レントゲン発見
1895年、ドイツの物理学者、ウィルヘルム・コンラッド・レントゲンは、大学の研究室にこもっていました。
当時の学者たちが注目していた最先端の研究は、電気を外に向かって放出する「放電」。
レントゲンも日夜、放電に関する研究を続けていたのです。
ある日、いつものように電灯を消した研究室で真空管を前に実験を行っていたレントゲン。
その時、真空管から今まで経験したことのない光が放出されたのです。
レントゲンの研究について詳しく書かれた書物によると・・・
その時、真空管から出た光に自分の手をかざしたレントゲン。
なんと、自分の手の骨が透けて見えたのです!!
これが、世紀の大発見、X線誕生の瞬間でした!
一体なぜこのような現象が起きるのだろう・・・?
レントゲンは、この未知の光をまだ何もわからないという意味をこめてX線と名付けました。
学者魂を揺さぶられた彼は、寝食を忘れ、このX線の研究に没頭します。
そして、この偉大な発見を伝えようと妻のアンナを実験室に呼び出したレントゲン。
そこで彼女の手を撮影してみると・・・
薬指に指輪をした彼女の手の骨がX線に見事に写し出されました。
これが、世界で初めてのレントゲン写真。
撮影してから、わずか6日後。
レントゲンはこの不思議なX線についての論文を一気に書きあげます。
1896年1月5日。ドイツの新聞に、X線発見の記事が掲載されました。
このニュースは、瞬く間に世界中に広がることになります!
何でも透けて見える不思議な光線・・・。
広告やマンガにもなるほどその反響はすさまじいものだったといいます。
物理学者レントゲンによる世紀の大発見、X線。
しかし、のちに「レントゲン」と呼ばれるこのX線が、医療の現場で使われるまでにはもう少し時間が必要でした。
レントゲンの医療への応用
生きたまま、人間の身体の中を写すことができるX線。
これを医学に応用することができれば素晴らしい威力を発揮するに違いない。
レントゲンがX線を発見した直後、「医学におけるX線の利用」というテーマの論文が世界中で書かれました。その数はなんと1000点にものぼり、およそ50冊の本が発表されたといいます。
そして、世界中の医師たちが、様々な組織を映像化しようとX線を用い始めました。
当時は、撮影より透視の方が簡単に行えたことからX線を通してその場で見る方法が先に普及したのです。
肺の疾患や、乳がんの進行をX線を使って見ていたと考えられています。
そして、レントゲンの発表からわずか1年後の1897年。
医学界でついに、全身のX線写真の撮影に成功します。この成功は、世界中に衝撃を与えました。
しかし、実はこれを撮影するのに、当時は30分もの時間がかかっていました。このX線の照射時間が問題になるのです。
X線照射による、相次ぐ皮膚障害の被害も数多く報告されてきました。
さらに当時は、各地で戦争が勃発。
弾丸を受けた兵士たちを助けるためにもX線を使ってすばやく対応する必要に迫られてきました。
数秒単位で撮影できる装置の開発。この命題にとり組んだ結果、ついに成功!
X線は、医療の現場で広く使われるようになったのです。
レントゲンの世紀の大発見から100年あまりで、飛躍的な進歩を遂げたX線撮影。
現代の医療の現場でもなお、なくてはならない存在となっています。
医師はどうやってレントゲン写真を読み取っている?
私達がレントゲン写真を撮る時、息を止めて下さいと言われますよね。
肺は息をする度に、膨らんだり縮んだりします。
息を止めて撮るのは、写真がぶれないようにするためなのです。
水谷内科呼吸器科クリニック院長・水谷清二先生
水谷先生:「呼吸器の場合、レントゲンが白く写る病気と、例えば肺気腫のように黒く写る病気があります。」
例えば肺に炎症があると、その場所は白くなります。
そして、肺気腫など肺の組織がつぶれて空気が溜まった所はレントゲンの光が通過してしまうため黒く写るのです。
とはいえ、私達にはほとんど違いが分からないレントゲン写真。先生は一体どこを御覧になっているのですか?
水谷先生:「レントゲンに写る肺の中の血管の走り方が正常か異常かなど、肺の正常な構造をまず頭の中に入れておいて、その血管が写っていなかったり、気管支が正常な位置にないようなら病気を疑います。」
例えば、肺の中に空気が入らなくなった無気肺という病気の場合、正常ならレントゲン写真の肺の後ろに見えるはずの大動脈が途中で見えなくなっていることから、医師はそこに異常があることを考えるのです。
そして、肺に穴が開いて空気が漏れてしまう気胸の場合、漏れた空気が漏れた部分に溜まってしまうのです。
そして、肺に穴が開いて空気が漏れてしまう気胸の場合、漏れた空気が漏れた部分に溜まってしまうのです。
水谷先生:「写真1枚撮ることによって、非常に多くの情報を得ることができますので、X線診断装置は呼吸器の医者にとって、とても重要なものです。」
レントゲン1枚が雄弁に語ってくれる呼吸器の病気。早期発見の手がかりとなるのは、やはりこのレントゲン写真なのです。
二重造影法とは?
二重造影法というのは、まず胃の中に空気を入れて胃を膨らませておいてから、バリウムを流し込んで撮影する検査方法です。
荻窪胃腸クリニック・森治樹先生
森先生:「空気が入って胃が膨らみ、バリウムが動きやすい状態になるので、胃粘膜のヒダの奥にもバリウムが入り、より鮮明な写真が撮れるのです。」
空気で膨らませた胃にバリウムを流せば、バリウムが粘膜のヒダまでまとわり付いて細かい所も写し出してくれます。
バリウムだけで撮影すると、胃の形は分かりますが、胃粘膜のヒダまではよく分からないのです。
レントゲンは撮影する技術と共に、それを見極める医師の目が大切。
森先生:「医師として一人前になるまではそんなに簡単には分からないのです。ですから、私共も消化器のグループで、週に1回は皆が撮ったレントゲン写真を全員で検討しました。潰瘍だと思っていても潰瘍ではなかったり、ポリープだと思っても粘膜のヒダだったり、独断的に診断をしないように全員で検討会を行って勉強しました。」
レントゲンでの検査が始まって以来、胃がんで命を落とす人の数が減少しました。レントゲンによる早期発見の賜です。
もちろん、今では内視鏡検査も盛んに行われ、胃粘膜も直接カメラでのぞけるようにもなりました。
もちろん、今では内視鏡検査も盛んに行われ、胃粘膜も直接カメラでのぞけるようにもなりました。
森先生:「レントゲン写真は非常に有効で、レントゲン写真なくしては診断できない病気はたくさんあります。」
X線カメラによる胃の中をバリウムが流れていく様子を見ると、内視鏡では分からない、食道や胃の動いている様子が確認できるのです。
もし、バリウムが途中で流れなくなったら、その部分は何らかの理由で癒着を起こしていると判断されます。
医師達のレントゲン写真を読み取る絶え間ない努力があるからこそ、病気の早期発見ができるのです。
もし、バリウムが途中で流れなくなったら、その部分は何らかの理由で癒着を起こしていると判断されます。
レントゲン検査について素朴な疑問
Q:レントゲン検査の前に食べ物を食べてはいけないのですか?
A:食べ物を食べていないほうが、鮮明に胃のレントゲン写真を撮れるのです。
Q:レントゲン撮影は身体に悪影響を与えないのですか?
A:現在のレントゲン撮影は、写真で撮影できる最小量のX線を照射しています。一瞬の照射なので身体に害はほとんどありません。ただし、妊娠中の方は控えましょう。
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