今週のドル円相場は、ドルが売られる展開となった。週明け12日、欧州時間に入ってCME日経平均先物やダウ先物の上昇を受けてドル買いが先行し、一時、119.32円までドルは上昇。しかし、これが今週のドル高円安のピークとなった。その後は、ドル安円高基調に転じ、14日には12月米小売売上高が市場予想を大幅に下回る弱い数字となったことから116.07円までドルは売り込まれている。15日のアジア市場では長期資金の買いが断続的に観測されるなどして、117.94円まで買い戻される場面もみられたが、その後、スイスの中央銀行(SNB)が、ユーロ/スイスフラン相場の下限を撤廃したことをきっかけに市場全体がリスクオフになると、再びドル売り円買いが加速し、16日には、一時、115.85円をつけている。
2011年9月に設定されたスイスの中央銀行(SNB)によるユーロ/スイスフランの下限レート(1.2000)が突如として撤廃された。ユーロ/スイスフランは、1.2010フランを挟んだかなり神経質な展開が続いていただけに、一体いつまで買い支えるのか危惧する声も聞こえ、一部では「(下限を)1.2000フランから1.1500フランに引き下げるのでは」との憶測も出ていた。しかし、いきなり下限を撤廃するという荒業を予想していた向きは少なく、市場へのインパクトは非常に大きかった。
スイスの中央銀行(SNB)が、下限撤廃を公式にアナウンスすると、一時、レートが市場から消え、次に出会ったレートは0.8500フラン。3500ポイントの暴落という予想をはるかに超えるユーロの安値をつけた。その後は、1.05スイスフラン台まで値を戻すことになるが、ドル円で例えると、120円が85円まで急落し、そして105円まで戻すというくらいの振幅の大きさだった。
そして、この為替市場に走った今回の衝撃は、他の市場にも即座に波及。ダウ平均や日経平均先物が急落し、米10年債利回りは一時1.7005%まで低下した。ドル円相場は、米長期金利の低下につれて116.15円まで下落して安値引け。週末のアジア市場では、一時、115.85円までドル安円高が進んだ。
では、なぜスイスの中央銀行が、ユーロ/スイスの下限レート(1.2000)を撤廃したのか。一部からは「欧州中銀(ECB)が、22日の定例理事会で国債買取りなどを含む量的緩和に踏み切ると見て、もはやユーロを買い支える正当性がなくなったと判断したのかも知れない」との声が聞かれる。
来週のドル円は落ち着きどころを探る動きとなりそうだ。リスクオフの動きが相次いだ今週の為替市場にあっても、長期資金の買い意欲は強い。市場が一旦落着きをみせれば、実需の買いを受けて次第に下値が切り上がる動きもありそうだ。
ドルの下値では、16日の安値115.85円が目先の目処として意識されているほか、12月16日の安値115.565円がサポートレベルとなっている。上値では、14日の高値117.95円がとりあえずの目処となっているほか、一目均衡表基準線の位置する118.19円や一目均衡表雲上限の118.75円がレジスタンスレベルとして意識されている。8日の高値119.97円もポイントとなるだろう。