日本海から吹きつける季節風が創り上げた日本最大級の鳥取砂丘。
目に見えぬ風の姿がさざ波模様の風紋に映し出され、海岸を進むと風が起こす荒波に削り出された奇岩が連なる。鳥取砂丘の砂を生み出す中国山地へと急流を辿ると、風がもたらす豪雪に育まれた杉林を背に豪邸が佇む。さらに源流へと分け入ると岩窟の中に古堂が姿を現す。これらは日本海の風が生んだ絶景と秘境である。人々は、厳しい風の季節での無事とそれを乗り越えた感謝を胸に、古来より幸せを呼ぶ麒麟獅子を舞い続けている。
江戸時代、システマティックな入浜塩田による塩づくりが確立された播州赤穂。
瀬戸内の穏やかな海と気候に抱かれ、千種川が中国山地からもたらした良質の砂からできた広大な干潟は、入浜塩田の開発に適していた。その製塩技術は、瀬戸内海沿岸に広がり、市場を席巻するまでに成長した。中でも赤穂の塩は、国内きってのブランドとして名を馳せ、この地に大きな恵みをもたらした。このまちには瀬戸内海から生み出される塩とともに歩んできた歴史文化が蓄積され、現在に息づいている。赤穂は今なお「塩の国」なのだ。
瀬戸内備讃諸島の花崗岩と石切り技術は長きにわたり日本の建築文化を支えてきた。
日本の近代化を象徴する日本銀行本店本館などの西洋建築、また古くは大坂城の石垣など、日本のランドマークとなる建造物が、ここから切り出された石で築かれている。石を切り出した丁場は独特の壮観な景観を形成し、船を操り巨石を運んだ民は、富と迷路の様な集落を遺した。島々には、400年に渡って石と共に生きてきた人々の希有な産業文化が今なお息づいている。
島根県西部、石見地域一円に根付く神楽は、地域の伝統芸能でありながらも、時代の変化を受容し発展を続けてきた。その厳かさと華やかさは、人の心を惹きつけて離さない。神へささげる神楽を大切にしながら、現在は地域のイベントなどでも年間を通じて盛んに舞われ、週末になればどこからか神楽囃子が聞こえてくる。老若男女、観る者を魅了する石見地域の神楽。それは古来より地域とともに歩み発展してきた、石見人が世界に誇る宝なのだ。