週刊報道LIFE

乙武洋匡(作家)

息子たちへ。早いもので、君たちが生まれてずいぶん月日が経ちました。長男である君は7歳、小学校2年生になりましたね。次男である君は5歳、幼稚園の年中さんになりました。それぞれ、学校や幼稚園で楽しく学び、遊んでいる様子、お父さんはうれしく、そして頼もしく思っています。

今年の3月には、妹が誕生しました。わが家に生まれた、初めての女の子。2人ともよく面倒を見てくれているので、とても助かっています。兄妹3人、このまま仲良く育ってくれれば、こんなにうれしいことはありません。


そんな君たちも、時にはケンカをします。お父さんは、べつにかまわないと思っています。どうしても見たいテレビ番組があったり、誰かが遊んでいるおもちゃを使いたくなったり、むしゃくしゃしている八つ当たりで、ついつい意地悪をしてしまったり。

人間だから、感情がある。欲求がある。その感情や欲求がぶつかり合った時に、ケンカは起こる。だから、お父さんは君たちがケンカをすることを叱ったりしないし、これからも叱るつもりはありません。

ただ、ひとつ。ケンカにはルールがあります。お父さんがどんな時に君たちを叱るか、よくわかっているよね。自分の感情や欲求を押し通すために、暴力に訴えること。これだけは絶対にやってはいけません。「力が強いほうが勝つ」という考え方は、必ず戦争へとつながっていくからです。


君たちには、考える頭があります。その考えを伝える言葉があります。だから、いま目の前にあるぶつかり合いを、暴力ではなく、話し合いによって解決することができるのです。場合によっては、ふたりの思いが完全に満たされる解決策は見つからないかもしれません。きっと、そういう場面のほうが多いことでしょう。ならば、おたがいが少しずつ我慢したり、譲り合ったりするしかない。それぞれ、何を我慢できるのか、どこまで譲れるのか。それをとことん話し合ってほしいのです。

難しいことです。面倒くさいことです。とくに力の強いほうにとっては、暴力に頼ってしまえば自分の思い通りにできてしまうのに、わざわざ話し合いで解決しなければならないというのは、とてもまどろっこしく感じることでしょう。それなのに、なぜ話し合わなければならないのか。なぜ、お父さんはそこにこだわるのか。

答えは、言いません。ぜひ、自分たちで考えてみてください。もう少し大きくなったら、歴史を学んでみてください。君たちなら、すぐにその答えを見つけられるはずです。そして、暴力にたやすく頼ろうとする人間が、いかに愚かであるかに気づくはずです。


長くなったけれど、今日お父さんが伝えたいのは、ここまで。先月の北海道旅行の写真、整理しておくね。