今週のドル円相場は、ドルが買われる展開となった。週明けこそ、日経平均の下落や米長期金利の低下を受けて113.86円までドル売りが進む場面がみられたが、その後は、10月米労働市場情勢指数(LMCI)が4.0と強めの数字となったほか、9月分も2.5から4.0に上方修正されたことをきっかけにドル買いが強まる展開に。翌日のNY市場では「消費増税の延期を前提とする解散総選挙」の憶測が台頭したことを受けて、一時116.11円まで値を上げている。12日のアジア市場で、一旦、114.86円まで売り込まれたものの、株価上昇を背景に再び底堅い動きとなっている。週末の14日の東京市場では、一時、116.38円までドル高円安が進んだ。
今週は、「政局」が相場を方向付けた。「消費税の再増税が延期され、年内に解散総選挙へ」との観測を伝える報道が相次ぐ中、株式市場では、短期的には景気にプラスとの見方が強まり平均株価は急上昇。ドル円相場では、株高を背景にドル買い円売りが加速した。相場の主役は海外のファンド勢で、主要なマクロファンド勢は「期限を切っての消費増税延期解散であれば、アベノミクスは引き続き買い」であると判断したようだ。再増税の延期は「アベノミクスの前提から外れる」ことではあるが、期限を切って延期であれば「許容範囲」と見ているようだ。
今回の円安株高局面で重要なことは、これだけ急激に円安株高が進行したにもかかわらず、目立った反動もないままに高値圏で推移しているということだ。今の相場の強さを示していると言える。また、現在の相場は、ドル高よりも円安のほうが際立つ展開となっている。例えば、ドル円は、116円台に達したが、ユーロドルを見ると、ここ1週間ほどは完全にレンジ相場となっていて、ドル高の流れが一服しているのがわかる。その一方、例えば豪ドル円などを見ると、とうとう100円の大台を突破して一時101.21円まで上昇してきた。その他のクロス円も同様で、全体的に見て円安の流れが鮮明になっている。
市場では、本邦輸出勢中心にヘッジのドル売りが手当てされている一方で、本邦輸入勢などの実需のドル買いは遅れ気味だ。こうした需給の傾きにも注意したい。
来週のドル円は、引き続き底堅い動きとなりそうだ。17日発表の7-9月期GDP速報値を見極めたうえで、安倍首相が再増税の延期と解散総選挙を判断するとの観測が強まっているが、市場は既に再増税延期と解散総選挙をかなりの程度織り込んでいる。仮にそうした判断がなされた場合、利益を確定する動きが出てくる可能性がある。ただ、そういった場合でも下押しは限定的になるのではないか。下値では、本邦長期資金や本邦輸入勢など実需の買い意欲が強い。一目均衡表転換線の位置する114.64円や11日の安値114.63円がとりあえずの目処となっているほか、10日の安値113.86円がサポートレベルとして意識されている。一方、上値では2007年10月15日の高値117.95円が目先の目処として意識されていて、このレベルを上抜ければ、2007年6月22日の高値124.14円が視野に入ることになろう。