす薬品を使うと、試験管の中はどうなるのでしょうか?
山田先生:「100%エタノールの中に入れると、このように、DNAが白い塊になって、目で見えるようになります。」
この白い塊が、人間のDNAです。 |
このわずかな塊を、機械を使って増やします。DNA鑑定をするには、採取した量のDNAだけでは足りないからです。この機械に3時間かけると、DNAは、なんとおよそ10億倍にも増えるのです。 |
さて、いよいよ、DNAを構成する塩基の配列の分析に入ります。 こちらの機械を使って、増やしたDNAの配列を分析していくのです。 |
遺伝子の配列は、グラフで示されます。 例えば、8番目の染色体に示される、二つの山。 一つは、父親から受け継いだDNAの配列、もう一つは、母親から受け継いだDNAの配列を表しているのです。 |
山田先生:「子供には、必ず両親の遺伝子が1つずつ入っています。それに矛盾が出てしまうと、親子ではないということになります。」
実際の母親と息子のDNAを比べてみましょう。 左が、母親のDNA配列の分析結果、右が、息子の分析結果です。 |
2つの結果を重ねてみましょう。 山になっている所が一つ、きれいに一致しました。確かに、母親のDNAが受け継がれています。 |
DNAによる親子鑑定では、8番目の染色体を始め、全部で15ヵ所のDNA配列を調べて、二人が一致するかどうかを比べます。
この15ヶ所は、人によって配列の違いが出やすい場所だということが分かっており、より正確な鑑定ができるのです。 DNA鑑定は、現在、親子を特定できる最も正確な方法なのです。 |
"DNA"の構造発見までの歴史
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気が遠くなるような解読には、アメリカ、イギリス、フランス、ドイツ、中国、そして日本という、6カ国の国際チームが13年かけて取り組みました。 日本は、染色体の11番と21番、22番を担当しました。 |
ここまでの道のり・・・それは、19世紀にさかのぼります。1800年代半ば…、 『子供が親に似るのは、親から子へ、何かの物質が伝わっているからではないか…』と、考えた人がいました。 それが、オーストリアの修道士グレゴール・メンデル。 彼は、ある時、エンドウ豆に緑の丸い豆と黄色のシワシワの豆ができることに気が付きました。その2種類を交配すると、1世代目の畑には、緑の丸い豆だけができました。 次に、この畑でとれた緑の丸い豆だけを交配すると、2世代目には緑の丸い豆だけでなく、 |
次に、この畑でとれた緑の丸い豆だけを交配すると、2世代目には緑の丸い豆だけでなく、 緑のシワシワの豆、黄色の丸い豆、そして黄色のシワシワの豆ができました。 この結果から、メンデルは、親から子、子から孫へと性質が遺伝する「メンデルの法則」を発見したのです。 |
1865年、その法則を発表したメンデル。 しかし、実際にどんな物質がどのように伝わって遺伝するのかという肝心の部分は謎に包まれていました。 遺伝する物質、つまりDNAが発見され、その働きが分かるまで、そこからおよそ50年を費やしたのです。 1902年、アメリカの生物学者・サットンが、「遺伝には染色体が関わっている」と発表しました。 彼は、バッタの細胞を調べて、染色体の存在を突き止めたのです。 そして、1929年、アメリカの化学者・レヴィーンが、染色体の中にある物質を分離して、DNAと名前を付けました。 さらに15年後の1944年、細菌学者・エイブリーは、「DNAこそ、親から子への遺伝を伝える物質である」ということを実験で証明したのです。これは画期的な発見でした! ・・・しかし、この時点では、DNAが実際にどのようにして、親から子に伝わるのか、その仕組みは分かっていなかったのです。 これを証明するには、DNAの構造を明らかにする必要がありました。 そして、1953年4月25日。ついに、DNAのナゾが解き明かされました! アメリカの遺伝学者、ジェームズ・ワトソンと、イギリスの物理学・生物学者のフランシス・クリック。 二人は共同で、DNAの構造が二重らせんであることを突き止めたのです。 当時、DNAに取り組んでいた世界中の学者は、ほとんどが化学式によって、その構造を明らかにしようとしていました。 |
しかし、ワトソンとクリックは、実際に分子構造の模型を作ることから始めました。この試みによって、誰よりも早く、DNAの二重らせん構造にたどり着いたのです。 |
二人の論文は、世界で最も権威ある科学雑誌『ネイチャー』に発表されました。わずか1ページ、900の単語でつづられた歴史的な論文!ここから、生命がどのように成り立っているかを解き明かす研究は、大きく進むことになったのです。 この発見により、ワトソンとクリックは、ノーベル医学生理学賞を受賞しました。 DNAの2重らせん構造の発見から50年、ようやく、DNAの30億に及ぶ塩基配列の全てが明らかになったのが3年前のことです。 |
"DNA"の研究によって今後の病気の治療はどう変わる?
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センター長・中村祐輔先生に伺いました。 中村先生:「遺伝子で、がんの個性を調べて、この患者さんには、この治療法でやった方が良いとか、この患者さんにはこの治療法は合わないとか、そういったことを判別して、その患者さんに本当に合った薬、治療法を提供するということを考えています。我々が今、積極的に始めているのが、膀胱がんです。」
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膀胱がんの場合、通常は手術の前に、まずは抗がん剤を使って治療を行います。 こちら、赤い矢印で示した黒く映っているのが、がん。 白く映っているのが、尿が溜まっている場所で、大きくなったがんが圧迫しているのが分かります。 |
抗がん剤治療をして薬の効果があれば、このように、がんは劇的に小さくなります。 こうなれば、膀胱を摘出しなくてもよくなる上、再発の可能性も抑えられます。 しかし、残念ながら、抗がん剤の効果がなく、がんが小さくならない場合があります。 |
このように、抗がん剤の効果がない場合は、抗がん剤による治療をしている間に、がんが進行してしまうことにもなります。 もし、DNAの情報から、治療の前にあらかじめ、薬が効くか効かないかを調べておくことができれば、薬が効く人には抗がん剤による治療を、効かない人には薬を使わずに早めに手術を行う治療を、などと個人個人の体質に合わせて、より適切な医療を選ぶことができます。 中村先生:「今年の終わりくらいには、二つや三つの病気に関しては、病院で患者さんが30分くらい待っている間に、遺伝子による判定ができるようになります。
今から5年、10年の間には、一般の病院でそういうことが当たり前に行えるようになると考えています。」 現在、このプロジェクトには、糖尿病や胃がんなど47の病気について、26万人分の患者さんの血液が集められ、DNAの解析が行われています。 中村先生:「どの遺伝子を持っている人が、どんな病気にかかりやすいのか、あるいは、どういう遺伝子のタイプの人が薬が効きやすいのか効きにくいのかということを、データベース化を計って、より安全でより効率的な医療を患者さんに提供していくための基礎を作る研究です。」
自分のDNAから、一番効果のある医療を選べる時代はすぐそこ! |
将来自分が病気になったとしても、遺伝子を調べて自分に合ったクスリが分かればより適切な治療が受けられるようになるということですね。」
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細かいところまで分かるようになってきたなんてすごいですね!
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