2007年 2月3日の放送
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ここ2週間ほど、欧州サイドから最近の円安傾向について、不満の声が挙がってきている。EUの議長であるユンケル・ルクセンブルグ首相は欧州委員会の後の会見で、「(最近の円安に)益々神経質になっている」「我々はこうした為替レートの変動を好ましく思っていない」と発言した。
また今月9-10日に開催される7カ国財務相・中央銀行総裁会議(G7)の議長国であるドイツのシュタインブリュック独財務相は今回のG7で円安について協議をしたいという意向を示した。
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グラフは06年からのユーロ円相場の推移を示しているが、継続的にユーロ高円安が進行していることが分かる。06年はユーロ圏の景気拡大と高インフレを受けてECBが継続的に利上げを実施した。一方の日本は7月に0.25%の利上げを実施し、ゼロ金利政策からの脱却はしたものの、結局年間の上げ幅は0.25%に留まり、しかも、絶対水準も0.25%と非常に低い状態が続いている。
こうした金利環境の違いが為替市場でのユーロ高円安要因となっていることは言うまでもない。欧州経済は堅調だったが、このところやや腰折れを心配する声も聞かれるようになってきており、欧州としてはこのユーロ高円安を放置できないという事情がある。
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1月31日、ポールソン米財務長官は上院での議会証言の場で、注目すべき発言をした。まず、最近の円相場の動向について「非常に非常に注意深く見ている」と発言、その上でG7で円相場について議論をする可能性についても言及した。
これを受けて、外為市場では円高が進行、ドル円も121円台から120円台へ下落した。しかし、発言の中で財務長官は日本の景気動向が依然脆弱で、しかもデフレ懸念が残っていることを指摘し、「最近の円相場はこうした日本経済のファンダメンタルズを反映している」と述べるなど、現状の為替レートを正当化する発言もしている。従って、この発言が円高要因であったかには疑問を残すものの、G7で円安に関して議論される可能性が高まったことから、市場に警戒感が出ているということであろう。
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昨年9月にシンガポールで開催されたG7における、為替相場に関する声明はご覧の通りである。中国の為替レートに対する調整を要求する内容となっている。今回、欧州サイドは円(或いは日本)に関しても、個別に言及したい意向を示している。しかしながら、世界全体のマクロ経済が比較的安定している中で円相場を特定して言及する可能性は高いとはいえない。最終段階まで不透明ではあるものの、円安問題についての議論はあったとしても、それを声明文に盛り込むところまでは進まないと予想している。
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来週はG7直前の1週間となるため、各国の要人からさまざまな発言が出てくると予想される。各国の利害が一致しない中では、発言の内容も人によってばらつきが出てくるであろう。こうした発言を受けて、さまざまな憶測が市場の中で飛び交う一週間になると考えられ、為替相場も方向感のない神経質な展開が続くと見る。
ドル円は、基本的に120円台から121円台のもみ合いになると思われるが、要人の発言次第ではどちらにも動く可能性があるため、こうした発言に十分に注意をしておく必要があろう。