あせもの歴史


時は江戸時代。
あせもの薬について、当時の文献を紐解いてみましょう。

例えば、寺子屋で使われていた教科書「往来物」の中で、あせもに関する記述を探してみます。
女性の心得を記した往来物、「女用訓蒙図彙(ジョヨウキンモウズイ)」に、「あせものくすり」の文字がありました!!
「はまぐりがいをやきてうどんの粉とまぜて布につつみ、ふるいかけてよし」
つまり、はまぐりの殻を焼いたものをよく砕いて粉にして、うどん粉とまぜあわせて布につつみ、あせもにあてると良いということ。

またこちら、江戸時代の代表的な育児書である「小児必用養育草(ショウニヒツヨウソダテグサ)」。
ここには、「牡蠣の粉、あるいは葛の粉、または天花粉をすり、塗りたるがよし。かくのごとくすれば、夏はあせもを生ぜず」とあります。

さらに、「こどものあごの下、股の付け根、わきの下に塗るのがよい」などとかなり詳しく具体的に記されていました。

さらにもう1つ、あせも対策として庶民の間で親しまれていたのが・・・桃の葉を煎じていれた、「桃湯」なんです。
桃の葉に多く含まれている「タンニン」には消炎作用があり、夏の日焼けやあせもに効果を発揮したんですね。

江戸時代には、夏まっさかりの土用の日に「桃湯に入る」という習慣があったそうです。

明治時代の俳人、高浜虚子はあせもを作っているこどもを見てこんな句を詠んでいます。「なく声の 大いなるかな あせもの児」

「あせも」高温多湿の日本の夏にはつきもののあせもは、いわば日本の風物詩。
その治療法については、さまざまな方法が考えられてきたようです。

あせもの種類


なぜ、汗は出ないで皮膚の下に溜まってしまうのでしょう?
山王病院 皮膚科・佐藤佐由里先生

佐藤先生:「皮脂やホコリで汗の穴(汗腺)が詰まって、汗が外に排出されないと皮膚の下に汗が溜まってしまうのです。」

私達の皮膚には、200万個から300万個もの汗の出口、汗腺があります。

この汗腺に、身体から出た脂や埃などのゴミが溜まると汗腺がつまり、溜まった汗が皮膚の表面に盛り上がりを作ります。これが あせも。

あせもには、二つの種類、白いあせもと赤いあせもがあります。

皮膚の角質層の表面に、汗がたまっているだけなのが「白いあせも」。
「赤いあせも」は、汗が角質層の下のほうにたまるために炎症をおこして、赤くなっているのです。

角質層の下で炎症が起きてしまうのはなぜかというと・・・
角質層の下のほうに溜まった汗は、その下の生きた細胞を圧迫してダメージを与えます。
するとそこに炎症細胞がやってきます。
炎症細胞は、炎症を引き起こし、同時にかゆみを起こす物質を放出!
そのため赤いあせもはかゆみが出るのです。

子供にあせもができやすいのはなぜ?


小さな子供にできやすいあせも・・・
一体なぜ、大人より子どものほうがあせもになりやすいのでしょうか?

体にある汗腺の数は、生まれたときに決まって大人になってもずっと変わりません。

つまり小さな子供は汗腺が皮膚の表面に密集しているということ!
佐藤先生:「子供の場合は、新陳代謝が非常に高いので汗をよくかきます。それで、あせもができやすいのです。」

子供にあせもができたとき、特に気をつけなければいけないことがあります。
子供は、かゆいと我慢できなくて、むやみにかいてしまいがちです。
かゆいからといってかいていると・・・傷がついて細菌が感染。ただれて痛みが出ることになるのです。

あせもに似た病気


あせもに似た病気があります。

一つは、『汗疹性(かんしんせい)湿疹(しっしん)』。もう一つは、『汗疱(かんぽう)』という症状です。

首のしわなど、汗が溜まりやすくて皮膚が弱いところにできるのが『汗疹性湿疹』。

首のしわなどは角質層が薄いため、汗に含まれるアンモニアなどの成分が角質層の下にある生きている組織を刺激して炎症を引き起こすのです。
佐藤先生:「あせもと違って赤いポツポツや白いポツポツはありませんが、全体にザラザラして赤くなってかゆみが強い湿疹です。この場合は、治療が必要になります。」

汗疹性湿疹の治療には、まず炎症を抑える成分が入った軟膏を使います。
かゆみが強い場合にはステロイドの入った軟膏を使います。

もう一つ、あせもと似た病気が『汗疱』です。
「汗疱」は手の平や足の裏など、皮膚の角質が厚いところにできるのが特徴です。
この「汗疱」は、あせもと同じように汗腺の出口に汗が溜まる病気です。
脂やホコリなどではなく、何らかの原因で壊れた角質そのものが汗の出口をふさぐのです。
佐藤先生:「たくさんできるとそれが一つにまとまり、大きな水ぶくれになって破れると、今度はヒリヒリしたり、かゆみをともなってきます。また、手のひらや指の皮がむけて日常生活に支障をきたす場合があります。」
「汗疱」も薬で治療しなければなりません。
軽いときは、皮膚を柔らかくする尿素が入った軟膏を使います。
ただし、かゆみや痛みが強い場合はステロイドの入った軟膏を使って治療します。

放っておくと、ひどくなって痛みまで出てくる「汗疹性湿疹」と「汗疱」。
おかしいと感じたら、専門家に相談することが大切です。

あせもの薬と使い方


白いあせもと赤いあせもでは、使う薬が違います。

薬剤師・高橋洋一さん

高橋さん:「白いあせもの場合には炎症が起こっていないので、あせも用のローションを使うと良いでしょう。」
まだ炎症を起こしていないあせもは、皮膚を清潔にするスキンケア用のローションが最適。
皮膚の汚れを落とし、あせもを抑えます。

赤いあせもは皮膚が炎症を起こしていて、かゆくてたまりません。
これはもう薬の出番!
高橋さん:「赤いあせもの場合は、炎症やかゆみを抑える薬がありますので、塗り薬を使うと良いでしょう。」
まずは炎症をおさえ、かゆみを止める成分が入った軟膏を使います。
薬をつける場合は、あせもの部分をよく洗ってから塗ることが重要!

炎症やかゆみが強い場合はこちら!
高橋さん:「特にひどくなってきた場合には、ステロイドの入った薬を使うと良いでしょう。」
ステロイドが配合された軟膏は、炎症や痛み、かゆみに効果を発揮します。かゆみの原因である炎症細胞が集まるのを炎症とかゆみを抑えてくれるのです。

あせもの薬を選ぶとき、軟膏タイプとローションタイプのものがあります。
上手な使い分けがありますか?
高橋さん:「あせもの薬には、いろんなタイプがありますが、広い範囲に塗る場合は、ローションタイプのものをおすすめします。すぐ乾いてベタベタせず、服を着てもくっつかないのでローションタイプが良いでしょう。」
特に首の周りなど、汗をかきやすくべたべたする所にはローションタイプの薬がおすすめです。

そして、薬を塗るときは、こんなことに注意して下さい。
高橋さん:「入浴後など、汗を洗い流してから薬を塗りましょう。1日に2〜3回薬を塗り直す場合には、温かいタオルでふいた後に使うようにしましょう。」

また、小さな子供にあせもの薬を使う場合はこんなことに注意しましょう。
高橋さん:「かゆみが強くて掻き壊した場合は、傷としての手当て必要になる場合があります。かき壊した所からバイ菌が入って化膿している場合には、殺菌をする薬が必要になることもあります。」
もし化膿してしまったら、抗生物質が入った軟膏を使います。
とにかく傷を治すことが大切なのです。
パウダーを付ける場合には、一度手に付けて伸ばしてからマッサージするように付けるといいんですね。
あせもの中身が汗だったとは驚きですね!