サブプライムローン問題による混乱が、ここのところ益々深刻化してきている。サブプライムローンというのは、米国の住宅ローンの一種である。通常の住宅ローンはプライムローンといわれるが、低所得者や、信用力の低い消費者はこうしたローンを活用できない。そこでこうした層の消費者のために用意されたのがサブプライムローンである。特徴としては、融資の審査基準を甘くしている代わりに金利が高く、延滞率も通常のプライムローンに比べて3倍以上大きいことが挙げられる。
元々米国では資産や債務を担保にした証券の発行を行う“証券化”が一般的である。サブプライムローンもこうしたスキームの下で証券化され、サブプライムローン関連の金融商品として投資家に販売された。代表的なものは、サブプライムローンを担保とした住宅用不動産担保証券(RMBS)であるが、その他にも、他の債券や金融債権と織り交ぜて組成された債務担保証券(CDO)という形でも商品化された。こうした債券に対して、米大手の格付け会社が高格付けを付与したために、投資家の購入が活発化した。
サブプライムローンは、ローンの年数が経過するにつれ、返済額が増加していく「ステップアップ」方式の形態をとっているものが多い。時の経過とともに負担が増すわけだが、住宅価格が上昇している間は担保価値に余力ができた部分で更にローンを組んで返済するという自転車操業が成り立っていた。しかし、2004年以降、FRBが政策金利を急激に引き上げたために、住宅市場が低迷し始め、住宅価格の上昇もストップ。値上がりを見込んでいた自転車操業が機能しなくなり、ローンの延滞率が急増した。こうした傾向が顕著になってきたために、格付け会社はサブプライムローン関連証券の格付けを引き下げ、その結果、証券の価格は下落し、投資家が大きな損失を被った。こうして金融市場は大混乱に陥ったわけである。
シティグループが7-12月の半年間で、最大174億ドル(約1兆9000億円)の損失が発生する可能性を明らかにするなど、サブプライム関連証券への投資で金融機関中心に大きな損失が発生している。金融庁が発表したところによると、日本の金融機関もこうした証券を総額1兆3300億円保有し、現状で2300億円の損失が発生している。この証券は流通市場が存在していないため、投資家は証券を保有せざるを得ない状況に追い込まれており、損失は更に拡大する可能性がある。FRBは当初損失は総額1000億ドルに及ぶと予想していたが、最近1500億ドルまで予想を引き上げた。また、OECDは今週発表した定例報告の中で、損失が最大3000億ドルに達する可能性があると試算している。またドイツ銀行のアナリストは最大4000億ドルに達するとのレポートを発表している。
サブプライムローン問題が悪化し、ドル全面安の展開が続いている。それと同時に投資家がリスク縮小の動きを活発化させているために、金利差を狙った円売りの解消による円高圧力も同時にかかっている。そのため、ドル円でのドル安円高の動きが顕著になり、ドル円は107円台に下落してきている。サブプライムローン問題の出口が全く見えない中、年末年始にかけてドル円が100円を切る可能性もでてきた。