今週の金曜日、日銀は政策金利の据置きを決定した。同時に発表した金融経済月報でも前回の見解を維持し、特に大きな変化は見られなかった。また、その後行われた会見で、福井総裁は「政策変更するには確認すべき事項が非常に多く、設備投資と消費の持続性の判断にはより確証が欲しい」と利上げに対して非常に慎重な姿勢を見せた。市場関係者の中には7月の利上げを予想する声も一部あったが、これにより7月の利上げの可能性は非常に低くなった。
福井総裁のハト派発言も手伝って為替市場では円安が進行している。今週、ドル円もついに今年の年初来高値である122円20銭を上抜けし、123円台にまで上昇した。この水準は実に4年ぶりの水準である。今年に入ってから、米ドル以外の通貨で円安が進行してきたが、ここに来て、米ドルでの円安の傾向が目立ってきている。
最近のドル高円安は、米国経済への楽観的な見方が広がったことが背景にある。先週も話したとおり、米国経済への拡大期待が広がっていることで、米国の長短金利が急上昇している。その間、円金利も上昇してきたが、米国金利の上昇スピードのほうが速かったために日米金利差はむしろ拡大傾向にある。グラフを見ると、ここ最近のドル円でのドル高円安が日米金利差の拡大に大きく影響を受けていることがわかる。
福井総裁が利上げに慎重な姿勢を示したことで今後日米金利差が更に拡大する可能性もでてきており、為替相場も更なる円安に向かう可能性もでてきた。しかし、最近マヨネーズや紙製品など消費財の値上げが国内で目立つようになってきたことを考えると、年の後半に入ってからは国内でもインフレが加速する可能性は十分にある。現在、日銀は利上げを急いではいないものの、インフレ基調が確認されれば金融引締めの姿勢は強まってくるであろう。そうなれば年度内に3度ほどの利上げもあると見ている。日銀の利上げのスピードが速まってくれば円安の流れも沈静化するであろう。
来週の円相場は円の安値を試す展開となりそうだ。福井総裁のハト派発言により日銀の早期利上げ期待が大きく後退した。今月は時期的にもボーナスシーズンで円売りが出やすい環境にもある。米国の金利上昇によって米国株式が不安定な動きを見せていることが懸念されるものの、来週も基本的には円安傾向が続く一週間となりそうだ。