先週も紹介したとおり、為替市場ではドル安・円安が進行している。その中でも、オセアニア通貨に加えユーロの堅調さが特に目立っている。ユーロは対円でも今週162円まで上昇し、史上最高値を更新したが、対米ドルでも史上最高値である1ユーロ=1.3666ドルに迫る水準まで上昇してきている。
元々、ユーロ圏は2005年より景気が順調に拡大してきている。ユーロ圏のGDPの推移を見ると、2005年前半は1%台前半に留まっていたが、その後順調に伸び、直近の2006年第4四半期は3%を超える水準まで上昇してきている。
こうした景気拡大に伴って、インフレ率も高止まりし、ECBの上限目標とする2%を上回っていたため、継続的な利上げが実施されてきた。その結果、直近では上限目標を下回っていて、ECBも今後数ヶ月、インフレは低下傾向になるであろうとの見解を示した。しかし、年末にかけてインフレ率は再び上昇に向かうともしており、市場関係者の中では6月の利上げが確実視されているだけでなく、「それ以降の利上げの可能性もでてきた」という見方が広がってきている。
こうしたユーロ高に対して、欧州の当局者は特に懸念を持っていないとしている。20日から行われているEU財務相理事会に先立って、ユンケル・ルクセンブルグ首相は「ユーロ相場の輸出企業への影響は限定的で、高すぎる水準とは言えない」と発言、またシュタインブルック独財務相も「ドイツの輸出企業はユーロ相場に振り回されていない」と発言するなど、現状のユーロ高を容認する姿勢を見せた。政治的な圧力も無い中で、ユーロは更に上昇していく可能性もでてきた。
また、米国ではインフレ率が徐々にではあるが低下傾向を見せている。今週発表された3月の米消費者物価指数のコア指数動向を見てみると、前年同期比で+2.5%と前月の+2.7%を下回ってきている。こうした指標を受けて、市場関係者の中では「FRBによる追加利上げの可能性がかなり低くなってきた」との意見が大勢を占めており、ドルの下落要因となっている。
今週は、日銀が5月に利上げをするのではないかという観測が流れたことで、一時期大幅な円高になる局面もあったが、全体的に見れば、円金利の低水準を背景にした円安傾向は継続している。来週も基本的にはこうした傾向は続くであろう。ただし、週末に発表される日銀の「展望レポート」の内容次第では、再び日銀による早期利上げ観測が浮上してくる可能性もあり、波乱の展開となるかもしれない。