『LASER』とは?


『LASER(レーザー)』とは、
“Light Amplification by Stimulated Emission of Radiation”の頭文字を合わせて作られた言葉です。

「光反射の強制誘導放出による光の増幅」
という意味です。

レーザーの原点


レーザーは、医療の世界でも、もはや欠かせない存在になりつつあります。
しかし、私たちが今のようにレーザーの恩恵を受けられるようになるには長い時間が必要だったのです。

20世紀を代表する天才科学者アインシュタイン。
彼は、「物質を作っている原子は、ある状態になると光を出すのではないか」と考えました。これが、レーザーの原点。
しかし、ある状態とはどんな状態なのか確かめるまでは至りませんでした。それが、1920年頃のこと。

それからおよそ40年の時を経た1960年7月7日。
アメリカの物理学者、メイマンが、世界で初めてレーザー光線を作ることに成功しました。
世界で初めてレーザーの光を出した装置には、中央に人工ルビーの棒があります。そのルビーの棒を、らせん状にフラッシュ・ランプが取り囲んでいます。フラッシュ・ランプは、ぱっときらめくような瞬間的な光、閃光を出します。その閃光でエネルギーをもらったルビーの原子は、光の小さな粒を放出。その粒が、ルビーの棒の両側につけられた鏡に反射して管の中を行ったり来たりして増幅していきます。そしてレーザー光線となって、一方の端から飛び出していくのです。

レーザーの光は、太陽光など自然の光とは全く違う性質を持っています。プリズムを使えば、それを簡単に確かめることができます。自然の光はプリズムを通ると広がって、7色の光に分かれます。同じプリズムにレーザーの光を当ててみると、広らず、まっすぐに突き抜けています。

自然光と、レーザー光。この違いはなぜ起きるのでしょう?
自然の光は、いろいろな方向に向かって進む様々な光でできています。

しかし、レーザーは一つの方向だけに進む、一種類の光だけでできているので、どこまでもまっすぐに進んでいけるのです。

どこまでもまっすぐにいくというこの性質によって、レーザーには、自然光にはない、大きな力が備わることになりました。それは、数万度というとてつもない高い温度の熱を作り出すことができるということです。熱は、レンズで焦点を合わせて光を集めることによって作られます。まっすぐに進むレーザーの光は、レンズを使って焦点を合わせやすいため、簡単に高い温度の熱を作ることができるのです。
まっすぐに進む、そして、高熱を発するというレーザーの性質が医療の現場で幅広く応用されることになるのです。

レーザーはいつどのようにして医療に使われるようになった?


世界で初めてレーザーを医療に応用しようと考えたのは、アメリカ、シンシナティ大学皮膚科の教授、レオン・ゴールドマン。
1960年、皮膚のあざを、レーザーで治療できないかと研究施設を作ったのです。

しかし、研究のためとはいえ、まだ得体の知れない光を他人の皮膚に当てるわけにはいきません。
そこで、ゴールドマン教授は自分の腕に、あざと同じ色素を塗り、何百回となくレーザーを当て治療効果を確かめたのです。

そして、3年後の1963年、『レーザーを使うと、皮膚に塗った色素を取り除くことができる』という論文を発表。
その後、レーザーは皮膚の赤いアザを取り除く治療に応用されることになりました。

そして、さらに20年後の1983年、アメリカ、ハーバード大学の二人の教授がレーザーの使い方を大きく進歩させました。
彼らが注目したのは、皮膚にレーザーを当てる時間。それまでのレーザー治療では、アザのある部分にレーザーを当て続けていました。

すると、レーザーの影響がアザの周りの皮膚にまで広がり、正常な組織がダメージを受けることがあったのです。

アンダーソンとパリッシュ、二人の教授はレーザーを当てる時間を短くしてはどうかと考えました。

その時間はわずか16分の1秒!!

研究の結果、この一瞬だけレーザーを当てると、正常な皮膚にはダメージを与えず、アザのある部分だけに効果が出ることを発見したのです。
彼らの発見をきっかけに、レーザー治療が本格的に、医療の現場で使われるようになりました。

皮膚科ではどんな時にレーザーを使う?


順天堂大学 皮膚科・須賀康先生

Q:皮膚科ではどんな時にレーザーを使う?
須賀先生:「イボ・ホクロ・良性腫瘍を治療するのに使います。例えば、イボを治療する場合、レーザーはイボの中の水分と反応して熱が出ます。その熱によってイボの組織を破壊して、イボを治療することができます。」

イボの治療に使われているのは、炭酸ガスーレーザー。イボ全体を熱し、回りの皮膚を傷つけないように、外側から中心に向かってレーザーを当てます。

須賀先生:「手術した時よりも跡が残りにくいという利点があります。」

レーザーは、あざの治療にも使われます。あざの治療には、主にルビーレーザーが使われます。
須賀先生:「例えば、あざの治療では、ルビーレーザーはあざの中の色素に反応して熱を発します。その熱を使って、あざの組織を破壊し治療することができるのです。」

手術でしか治せなかった皮膚の病気。それが、レーザーの登場により、飛躍的に負担の少ない治療に進歩したのです!

須賀先生:「イボの治療と同様に、以前の治療よりも傷跡が最小限に抑えられるようになりました。」

眼科ではどんな病気にレーザーを使う?


新宿プラザ30階クリニック院長・高橋義徳先生
Q:眼科ではどんな病気にレーザーを使う?
高橋先生:「糖尿病性網膜症が一番多いです。糖尿病の患者さんが非常に多く、糖尿病性網膜症は、糖尿病の三大合併症の一つなのです。これに最も有効な治療が、レーザー治療です。」

正常な網膜が糖尿病性網膜症にかかると、網膜の血管がボロボロになって、出血を起してしまいます。さらにひどくなると、血液が白くかたまり、視力が低下。失明の危機にもみまわれます。糖尿病性網膜症の治療には、アルゴンレーザーが使われます。レーザーを使って、出血を起している血管や、血液の塊だけに熱を加えて取り除くのです。

高橋先生:「レーザー治療が始まる前の治療ではほとんど有効性がありませんでしたが、レーザーを使った治療によって画期的に改善できるようになりました。レーザー抜きに糖尿病性網膜症の治療は語れない程、治療効果を発揮しています。」


眼科におけるレーザー治療は、後発白内障という病気にも大きな効果を発揮しています。
後発白内障は、白内障の手術を受けた人のうち、およそ3割が発症するといいます。
一体、どういう病気かというと…?
まず、白内障の手術では、水晶体の白く濁っている部分を取り除き、そこに新たにレンズを入れますが、この手術の後で、残った水晶体が再び濁ってまた白内障が起こってしまう。これが後発白内障です。治療では、YAG(ヤグ)レーザーを使い、水晶体の濁った部分だけに熱を加えて壊していきます。

高橋先生:「時間も費用も手術程かからないのが、大きなメリットです。また、患者さんの苦痛も非常に少なくて済みます。」
レーザー光線というといわゆる特撮物のイメージが強かったのですが、とても身近な所であんなにも幅広く使われているのには驚きました。
想像していた以上にいろんな所でレーザーは使われていましたね。最近、私の知り合いでレーザーでシミを取った人もいます。もっと身近に美容で使われることが増えていくのではないかなと思いました。