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2007年5月26日 放送

5月18日、中国人民銀行は、金融政策・通貨政策に関して3つの変更を発表した。まず、管理変動相場制を採用していている人民元に関して、対米ドルでの1日の変動幅を従来の0.3%から0.5%に拡大することを発表。それと同時に預金準備率の0.5%引き上げと政策金利である貸出金利を0.18%引き上げるという金融引締策も決定している。人民元の改革に関しては、22日-23日に開催された米中経済戦略対話の前に改革の一定の成果を示しておきたかったというのが背景にあると考えられる。

しかし、実際の人民元の推移は非常に緩やかなものに留まっている。人民元の対米ドルレートを見てみると継続的に人民元が強くなっているのがわかると思うが、上昇幅を見てみると5ヶ月間で2%程度に留まっており、年率に換算しても5%程度の上昇ペースとなっている。米国内では、現状の人民元の水準は、40%程度は割安だという厳しい意見もあり、現在の上昇のスピードではとても満足できるものではない。しかし、これに対して呉中国副首相は「人民元相場は米国の貿易赤字の原因ではない」と米国の主張に耳を傾ける様子はない。

こうした人民元相場の安定にも助けられる形で中国経済は依然年率10%を超えるほどの勢いで伸びている。経済の急拡大に歩調を合わせるように株式市場も去年から急上昇が続いている。代表的な指標である上海総合株式指数を見ると、今年に入って年初来6割近くも上昇。シンセン総合指数にいたっては年初来120%以上の上昇をみせている。市場の過熱感に対して、中国人民銀行は金融引締策を発表したが、こうした対策にも市場は全く反応していない。

中国株式は今後更に上昇する可能性がでてきた。連日、大量の新規口座開設が続く現状では、まだまだ国内投資家からの資金が流入する可能性が高い。また、22日から23日に開催された米中経済戦略対話では、適格外国機関投資家制度の投資枠を現行の100億ドルから300億ドルに拡大することが合意され、今後外国人投資家からの資金流入の拡大さえ予想される。中国側は、米国との不均衡是正策として、輸出企業への低利融資の廃止や鋼材、希少金属などへの輸出関税適用を発表しているが、こうした対策も、どの程度国内産業の急成長を抑えることができるのか疑問が残る。グリーンスパン元FRB議長も中国株式が将来劇的な縮小をするであろうと発言しているが、それもまだ先のこととなりそうである。

為替相場のほうは相変わらず小動きの展開が続いている。米国株式の下落で円高に振れる展開も見られたが、基本的には新規材料が見当たらず、投資家の行動も極めて鈍い状態が続いている。金曜日に発表された全国消費者物価指数(除く生鮮品)4月分も前年比-0.1%と事前予想通りの結果となったため、現状での早期利上げ期待もやや後退している。米国株式・中国株式市場の動向が波乱要因となりうるが、株式市場が落ちついた動きをすれば為替相場も今週同様小動きの展開が続きそうだ。

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