6月28-29日にEU首脳会議が行われ、以下の3点で合意した。
(1)EU域内総所得(GNI)のほぼ1%に相当する約1200億ユーロ(約12兆円)を即効性のある成長対策に投入
(2)厳しい財政状況にあるイタリアやスペインへの支援を念頭に、ユーロ圏の基金を使って直接、銀行の資本を増強する仕組みを整備
(3)財政再建に着実に取り組んでいる国に対しては、厳しい条件を課すことなく、ユーロ圏の基金を活用して国債を買い支え
予想より積極的な内容であったことが好感されてユーロは上昇、スペインの10年債利回りも一時的に落ち着きを取り戻した。
また、5日のECB理事会では、市場の予想通り政策金利の1.00%から0.75%への引き下げを決定。さらに中央銀行預金の金利を0.25%から0%へ、限界貸出金利も1.75%から1.50%に引き下げている。理事会後に行われたドラギ総裁の記者会見では「ユーロ圏の経済成長は依然として弱い」「不透明感の高まりが信頼感とセンチメントを圧迫している」として、ユーロに対して非常に弱い見方を示した。
EU首脳会議やECB理事会で新しい政策が打ち出されたにもかかわらず、マーケットでは再び先行き不透明感が強まっている。持ち直しの動きを見せていたユーロ円も100円を割り込んだ。EU首脳会議前は7%近かったスペインの国債(10年債)利回りは、会議後に6.5%を下回る水準へ低下。しかし、ECB理事会後は再び急上昇している。
ユーロの財政問題が根本的には解決しておらず、ユーロ圏経済も厳しい現状では、ユーロ相場は引き続き厳しい動きが続くことになるだろう。
ユーロにマーケットの関心が向いており、ドル円は方向感に乏しい。ユーロ円は引き続きユーロ売りが進みやすい環境にある。