ドキュメンタリー「通信簿の少女を探して」文化庁芸術祭テレビ・ドキュメンタリー部門優秀賞受賞
2022.12.26(月)
2022年12月26日(月)「令和4年度(第77回)文化庁芸術祭」において、BS-TBS2022年8月14日に放送したドキュメンタリー「通信簿の少女を探して~小さな引き揚げ者 戦後77年あなたは今~」が、テレビ・ドキュメンタリー部門で優秀賞を受賞したことが発表された。
「文化庁芸術祭」は、広く一般に優れた芸術作品を鑑賞する機会を提供するとともに、芸術の創造と発展を図り、日本の文化の向上と振興に資するため、昭和21年から芸術祭を毎年実施している祭典。
今回、テレビ・ドキュメンタリー部門で優秀賞を受賞した本番組は、ディレクターがたまたま古書に挟まっていた一枚の通信簿に出会った事が発端。それは昭和23年、別府市の小学6年生の少女のものであり、内容はとても興味深いものだった。通信簿の持ち主の少女を探す旅が始まる。それは歴史に埋もれた日本の戦後史をひも解く旅の始まりでもあった...。
番組では山田洋次監督、歌手の加藤登紀子さん、ジャズピアニスト秋吉敏子さんらへの「引き揚げ」体験のインタビューも敢行している。出演は三浦透子、仲村トオルがナレーションを担当。もう一つの日本の戦後史を浮き彫りにするドキュメンタリー番組。
なお、BS‐TBSでは、今回の受賞を記念して同番組を2月18日(土)午後1時~再放送することが決定している。
■プロデューサー 初瀬川啓太(BS‐TBSコンテンツ編成局編成制作センター編成部)コメント
私の父も大陸からの引き揚げ者でした。生前、その詳細を聞くことはありませんでしたが、もしかしたら、この"通信簿の少女"のように壮絶な思いをして日本に戻り、戦後を送ったのかもしれません。たった一枚の通信簿から導き出された女性の人生は、私たちの身の周りにまだまだ語られずにいる物語があることを教えてくれました。
制作のなか、あまりにも手がかりが掴めず、放送が危ぶまれる時期もありましたが、先の見えない取材を粘り強く、そして丁寧に交渉を続けた匂坂ディレクターの強い想いが、この作品を結実させました。
ご協力いただきました、通信簿の少女、ご家族、皆様に心より感謝申し上げます。
■企画・演出 匂坂緑里(TBSスパークル)コメント
ゴールの見えない旅でした。けれど何かに導かれた6年でした。
しかし、雲をつかむような"通信簿の少女"探しの旅は、ひとたび動き始めると多くの方々が伴走を始めました。別府の地方新聞社、高齢者の集う喫茶店、毎日共同温泉にやってくる地元の方々...同じ湯舟につかり話をすると、みな身を乗り出して捜索隊となってくれるのです。なぜでしょう?気づくと少女を追っていたのは、私だけではなくなっていました。
やがて、少女探しの旅は思いがけない展開と結末をみます。図らずも浮かび上がった「引き揚げ」という重い歴史。一人の少女が見せてくれたのは、日本の、市民の、もう一つの戦中戦後史でした。この旅が終わった今、通信簿の少女がディレクターである私に問いかけている使命とは何だろう?と考えています。
通信簿の少女に、そのご家族に、そして別府の方々に、ご協力くださったすべての皆様に感謝申し上げます。
■受賞作品 番組概要
「通信簿の少女を探して~小さな引き揚げ者 戦後77年あなたは今~」
初回放送:2022年8月14日(日)よる9:00~10:54【審査対象放送日2022年11月27日(日)】
受賞記念再放送:2023年2月18日(土)午後1時~2時54分
旅人:三浦透子(俳優・歌手)
ナレーション:仲村トオル
VTR出演:山田洋次(映画監督)、加藤登紀子(歌手)、秋吉敏子(ジャズピアニスト)
<スタッフ>
制作プロデューサー:初瀬川啓太(BS-TBS)
プロデューサー:尾賀達朗(TBSスパークル)
企画・演出: 匂坂緑里(TBSスパークル)
制作:BS-TBS TBSスパークル
番組ホームページ https://bs.tbs.co.jp/news/tsushinbonosyojo/
【番組内容】
画家ゴーギャンの古書に1枚の色褪せた通信簿が挟まっていた。それは、昭和23年、別府市の小学6年生の少女のものだった。番組は通信簿を少女に返さねばという思いに駆られ、少女探しの旅に出る。歴史に埋もれた日本の戦後史をひも解く旅の始まりだった...。
「少女」探しの旅から見えてきたのは、日本の歴史の中で置き去りになった「地方」「市民」そして「女性」の戦中・戦後史。今回の舞台となる大分県、別府もまた同じだった。戦後史を語る時に出てこない「地方」、そして多くの日本人が移り住んだ満州や大陸が、戦争を語り始めた。
戦後人口密度日本一を誇った温泉都市・別府が担った、戦中・戦後の驚くべき役割とは?引き揚げ者はどのように日本へ戻り、戦後どのように生きてきたのか?
そして、別府に「引き揚げ」てきた通信簿の少女は今...。存命ならばこの77年間、どのような道を歩んできたのか...
番組では山田洋次監督、加藤登紀子さん、ジャズピアニスト秋吉敏子さんに「引き揚げ」体験のインタビューも敢行。戦争を知らない若者の声の代弁者として、旅人に三浦透子さん。これまでにない、もう一つの日本の戦後史が浮き彫りになる。