ドル円相場が非常に安定しているために、あまり目立たないが、実は世界中でドル安の流れが進行している。FRBの発表しているドルインデックスの推移を見ると、2006年前半からドル安が続いているのがはっきりとわかる。そして今月に入って、06年12月につけた直近の最安値を割り込む水準までドル安が進んだ。ただし、対円に関しては、円も相対的に弱くなっているために、ドル安が進行していないという状況になっている。
ドル安の傾向が特に強いのは、対オセアニア通貨である。例えば対豪ドルでは、1996年の豪ドル高米ドル安水準を更に上回ってきている。オーストラリアは鉄鉱石・石炭などが豊富に産出されるため、最近の資源価格の高騰の恩恵を受け高金利にもかかわらず、景気は堅調に推移している。また、中国への輸出が急増しており、急成長する中国経済の影響で景気がしっかりしているという要因もある。オーストラリアのインフレ率は、中銀が目標の上限とする3%を上回っていて、それによる金利先高感も上昇に拍車をかけている。また、米国の金利先安感から、相対的に金利水準の高いオセアニア通貨に資金が流入しているという面もあるようだ。
ドル安の背景に米国経済に対する不透明感があるのはいうまでもない。先日発表された米雇用統計は予想より良好な結果となり、雇用環境の堅調さは確認されたものの、住宅市場の落ち込みが相変わらず止まらない。新築住宅着工件数を見ても、明らかに減少傾向にあることが見て取れる。こうした住宅市場の落ち込みが、消費動向へマイナスの影響を与えると、いよいよ利下げの可能性が高まってくるであろう。
ドル安と同時に円安も進行しているのが、最近の為替市場の大きな特徴になっている。日銀による利上げのスピードが緩やかなものにとどまるとの観測から、低金利の継続を材料に円が売られやすい環境が続いている。豪ドルに対しての円相場を見てみると、これもやはり10年ぶりの円安水準に戻ってきているのがわかる。現状は米ドルと日本円が他の通貨に対して弱い相場展開となっているのである。
今週末のG7で円安が特に大きなテーマにならなければ、円安の傾向は継続すると考えられる。しかしその一方で、米ドルに対する売り圧力も継続する可能性が高く、ドル円は方向感のない相場展開が続くであろう。そんな中、ユーロはECBによる利上げ期待を背景に、依然ユーロ高・ドル安、円安の展開が継続するものと考えられる。ドル円は118円台から119円台を中心とした動き、ユーロ円は史上最高値を更新していく展開になると予想している。