喉のイガイガ・痛みの原因


朝起きたとき、何だか喉がイガイガする!この違和感は一体何だ?
そんなとき、喉では何が起きているのでしょう?
虎の門病院・耳鼻咽喉科の熊川孝三先生に伺いました。

熊川先生:「喉のイガイガの原因は、声帯の粘膜の乾燥です。ほとんどの人は口を開けて寝ているため乾燥しているのです。」
朝起きた時に感じるイガイガ。
それが起こっている声帯は、喉のかなり奥にあります。
これは、内視鏡で見た実際の声帯です。
夜寝ている間に、この声帯の表面の粘膜が乾燥すると、喉のイガイガは起こります。
でも、それは・・・、
熊川先生:「食事をすると、唾液など水分が補給されるのでイガイガが治るのです。」
イガイガではなく、唾を飲み込むとヒリヒリしたり、喉のあちこちに痛みを感じる。
こんなときは何が起きているのでしょう?
熊川先生:「喉と言っても広いのでいくつかあります。まず、扁桃腺です。扁桃腺が腫れると、ご飯を食べる時に特にかなり痛みます。首のリンパ節が腫れたり、高熱が出ます。そして、喉のもっと奥の咽頭が炎症を起こすと、ヒリヒリ感があり、食べ物が喉を通る時に、焼けつくような痛みが起こります。」
痛みを感じる場合は、喉の入り口にある扁桃や、奥の咽頭。2つの箇所で、粘膜が炎症を起しているのです。
これは、風邪を引いて弱った粘膜に、細菌が付着する事が原因の痛みです。

では、声がかすれたり、声が枯れたりする場合は?
熊川先生:「声帯が炎症を起こすと、声が枯れてダミ声になります。」
私達が黙っているとき、声帯は肺に空気を送りやすくするため、V字型に開いています。
声を出す場合、声帯はこのように閉じて振動しています。
つまり、私達は声帯を振動させ、声を出しているのです。
そして、大きな声を出している時、声帯は強く振動しています。
例えば、カラオケで何時間も大きな声を張り上げて歌っていれば、強い振動が声帯を刺激し続け、その結果、炎症が起きてしまいます。
これが炎症を起こし、真っ赤に腫れた声帯です。
熊川先生:「声帯が炎症を起こして腫れていると、振動しにくくなり、声が枯れてしまいます。」
このように、声帯で炎症が起きているにも関わらず、カラオケ等で大きな声を出す。煙草を立て続けに吸う。お酒をたくさん飲む等、声帯に不必要な負担をかけ続けると、炎症を起こしていた声帯には、血豆が出来てしまいます。
これが、いわゆる声帯ポリープ。
熊川先生:「慢性的になると、声帯がペンダコのように固くなって、声帯結節ができてしまいます。ポリープのさらにひどくなったものを声帯の結節と言います。」
この結節、鉛筆やペンを一日中使っている人にペンダコが出来るように、よく声を使う、声帯の負担が大きい人にできやすいのです。
では、年を取るにつれ、声がかすれていくのはどうして?
熊川先生:「誰でも、60代後半〜70代になると声が変わってきます。顔にシワができるように、声帯にもシワができることが声が枯れる原因です。これは病気ではありません。どんどん声を出して、声帯を使った方が加齢による声枯れを遅らせることができます。」

また、意外な原因で喉が痛む場合もあります。
熊川先生:「胃液が食道に逆流して、喉に痛みが起こる逆流性食道炎です。喉に痛みがないのに、ヒリヒリした痛みや異物感が起こります。」
逆流性食道炎とは、胃酸が食道に逆流するために起こる食道の炎症です。

でも、食道の炎症なのに、どうして喉に痛みが?
食道の神経は、脳から喉、そして食道へと、同じ一本のラインで実は繋がっています。
そこで食道に炎症が起きても、脳は喉に炎症が起こったと勘違いして、喉の痛みを感じるのです。
熊川先生:「中年以上の人や、特に太っている人は内臓脂肪で胃が圧迫されるので、逆流性食道炎になりやすいのです。」

一口に喉の痛みといっても、様々な原因があります。

世界最古の喉のクスリとは?


今からおよそ3200年前の古代エジプト。
ここで、喉の痛みを止める世界最初のドロップが生まれました。
その原料として使われたのは、蜂蜜、ハーブ、そして柑橘類。
ここで注目したいのが蜂蜜!
蜂蜜はその後、長年に渡り、世界各国で、喉の痛みを治す薬として用いられていくのです。

例えば、東欧のハンガリー。
この地方に、古くから伝わる習慣によれば、ティースプーン1杯の蜂蜜を、舌に乗せて喉に少しずつ流し込むと、喉の痛みが和らいでくると言われています。

一方、所変わって、アメリカ合衆国に伝わる蜂蜜の使い方は、蜂蜜と重曹を水に溶かし、その水でうがいをする。すると、喉の痛みが取れると言われていました。
事実、蜂蜜に関しては、現在の研究で、甘みの成分が唾液の分泌を促して、喉の通りを滑らかにすることが判明しています。

さて、喉の薬が蜂蜜のような液体から固形に変わったのはアメリカでのこと。
1872年、スミス兄弟により、固形のドロップ゚が考案されました。
当時、ニューヨークでレストランを経営していた兄弟は、ある時、店の定連客から、よく効く咳止め薬の処方を譲り受けると、その処方を元に固形のドロップを作り上げる事に成功しました。
最初に販売されたドロップの箱。
その広告には、こう書かれていました。「風邪による咳に効果的」

この咳止めドロップは効果抜群!爆発的に売れ始めます。
すると、これは儲かる!と、すぐさま類似品のドロップを作る人が次々と現れました!
そこで兄弟は、目印に自分達の似顔絵を、薬の箱にはり付ける事を考えました。
こうして、兄弟2人の似顔絵をトレードマークとした、スミス・ブラザーズ・ドロップは、咳止めドロップの代名詞となり、以来130年、現在もアメリカで人気を集めているのです。

喉のクスリ


喉の痛みがひどくならないよう、普段から予防する一番の方法。それは“うがい”。

うがい薬にはどれも喉の炎症を抑えるための成分が入っています。
その成分、アズレンスルホン酸ナトリウムは、医療用として使われています。

Q:では、うがい薬を使うときの効果的な使い方とは?
日の出薬局・薬剤師 高橋洋一さん

高橋さん:「3回に分けてうがいをします。初めの2回は、ブクブクうがいで口の中をきれいにします。3回目は、喉の奥に入るように上を向いて「オー」というような声を出しながら、ガラガラうがいをします。このようなうがいの仕方が良いでしょう。」
喉をきれいにする前に、まず口の中にいる雑菌を取り除く。
そのためにブクブクうがいを2回行って下さい。
そして最後に、喉の奥まで薬が届くよう、しっかりガラガラうがいをしましょう。
Q:では、喉の薬・トローチ、つい噛み砕いてしまいますが?
高橋さん:「トローチを口の中でなめていることで、消毒殺菌成分や炎症を抑える成分が溶けて、喉を通過するときに効果を発揮します。ですから、トローチはできるだけ長い時間口の中にあることが大切です。」
Q:喉が痛いとき、ドロップもなめますよね?
高橋さん:「ドロップは医薬部外品と言い、医薬品と同じような効果を持つ成分が入っていて医薬品よりも手軽に買うことができます。」

一方、最近多いスプレータイプの場合は・・・、
消毒・殺菌や炎症を抑える成分が痛みや腫れに効果を発揮。
Q:使うときの注意点は?
高橋さん:「スプレータイプの薬は、息を吸いながらではなく、吐きながら噴射しましょう。喉の痛いところに直接、噴霧できるので出先や仕事中にも気軽に使うことができます。」

喉はデリケートな場所。
そのため、痛みが出やすく、放っておくと、ひどくなりやすいのも特徴です。
薬を上手に使い、喉を守りましょう。
今回は自分で実践していることが多かったです。スプレータイプの薬を使うときは、息を吐きながら噴霧すると本当に使いやすいですよ。
私が今までやっていたうがいの仕方が間違っていたことが分かりました。これからは正しいやり方でうがいしようと思います。