先週の金曜日全国消費者物価指数6月分が発表になった。日銀が重要指標として位置づけている消費者物価指数(除く生鮮品)は前年同月比で-0.1%と5月と同じ結果となった。これで4ヶ月連続で前年比マイナスの状態が続いていることになり、日本国内の物価が上昇していかないという状況が改めて浮き彫りになった。
今週2日に発表された日銀短観07年第2四半期分では、大企業製造業の業況判断は前回と同様の23、大企業非製造業の業況判断も前回と同様の22と依然景況感は堅調であることを示す結果となった。
しかし、ここ2-3年の傾向を見ると05年から景況感は徐々に回復してきたが、ここ3期ほどは頭打ちとなり、今後の景気の拡大に対してやや不安を残す結果になっているともいうことができる。物価が上昇しない中で、景況感も伸び悩みを見せており、日銀の早期利上げの環境はなかなか整ってこない。
日本の低金利が長期化していることで、国内の個人マネーが海外へ流出する傾向は相変わらず顕著である。ここ数年人気の高い投資信託の残高推移を見ても、外貨建て投信の伸びが特に目立つ。
05年には13兆円程度であった外貨建て投信の残高は直近の07年5月末には33兆円にまで増加してきている。投信全体に占める外貨建ての比率も約4割に達しており、いかに個人マネーが海外に投資先を求めているかを伺うことができる。
また日本の低金利は外国人投資家の行動にも影響を与えている。日銀が発表している国内コール市場の直近残高を見ると、外資系銀行の円調達が邦銀の調達残高を上回っている。外資系銀行の短期市場での円資金調達の背景は外国人投資家からの調達依頼と推測できる。
外国人投資家は、日本向け投資をする際に円で資金調達するため、円高要因とならないということが指摘されてきたが、コール市場での借り入れの残高は、こうした行動が実際に起きていることを示唆している。
また、ここのところ海外企業によるサムライ債の発行が急増しているが、発行によって調達された資金もまた日本向けの投資に当てられていると推測できる。
国内投資家の資金が海外流出する一方で、外国人投資家による円資金調達などが続く限り現在の円安傾向に変化は起きない。これ以上の円安を回避するためには日銀は早期利上げに踏み切る必要があるが、現在の経済環境を考えれるとその実現性はあまり高くない。となれば、為替市場では今後も円安は進行していく可能性が高くなってくる。
来週は日銀の金融政策決定会合が開催される。この場で今後の利上げに積極的な姿勢を示さない限り来週の為替市場も円安傾向が継続しそうだ。