アレルギーとは? IgE抗体の発見 アレルギー反応によって起こる症状 アナフィラキシー・ショック
最近増えているアレルギー 化学物質過敏症の症状 化学物質から身を守る工夫 アレルギーのクスリ 理恵&哲也の一言
アレルギーとは?
“アレルギー”、一体その正体とは?
アレルギーとはギリシャ語のアロス 「異なる」と、エルゴン 「作用」が組み合わさって出来た言葉。
アレルギーの一つ、花粉症。
これは花粉という異物が体内に入った時に、炎症などの反応が起こること。
しかし、人によって花粉症を起こしたり、起こさなかったりするのはどうしてでしょう?
同愛記念病院・鈴木直仁先生
鈴木先生:「その背景に免疫力の異常があるということが考えられます。」
免疫は、体内に侵入した細菌やウィルスなどを退治する大切なシステム。
この免疫機能が何かのキッカケで暴走し、悪影響を及ぼす。それがアレルギーなのです!
この免疫機能が何かのキッカケで暴走し、悪影響を及ぼす。それがアレルギーなのです!
では、アレルギーを引き起こす物質とは?
人によって原因となる物質は様々。
例えば、食べ物では卵・牛乳・肉類・魚介類・穀物類と、その数は数え切れないほどあります。
植物では、お馴染みの杉花粉、漆、なんと稲なども。
銀やプラチナなどの金属も、アレルギーの原因に!
環境面では、家のハウスダストやダニ、そして建材に使われている化学物質はもちろん、車の排気ガスなども、原因物質となります。
鈴木先生:「アレルギーを起こす可能性のある物質は数千以上あるといわれています。その全てを検査して調べることができないのが現状です。もしかするとアレルギーを起こす可能性のある物質はそれ以上あるかもしません。」
アレルギーは増加の一途をたどっています!
でも何故なのですか?
鈴木先生:「感染症に対する抵抗力が強い方は、アレルギーにもなりにくいのですが、逆にアレルギー体質の方はバイ菌に弱い傾向があります。世の中が非常に清潔になったために、感染症に対する抵抗力が失われてきました。その逆でシーソーの反対側が上がるようにアレルギー体質が強く現れているといわれています。」
IgE抗体の発見
1966年、医学界で非常に画期的な発見がなされました。
それは、日本の医学者・石坂公成夫妻による「IgE抗体」の発見です。
「IgE抗体」とは、アレルギー症状を引き起こす物質。
体内の肥満細胞という細胞と結び付き、アレルギーの元となる物質・アレルゲンと反応してアレルギー症状が起こります。
そのため、「IgE抗体」は花粉症やぜんそくなどのアレルギー疾患の原因になっています。
「IgE抗体」が発見される以前は、花粉症などを起こす人がアレルゲンと反応してアレルギーを起こす何らかの物質を持っていることは分かっていましたが、その正体はわかっていませんでした。
当時はその正体不明の物質を反応物質という意味の「レアギン」と呼んでいました。
1963年、石坂夫妻はアメリカに渡り、コロラド州にある小児喘息の研究所でレアギンの研究を開始します。
石坂は、アレルギー患者の血清を薄めて自分の皮膚に注射し、翌日その場所にアレルゲンを注射する実験を行ないました。
すると局所にアレルギー反応が起こり、レアギンの存在を確認したのです。
しかしレアギンが属するたんぱく質は患者の血清・1cc中にわずか1マイクログラムしかありませんでした。
当時の技術では、この余りにも微量なレアギンを取り出して調べることはできません。
そこで石坂はまったく新しい方法を考えついたのです。
それはまず人間のレアギンと反応するウサギの抗体を作る。
そしてその抗体と反応する人間のたんぱく質を取り出すことなく試験管内で分析するという方法です。
しかし本当にウサギの血清の中に抗体が作られたかどうかを確かめるには、人間の血清を加え、それを人の皮膚に注射してレアギンがなくなっていることを調べるしかありませんでした。
人体にわずかながらもウサギの血清を注射することになる・・・、石坂は自分の背中を使うしかなかったのです。
この研究の結果、石坂は人間のレアギンがアレルゲンに反する抗体の一種であることを証明し、この抗体が従来わかっていたものとは全く違う構造を持っていることを発見したのです。
石坂はこの抗体をアレルギー反応で体が赤く腫れ上がる事から、「赤いまだら」を意味する英語「Erythema(エリテーマ)」の頭文字「E」をとり、「IgE抗体」と名づけます。
医学の歴史に残る発見を成し遂げた石坂公成。
1974年、彼はその功績を称えられ「文化勲章」を受賞!
現代アレルギー学において、大きな貢献を果たしたのです。
アレルギー反応によって起こる症状
身体の中で起こったアレルギー反応が引き起こす主な症状です。
じんましんやかゆみ、湿疹などは皮膚に起こる炎症反応です。
IgE抗体が必要以上に強い反応を起こして、皮膚に炎症を起こす物質(ヒスタミンなど)がたくさん作られることによって起こります。
IgE抗体が必要以上に強い反応を起こして、皮膚に炎症を起こす物質(ヒスタミンなど)がたくさん作られることによって起こります。
アナフィラキシー・ショック
アレルギーは場合によっては、命の危険につながることもあります。
それが「アナフィラキシー・ショック」といわれるものです。
アナフィラキーショックは、どんな症状を起こすのでしょう?
鈴木先生「アレルギー源に接触してから、秒単位で身体に変調が起こります。じんましんや身体中が赤く腫れたり、くしゃみ、鼻水が出たり、呼吸困難になってしまいます。これが重症になると、血圧が下がり意識が低下して、失神が起こります。最悪の場合、呼吸が停止してしまいます。」
アナフィラキシーショックの原因!
中でも多いのが蜂の毒!
日本でも毎年、蜂に刺され亡くなる方がいますが、実は蜂の毒による過剰なアレルギー反応が原因だったのです。
最近増えているアレルギー
現在、こんなアレルギーが増えています!
鈴木先生:「リンゴはバラ科の植物なのですが、バラ科の植物を食べると、唇の周りが急激に腫れたり、口の中がかゆくなったり、場合によっては喉が苦しくなって息ができなくなったりします。
口の周りを中心としたアレルギー反応が出ることを、口腔アレルギー症候群といいます。」
リンゴを食べた後、口の中の粘膜や口の周りが真っ赤に腫れ上がり、発疹も出来る。
それが、「口腔アレルギー症候群」!
欧米では、実に人口の30%がこのアレルギーの経験者。そして現在、日本でも徐々に増えつつあります。
しかも進行すると、食生活にも多大な悪影響が及ぶ事になります。
鈴木先生:「だんだん食べられない果物が増えてくるのです。果物だけならまだいいのですが、そのうちだんだん野菜類も食べられなくなる」
セロリ、人参をはじめ、果物や野菜の大半が食べられなくなってしまう!
本当に厄介な病気です。
化学物質過敏症の症状
現在、化学物質過敏症というアレルギーに似た病気が増えています。
化学物質過敏症は、家の中の建材や接着剤など家の中にある化学物質が原因で、多くの症状が出るのです。
化学物質過敏症の特徴は、同じ物が原因でも違う症状が起こることです。
例えば、ある人には皮膚のかゆみ、別の人では関節の痛みが起こります。
化学物質の影響から自律神経を守るために身体が過剰に反応することが原因といわれています。
例えば、ある人には皮膚のかゆみ、別の人では関節の痛みが起こります。
化学物質の影響から自律神経を守るために身体が過剰に反応することが原因といわれています。
どうしてこれほど複雑な症状を引き起こすのでしょう?
家の中には化学物質の数が、なんと2800万種類もあるのです!
テーブルなど家具の板に使われている塗料や接着剤、殺虫剤や防腐剤、カビ取りや合成洗剤など挙げればキリがないほどたくさんあります。
化学物質過敏症は、こうした化学物質に長時間接触し続けることによって身体が過敏に反応するようになり、以後はほんのわずかな量の化学物質に対してアレルギーのような症状を起こすようになってしまうのです。
化学物質から身を守る工夫
化学物質から身を守るために工夫できることはたくさんあります。
◇観葉植物を置く
観葉植物には、汚染物質を吸着する作用があります。アメリカ、NASAのデータによると、6畳の部屋に観葉植物2鉢を1日置くだけで室内の有害物質が70%減ったという報告があります。
◇こまめに換気する
12畳の部屋を20分換気しただけで、1日分の有害物質が0になるのです。特に、新築の家に引っ越す場合は換気を十分にしましょう。
◇買ったばかりの服は、必ず洗濯してから着る。 また、ドライクリーニングから返ってきた洋服は、一度陰干ししてから着ましょう。繊維類は、化学物質を吸着する性質があるからです。
アレルギーのクスリ
青魚などを食べて起きるじんましん。
日光アレルギーによる皮膚炎などの治療には、どんな薬がよく使われるのでしょう?
北里大学 望月眞弓先生
望月先生:「一番始めに選ばれるのが抗ヒスタミン薬や抗アレルギー薬です。それを使って治まるような症状ではなく、非常に重症な場合はステロイド剤を使うこともあります。」
じんましんなど皮膚に現れる症状にまず使われる薬が抗ヒスタミン薬。
アレルギー反応が起きると、皮膚の下にある肥満細胞からヒスタミンという物質が分泌され、血管を収縮させます。
アレルギー反応が起きると、皮膚の下にある肥満細胞からヒスタミンという物質が分泌され、血管を収縮させます。
同時に血管から血しょう成分が外に出て、それが皮膚に赤い盛り上がりを作ることとなります。
これが、じんましんです。
抗ヒスタミン薬は、このヒスタミンの分泌を妨げ、じんましんを抑えるのです。
肌に様々な症状の現れるアレルギー反応。
その治療によく使われるもう一つの薬がステロイド剤です。
ステロイド剤は、腎臓の上部にある副腎皮質から分泌されるホルモンと同じ成分を使用した薬です。
ステロイド剤には、炎症を鎮め、免疫を抑制する二つの作用があります。
望月先生:「身体全体に湿疹が出てしまった場合は、軟膏やクリームでは治療できないので、飲み薬を使います。自分自身で判断せず、医師に判断してもらいましょう。」
これら、ステロイド剤の軟膏は薬局でも買える薬ですが、使う際など何か注意をする点はないのでしょうか?
望月先生:「病院で処方される薬に比べると、市販のステロイド剤は安全性を考えて作られています。市販のものが弱いステロイドとはいっても、やはりステロイドですから使い方には気をつけなければなりません。薬剤師さんに相談をして的確なアドバイスをもらいましょう。」
バイ菌から遠ざけようと清潔にしすぎるとかえってアレルギーにつながってしまうこともあるんですね。清潔にすることを意識しすぎず、ほどほどがいいのですね。 |
新しい洋服を着る機会が多いのですが、着る前に一度洗濯しようと思いました。陰干しも大切ですね。 |