万葉の歌聖・山部赤人に「わかの浦に 潮満ちくれば 潟をなみ 芦辺をさして 鶴鳴きわたる」とうたわれた和歌の聖地、和歌の浦。このまま持ち帰りたいと万葉歌人は和歌にうたい、和歌の神様がこの地に宿った。潮が引けば干潟が現れ、刻一刻と輝きながら変化し、潮が満ちれば一面の海となる絶景に、後の時代に天下人や藩主も魅了された。そして、数多くの文化芸術が育まれ1300年の歴史・文化が織り成す景観は今も人々を魅了している。
醤油の起源は、遥か中世の時代、中国に渡り修行を積んだ禅僧が伝えた特別な味噌に始まる。この味噌の桶に溜まった汁に紀州湯浅の人々が工夫を重ね、生まれたのが現在の醤油であるという。醤油の醸造業で栄えた町並みには、印象的な町家や、白壁の土蔵が建ち並ぶ。通りを歩けば、老舗醸造家から漂ってくる醤油の芳香が鼻をくすぐり、醤油造りの歴史と伝統が、形、香り、味わいとなって人々の暮らしの中に生き続けている。