髪の毛のクスリの歴史
今からおよそ2000年前。ローマ帝国の最高権力者、ユリウス・カエサル。
カエサルといえば、頭に月桂冠を被っていたことで知られています。
実はこれ、薄い毛を隠すためだったと言われています。
当時、権力や生命の象徴と考えられていたのが髪の毛!
それが無くなる事は、権力者にとって許されないことでした。
それから時を経た19世紀に至っても、髪の毛が抜ける事は、ヨーロッパの人々の心配の種でした。
その証拠となるのが・・・
当時のイギリスで、マカッサル油という髪生え薬が大流行した事!
これはインドネシアのマカッサル地方で摂れた油を原料としたもの。
頭に振りかければ振りかけるほど効果があるとされていたこのクスリ。
貴族であり、世界的な詩人だったバイロン。実は彼もこのマカッサル油をその著書に登場させるなどして愛用したといいます。
長年注目されてきた抜け毛ですが、研究が進んだのは、20世紀半ばから。
その先駆けとなったのが、アメリカの皮膚科の医師、ジョージ・ハミルトン。
1942年、彼は歴史上初めて、脱毛の原因となる物質を突き止めます!
彼の報告によると、睾丸を摘出された男性には脱毛が見られない。
そして、既に脱毛が起こっている人でも、去勢されると進行が止まるという事実を突き止めました。
ここでハミルトンは、1つの推論を立てます。
「男性の脱毛には、男性ホルモンが関係しているのではないだろうか?」
そこで、去勢されていた人に、代表的な男性ホルモンであるテストステロンを注射してみました。
すると、止まっていた脱毛の進行が再び始まったのです!
こうして、ハミルトンによって明らかにされた、脱毛と男性ホルモンとの因果関係は現在でも定説となっているのです。
髪の毛のメカニズム
どうして男性の髪の毛は、抜け落ち、そして生えてこなくなるのでしょうか?
元々、私達の髪の毛には一定の寿命があります。
一定の状態まで成長した後、髪の毛は自然に抜け、再び同じ毛穴から新しい髪の毛が生えてくる仕組みになっています。
この仕組みはヘアサイクルと呼ばれ、
髪の毛が成長し続ける「成長期」、
成長が止まって髪が抜ける「退行期」、
髪が抜け落ち、新しい毛を作る準備をする「休止期」の
3つに分かれます。
髪の毛が成長し続ける「成長期」、
成長が止まって髪が抜ける「退行期」、
髪が抜け落ち、新しい毛を作る準備をする「休止期」の
3つに分かれます。
男性が薄毛になる「男性型脱毛症」では、ヘアサイクルの成長期にある毛髪が、十分に成長しないうちにどんどん抜けてしまうのです。
脱毛症の原因は、男性ホルモン。
では、男性ホルモンがどのように働いて、毛が抜けてしまうのでしょう?
東京女子医科大学 皮膚科・林伸和先生
林先生:「男性の頭頂部から前頭部にかけて、特殊な酵素が存在します。その酵素が、男性ホルモンのテストステロンを変化させて、変化した男性ホルモンが髪の毛に作用し、脱毛が起きるのです。」
男性の身体の中では、次から次へと男性ホルモンが分泌されています。この男性ホルモンは毛包に移動すると、そこでより強力な男性ホルモンへと作り変えられます。
男性ホルモンの影響で、毛母細胞は細胞分裂を止めて毛を作らなくなってしまうのです。
その結果、本来なら最低でも2年ある成長期が、半年か1年で終わってしまい・・・
退行期や休止期に移行してしまいます。
つまり、成長が止まった、まだ細くて柔らかい毛のまま抜けてしまうのです。
その結果、特別な酵素のある頭のてっぺんから額にかけて髪が薄くなっていくのです。
しかし、男性なら誰でも特別な酵素があるはずなのに、脱毛症になる人、ならない人がいるのは何故なのでしょうか?
林先生:「髪の毛の方の問題なのか、酵素の問題なのか、そのあたりはまだはっきりと分かっていません。」
次の疑問。男性ホルモンの影響によって、一度抜けてしまった髪の毛はもう元に戻らないのでしょうか?
林先生:「毛穴が残っている場合は可能性があります。」
失った髪の毛。その復活の目安となるのが毛穴。脱毛後も数年間、毛穴はあります。
林先生:「年を重ねれば誰しも少しづつ髪の毛は薄くなっていきます。フサフサした髪の毛を長く保つためには早めの治療が大切です。」
まだ、毛穴のあるうちに薬を使って毛根全体を刺激する。それが髪の毛を復活させる可能性へとつながっているのです。
発毛の有効成分“ミノキシジル”
最近どうも髪の毛が薄くなってきた。そう感じている方は、一刻も早くヘアケアが必要!
そこで・・・
あきらめていた男性型脱毛症に効果を発揮する薬があります!
林先生:「ミノキシジルの付け薬が有効です。実際に、髪の毛が太くなったり、増えたりするというデータが得られています。」
このミノキシジルは、アメリカで血圧を下げるための降圧剤として、1969年に開発されました。ところが、この降圧剤を使った患者のこめかみや肩、背中や足に毛が生えてきたのです。
これが1971年のこと。
これに、研究者が目を付けました。
「もしや、ミノキシジルは髪の毛の復活にも効果があるのではないか?」
やがて、発毛効果が実証され、ミノキシジルは発毛剤として使われるようになります。
毛母細胞を活発にする効果により、ミノキシジルは発毛を促進させるのです。
現在、ミノキシジルの入った発毛剤は薬剤師さんのいる薬局で簡単に手に入ります。
では、この発毛剤は、どういうときに使うと効果的なのでしょう?
薬剤師・高橋洋一さん
高橋さん:「最近、髪が薄くなってきたなと思ったらお使いになると良いでしょう。髪が薄いと感じるのは、髪の数が少ないということもありますが、なにより髪の1本1本が細くなっているということも原因です。」
全体のボリュームが乏しくなり、髪の本数が減って髪の毛の1本1本も細くなってきた。こんな状態で薬を使うと・・・
ミノキシジルが毛母細胞の働きを活性化して、髪の毛を再び太くします。
では、実際に使う際は、何に注意すればよいでしょうか?
高橋さん:「この薬は1日に2回使うのが標準になっています。朝と夕方、決まった時間に使用すると良いです。」
発毛剤の使用回数は、多すぎても少なすぎてもいけません。最適なのは1日2回。例えば、朝7時と夜7時といった具合。12時間、間をあけて塗ると、24時間効果が持続するのです。
高橋さん:「次に大事なことは、薬を使う前に頭皮をマッサージすることです。マッサージすると血行が良くなり、薬の効果が上がります。」
発毛剤を塗る際は、その前にまず、指の腹の部分を使って頭皮にマッサージをします。こうして血行を良くしたら、髪の毛をよく掻き分けて頭皮に直接、発毛剤を付けましょう。
それと、もう一つ大切なのが・・・
高橋さん:「髪が濡れた状態では使用しないようにしましょう。髪が濡れていると、薬が髪にくっ付いてしまって、頭皮に充分な量が行かないからです。」
髪の毛が濡れていると、浸透圧により、発毛剤が頭皮まで届きません。また、ミノキシジルを使った発毛剤は、使用期間も大きなポイント!
高橋さん:「1〜2ヶ月使ってやめてしまう方がいらっしゃいますが、この薬は6ヶ月以上使って頂きたいです。なぜなら、髪の毛が生えるサイクルというのはある程度時間がかかります。6ヶ月以上使うと効果的です。」
薄毛にお悩みの男性の皆さん、ミノキシジル入りの発毛剤を使って、毛根の復活、髪の毛の再生を目指して下さい。
おくすりゼミナール「クスリの正しい飲み方」
薬は水で飲むのが良い。よくそう言われますが、それはどうしてなのでしょうか?
お茶で飲んでは、何故いけないの?
この素朴な疑問に、答えてくださるのは、東京都学校薬剤師会・会長の田中俊昭さんです。
「今日は、お薬の正しい飲み方について実験をしてみましょう。まずこちらを用意しました。」
今回、実験に使ったのは、2種類の薬。
それぞれの薬に、水とお茶を入れると、どんな変化が起きるのでしょう?
「では、それぞれの薬に水とお茶を入れてみましょう。」
まずは、水を薬AとB両方に入れてみます。
どちらの薬にも、全く変化は現れません。
では、次にお茶を入れてみます。
まずは、薬Aにお茶を入れてみましょう。
続いて薬Bにお茶を注ぐと・・・・なんと薬の色が黒く変わってしまいました!
実は薬Bは、貧血の薬、鉄剤です。
この変化はお茶の成分であるタンニンが、鉄剤との間で化学反応を起こしてしまったため。
こうなると、薬の効果は弱くなってしまいます。
薬とは色んな成分が入っているもの。
飲んだときにその成分に変化が起きないようにするには・・・?
「クスリはお茶ではなく、水かぬるま湯で飲んで下さい。こうすることが正しいクスリの飲み方になるのです。」
薄毛を気にする男性陣にとっては、よくぞ出てきてくれた!ミノキシジル!という気持ちですね。 |
クスリはちゃんと水で飲むように心がけなければいけませんね。 |