高脂血症とは?


血液の中のコレステロールや、中性脂肪の値が高くなる「高脂血症」。
そのまま放っておいて生活していると何が起こるのでしょうか?
細川内科クリニック 院長・細川和広先生に伺いました。

細川先生:「動脈硬化を引き起こします。動脈硬化が原因となる心筋梗塞や脳梗塞になる可能性もあります。」

命に関わる動脈硬化!
こちらは、その動脈硬化を起こしている頚動脈の手術映像です。
この黄色い部分が、血管にくっ付いたコレステロールや脂肪の塊!
恐ろしい動脈硬化。
それは、悪玉コレステロールとして名高いLDLコレステロールが原因でおこります。
本来、LDLコレステロールは全身にコレステロールを運ぶ、身体にとっては必要不可欠なもの。

ところが・・・・ある変化が問題に!
細川先生:「悪玉コレステロールが酸化すると非常に危険です。」
悪玉コレステロールは、精神的なストレスや、たばこなどが原因で酸化してしまいます。
酸化した悪玉コレステロールは、血管の壁にべったりとくっ付きやすく、これが溜まってくると血管の内側が狭くなり、結果として、血液の流れが悪くなってしまいます。
これが、動脈硬化!
こちらは、造影剤を使って、血管を白く浮かび上がらせた映像です。造影剤の流れが分かりますね。
ずっとたどっていくと・・・、ありました!この流れが滞っている部分が、動脈硬化を起こしている場所なんです。
動脈硬化が進んでいる最中は、本人に自覚症状は全くありません。
では、悪玉コレステロールが酸化しているかどうかを調べる方法はあるのでしょうか?
細川先生:「血液検査では、LDL(悪玉)コレステロールが酸化されているかどうかは分かりません。ですから、まずLDL(悪玉)コレステロール値を測って頂き、その値が高い場合は注意が必要です。」

血液の流れが悪くなる動脈硬化は、様々な病気の原因となります。
普通に歩いているときに、時々足に痛みを感じ、しびれが起こる。
でも、少し休むと症状が治まってきて、また歩きはじめると、しばらくしてまたまた痛む・・・。これは、足の血管の動脈硬化が原因の症状です。
動脈硬化による血流不足で、筋肉が酸欠状態になって痛みが出てくるのです。
この症状を「下肢動脈閉塞症」といいます。

これは「ドプラー聴診器」と呼ばれるもので、足の動脈の血流を音で確認することができる機械です。
血液が滞りなく流れている様子が規則正しい音から分かります。
ところが、先程の下肢動脈閉塞症になると、この音が消えてしまうのです。
細川先生:「下肢動脈閉塞症の患者さんを調べてみると、脳や心臓の血管にもダメージがあることが多いです。全身の動脈硬化の一つの現れです。」
もしも、脳の血管で動脈硬化が起こると、脳の血管が詰まってしまう脳梗塞。
そして、心臓の血管で動脈硬化が起こると、心筋梗塞などを起こし、命に関わる事態になります。
では、動脈硬化予備軍でもある高脂血症は、一体どういう人がなりやすいのでしょうか?
細川先生:「太っていなくても高脂血症になります。血液の中のコレステロールの約8割は肝臓で作られます。コレステロールを作りやすい体質の方は、脂っこい食事を摂ったり、食事をたくさん食べたりしているわけでなくても、値が高い方もいます。」

動脈硬化を防ぐためにも、高脂血症を早期発見することが大切!
皆さんも、ご自分のコレステロールの値はぜひ自覚しておきましょう!

人はなぜ脂肪を好む?


人間は脂肪を多く含んだ料理を美味しいと感じますよね。
霜降りステーキやトンカツなど、脂肪の多い料理が好きな方は多いと思いますが、どうして美味しいと感じるのでしょうか?

浜松医科大学名誉教授・高田明和先生に伺いました。

高田明和先生:「脂肪は、他の食べ物に比べたら味を感じません。」
味を感じないはずの脂肪。それなのに、なぜ「美味しい」と感じるのでしょうか?
高田明和先生:「舌に味を感じる場所があるのですが、脂肪の場合は、その味を感じる場所と結合すると、味は感じませんが、その刺激が脳に送られて、快感、嬉しい、楽しいという気持ちを起こさせるのです。」

脳が脂肪を美味しいと感じる仕組み
人間は食べ物を食べたとき、“味覚の感覚野”で味を感じます。
脂肪の場合、味は感じませんが、舌で感じた刺激は神経を通じ脳へ伝わります。
すると、ドーパミンとエンドルフィンという快感物質が出されます。

脂肪を食べると、脳が快感を覚えるため、ステーキなどの本来の味と重なってより美味しく感じるのですね。

コレステロールと中性脂肪の働き


コレステロールも中性脂肪も、本来、私達が生きていく上でなくてはならない成分です。
では、その役割をおさらいしておきましょう。

○コレステロールが果たす役割・その@・・・細胞膜の材料になる。
私達人間の身体は、およそ60兆もの細胞でできています。
一つ一つの細胞は、全て細胞膜で包まれているのです。その膜の材料となるのがコレステロール。この細胞膜が、細胞の中に余分な水分が入り込まないようにして細胞の中の構造を支えています。
もし、人間にコレステロールがなかったら、全ての細胞は膜を失い、ぐしゃぐしゃになってしまうのです。

○コレステロールの役割・そのA・・・ホルモンの原料になる。
コレステロールは、副腎、精巣、卵巣で様々なホルモンを作り出しています。
子供の成長を促す成長ホルモンや、男性らしさ、女性らしさを司る性ホルモンの原料がコレステロールなのです。

かわって、中性脂肪の役割は、エネルギー源、体温を保つ。
中性脂肪は体内に吸収されると、肝臓や脂肪組織に蓄えられます。
人間が活動するとき、そのエネルギー源として、まず始めに糖質が使われます。その糖質が足りなくなったときに中性脂肪がエネルギー源となるのです。
また、中性脂肪は、私達の体温を保ったり、外部の衝撃から内臓を守る役割も果たしています。

本来、生きるために必要な成分であるコレステロールと中性脂肪。
身体に溜まりすぎると、問題が起こるのです。過剰な摂取はくれぐれもご注意下さい。

高脂血症のクスリ


恐ろしい動脈硬化、さらには、脳梗塞、心筋梗塞など命の危険にかかわる病気を引き起こす高脂血症。
生活習慣病の高脂血症は、食事療法や適度な運動など、生活を改善することから治していきますが、3ヶ月たっても効果がない場合は薬を使います。
高脂血症の薬には、一体どんな種類があるのでしょうか?
細川先生:「コレステロールを下げる薬は、スタチン系の薬剤が主流です。これは、肝臓でのコレステロールの産生を抑える薬です。これが、今一番効果が高いと言われています。」

他には、食事をしたときに脂肪分の吸収を弱め、コレステロールを増やさないようにするものや、コレステロールの酸化を防ぎ、動脈硬化を起こしにくくする薬があります。

では、中性脂肪を下げる薬にはどんなものがあるのでしょうか?
細川先生:「中性脂肪を下げる薬は、フィブラート系の薬があります。これもやはり、肝臓で働いて中性脂肪の産生を抑える薬です。」

また、薬の他にも、コレステロールの吸収を抑える効果がある特定保健用食品も効果的です。
こちらは、海草をもとにした水に溶けるタイプの食物繊維が配合されています。
この食物繊維が小腸でコレステロールを吸いつけて、身体の外に運び出してくれるのです。そのために、体内ではコレステロールは吸収されにくくなります。
元々コレステロールの値が高めの方、そして、肉類や揚げ物を摂る機会が多い方などに効果的です。
脂肪に味がないなんて意外でした!
悪玉コレステロールを増やさないように気を付けたいですね。