今週のドル円相場は、週明けは、ギリシャのユーロ圏離脱やデフォルト懸念が浮上し、リスクオフの動きが強まった。翌6日には、日経平均が500円を超える急落となり、海外市場ではWTI原油先物価格が47ドル台まで下落。更に、12月米ISM非製造業指数が市場予想を下回る弱い数字となると米長期金利が急低下。ドル円相場も、リスクオフのドル売り円買いが加速し、一時、118.05円までドル安円高が進んだ。しかし、7日には株価が買い戻され、ドル円相場も一転してショートカバーが強まる展開に。8日には、119.97円まで買い戻されている。ただ、9日発表の米雇用統計で雇用の改善は確認されたものの1時間当たりの賃金は減少。強弱まちまちとなる中、ドルは売られた。
また、ユーロドルが急落した。ギリシャのユーロ圏離脱懸念やECB欧州中銀の量的緩和観測などが高まったことから、下値を試す展開に。8日には、一時、1.1754ドルまでユーロは売り込まれている。
市場では「Grexit」(グレクジット)という言葉に注目が集まっている。ギリシャのユーロ圏離脱を意味する造語である。先週末、ドイツのシュピーゲル誌が「ドイツはギリシャのユーロ圏離脱に対応する用意がある」と報じたことから、市場は不安を強め、原油安、株安、ドル安(円高)が加速し、債券市場では利回りが急低下した。
ところで「ギリシャのユーロ圏離脱に対応する用意がある」とするドイツは、「ギリシャをユーロ圏から離脱させてはいけない」との従来の立場を変えたのだろうか。メルケル首相とショイブレ財務相は、ギリシャの離脱の影響は限定的との認識で一致しているとされ、その点からすると、ドイツはギリシャの離脱を容認していると受け取ることができる。その一方で、総選挙(1/25)で優勢と伝えられるギリシャの急進左派連合(Syriza)に対する牽制と見ることもできよう。
そして、注目の急進左派連合は、欧州連合が主導する緊縮財政について「非合理的で壊滅的」だとして終わらせる方針。更に「債務の減免も求める」として、欧州連合と対立の構図を強めている。しかし、その一方で、ユーロ圏からの離脱そのものは否定し、また、より自由で競争的な経済の導入する意向も示していて、これは欧州連合、IMFなどから歓迎される方向ではある。総選挙の結果、ギリシャの政権パワーが右から左に移行する可能性はあるが、その後の行方は、様々な側面を見て考える必要があり、そう単純ではない。
来週のドル円は底堅い動きとなりそうだ。本邦長期資金の買い意欲は依然として強い。下値では、一目均衡表基準線の位置する118.70円が目先の目処として意識されているほか、6日の安値118.05円がサポートレベルとなっている。上値では、12月23日の高値120.82円がとりあえずの目処となっているほか、12月8日の高値121.86円がレジスタンスレベルとして意識されている。2007年6月22日の高値124.10円もポイントとなる。また、ユーロドルは2005年11月15日の安値1.1640ドルが長期的なチャート上でのサポートレベルとなっており、このレベルを下抜けると大きな下落となる可能性も出てくるだろう。