「地球絶景紀行」世界にたった1つの絶景を探す、大人の紀行ドキュメンタリー

毎週水曜日よる9時オンエア

地球は絶景の美術館。世界にたった1つの絶景旅行ガイドをあなたに。2泊3日で行く、夢の旅にご案内いたします。(旅人:森高千里)

#132 神々の花園ナマクワランド(南アフリカ) 2012/11/16 O.A.

「不思議の山」に見守られた港町ケープタウン

アフリカ大陸の南端に位置し、大航海時代にヨーロッパとアジアを結ぶ航路の要衝として生まれた港町ケープタウン。ここから南アフリカの旅をはじめます。 訪れる人々の目にまず飛び込んでくるのは、テーブルマウンテンの雄姿です。標高は1,085メートル、その名が表すとおり、上部がすぱっと平らに切り取られてテーブルのように見える不思議な形をしています。真っ平らな山の上には、ケーブルカーで登ることができます。そこには、ゴツゴツした岩が転がっていて、地球外の惑星にたどり着いたような錯覚に陥る一方、岩の隙間から灌木やプロテア科の花々はじめ、数多くの固有の植物が自生しており、豊かな自然の営みを感じることができる場所でもありました。もちろん、ケープタウン市街や青い大西洋を見渡す眺望も素晴らしかったです。 ケープタウンの街を歩くと、その歴史を背景にした多様性に驚かされます。黒人の人々よりもカラードと呼ばれる混血の人々が圧倒的に多く、さらに、インド系の人々、マレー半島から移住してきたイスラム系の人々も多く暮らしているようでした。 それでも、テーブルマウンテンの事を訪ねると、誰もがみな誇らしげに、街のシンボルを自慢します。そして、テーブルの部分に白く薄い雲がかかると「テーブルクロス」と言うとか、昔、悪魔とタバコを吸う競争をした人がいて、その場所からテーブルマウンテンには雲がかかるようになったというお話を聞かせてくれました。

ケープ半島〜動物の楽園と荒々しくも美しい喜望峰

ケープタウンの南、歴史にその名を残す喜望峰を目指し、ケープ半島へドライブに出かけました。そのほとんどが国立公園、あるいは自然保護区に指定されていて、様々な動物たちと出会うことが出来る場所でした。 まずはハウトベイという小さな漁港から、これも小さな観光船に乗って、荒々しい大西洋の沖合へ。ひっくり返ってしまうのではないかとドキドキしながら進むと、やがて、何千頭ものオットセイが暮らす小さな島に着きました。豊かな漁場は、オットセイにとっても楽園なんですね。子どものオットセイがじゃれ合いながら、海の中に入ったり出たりを繰り返している姿が、何とも可愛らしかったです。 続いては、アフリカン・ペンギン(ケープ・ペンギン)が暮らすボルダーズ・ビーチへ。体長は大人でも60センチほど、とても人懐っこいペンギンたちを間近に見ることがきます。遠足で来ていた地元の幼稚園児たちも大興奮!子育て中のお母さんペンギンの様子や、海で遊ぶ子どもペンギンたちを眺めていました。 そしていよいよ、喜望峰へ!そこから見る美しい水平線、迫力ある断崖の大パノラマに心打たれました。しかし、大航海時代に命名された、そのロマンチックな名前とは裏腹に、喜望峰周辺は、荒々しい大西洋の波が打ち寄せる海の難所でした。かつては「嵐の岬」とも呼ばれていたそうです。目の前に広がる海で、いくつもの船が難破し、多くの人々が命を落としたと思うと、ちょっと足がすくみました。 ところで、喜望峰はアフリカ大陸最南端だと思っていた人、いませんか?実は、喜望峰の南東150キロのところにある「ケープアグラス」が大陸最南端なんです。知ってました?

神様がつくった「花の絨毯」ナマクワランド

ケープタウンから北へ300キロのドライブ。たどり着いたのは野生の花々が咲き乱れる美しい場所でした。ナマクワランドと呼ばれるこの土地は、1年のほとんどが乾いた半砂漠だといいます。それが、7月から9月、春の(南半球では季節が日本と逆になります)雨に潤された直後、長くて5週間、奇跡が起きたかのように美しい姿に変身するんだそうです。 ガイドしてくれたムスティさんは、この土地で生まれ育ち、銀行員になったものの、突如ヒッピー生活に入り、この奇跡の花園が現れる場所で自然と共に暮らし始めたそうです。写真を撮り、絵を描き、詩を読む。そんなムスティさんは、どこに行っても、誰からも声をかけられます。携帯電話も鳴りっぱなし。愛する自然と友たちがいる故郷…しかし、ムスティさんにとって、この土地は、それ以上に特別な場所でした。 ムスティさんが、ある場所に案内してくれました。小さな花が咲き乱れる、広大な土地にぽつんと佇む小さな石碑。それは数年前に亡くなった、ムスティさんの奥様のお墓でした。ムスティさんはこんなお話をしてくれました。「お墓参りに行くと、花を手向けるのが普通でしょ?でも僕にはそんな必要がない。春になれば、こんなにも美しい花々が咲き乱れるのだから。この場所に眠ることは、妻が望んだことで、僕もそうさせてあげたいと思ったんだ」。 むかし、神様がたくさんの花の種が入った袋を抱えて、どこかに花園を作るのに良い場所はないか探し回っていました。ところが、花の種の入った袋には穴が開いていて、種はすべてナマクワランドに落ちてしまいましたーー。地元の人々が語り継いでいるお話です。偶然生まれたと伝わる「神々の花園」。荒野に起こる春の奇跡は、目に、そして心に染みいりました。