※榊原さんが海外出張のため、早稲田大学・今井雅人研究員の解説です。
今週は、アブダビ投資庁が米銀最大手のシティグループに対し、日本円で約8100億円の出資を行うと発表。これを好感して米国株式市場は金融株を中心に反発している。サブプライムローン担保証券で最大の損失を被っている金融グループに資金が投入されたことで、こうした流れが他の金融機関にも広がり、金融危機が、ある程度回避されるのではないかということを期待して株価が上昇しているわけである。
しかし、金融機関同士はお互いの経営状態に依然として不安感をいだいている。ロンドンの銀行間市場の推移を見ると、今週に入って金利が急上昇していることがわかる。これは、各金融機関が資金を市場に出し渋っているために流動性が低下し、そのため資金不足となって金利が上昇していると推測される。金利の動向から見ると、金融市場に不確定要因は依然として残っており、混乱が沈静化としたと考えるのはやや早計である。
12月も市場の注目を集めるスケジュールが目白押しである。11日には米連邦公開市場委員会(FOMC)が開催される。現在市場は0.25%の利下げを殆ど織り込んでいるが、FOMCがそうした市場の要請に応じるか注目される。また、中旬から下旬にかけては、米大手証券会社の11月の決算が相次いで発表される。決算発表によってサブプライム関連の損失がどの程度にまで膨らんでいるのか明らかになるため、この時期も市場は不安定になりやすい。
一時の円高ムードはやや後退したが、依然としてサブプライムローン関連の影響が市場に残っている。サブプライム問題に関する新しいニュースがでてくる度に市場が敏感に反応する展開はまだまだ続きそうで、円相場も不安定な状態が続く可能性は高い。来週も米国株式市場の動向に振り回される展開となりそうだ。