7月10日、大手米格付け会社のスタンダード・プアーズ社は612銘柄総額120億ドル相当のサブプライムローン担保証券の格付け引き下げを検討していると発表した。また、ムーディーズ・インベスターズ・サービス社も399銘柄52億ドル相当のサブプライムローン担保証券の格付けを引き下げると発表した。
こうした発表を受けて、サブプライムローン問題は再度市場の脚光を浴びることとなった。
サブプライムローンは元々低所得者や信用力の低い層向けの住宅ローンで、金利も通常のプライムローンに比べて高めに設定されている。そして、通常の住宅ローンに比べて延滞率は高くなる傾向がある。この延滞率が05年第2四半期頃から上昇し始め、直近の07年度第1四半期には14%近くまで上昇している。
こうしたサブプライムローンを担保とした証券は金利が高めであり、ヘッジファンドなどの投資家による購入意欲は非常に高かった。今回の格付けの引き下げにより、こうした投資家の損失が拡大するという懸念が広まり、金融市場は一時混乱した。
サブプライムローン担保証券の引き下げ発表を受けて、10日のニューヨークでは株式市場が急落した。NYダウ平均株価は10日、前日比140ドル近い下落となった。しかし、こうした混乱も一時的なものに終わり、翌日11日には株価は上昇、12日には更に続伸し、史上最高値を更新している。
サブプライムローン担保証券格付け引き下げの影響は、今のところ軽微なものに留まるという観測が市場関係者の間に広がったことが反発の要因となったようである。
国内では、11-12日と日銀の金融政策会合が開催され、政策金利を現状の0.5%に据え置くことを8:1で決定した。市場関係者の中には、今回利上げを主張するメンバーが3名を超えれば、8月利上げの可能性が高まるとの観測があった中が、結局、利上げを主張したのは最もタカ派の水野審議委員のみであったことから、やや失望感が漂った。会合の後の会見で福井日銀総裁は「メンバーの中での経済の見方は前進している」という趣旨の発言をしたものの、市場はこれに対し若干反応した程度に留まった。
今週はプライムローン問題による米国株式市場の混乱で、為替市場も一時大幅に円高となったものの、米国株式の混乱が一時的なものに終わったことですぐに円安傾向に逆戻りしている。日銀が8月に利上げを実施する可能性についても不透明な状態となったことでまた1つ円高リスクを市場は消化してしまった。
来週は大きなイベントがないため、金利差を背景にした緩やかな円安は続きそうだ。但し、値動きは小幅なものに留まると予想する。