2006年 12月2日の放送


< 1 >

 11月30日に発表された11月のシカゴ購買部協会景気指数は、市場予想54.4に対して49.9と予想を大きく下回る結果となった。景気指数は、50が判断の節目といわれており、50を下回る今回の結果は、市場に大きなインパクトを与えた。このところ住宅市場関連の指標が大きく落ち込んできていたが、今回は全体的な景況感も悪化してきていることを示唆しているようだ。


< 2 >

 こうした最近の弱い指標を受けて長短金利が急低下。10年物長期金利は4.5%を割りこみ、4.4%台に突入している。これは今年2月以来の低水準である。また、短期金利市場も来年3月近辺での利下げをほぼ織り込む水準にまで下落している。バーナンキFRB議長をはじめとするFRB関係者が、景気に対して、どちらかというと楽観的な見方を示している一方で、市場はそれよりもはるかに悲観的な見方をしている点は非常に興味深い。

< 3 >

 一方、欧州経済は依然として堅調である。今週発表になったユーロ圏の7-9月期のGDP実質成長率は、前年同期比で、+2.7%(年率)となった。これは4-6月期の数字をわずかに下回ったものの、依然として堅調に推移している。

ECBは来週木曜日の金融政策会合で0.25%利上げを実施することが確実視されているが、実施後の金利は3.5%と依然米国に比べてかなり低い水準にあり、まだ上昇余地は残されている。今後も景気の堅調を背景にインフレ抑制のための利上げ継続が見込まれる。

< 4 >

 ドルの下落が続いているが、特に米国景気の落ち込みと、欧州経済の堅調さを反映する形で対ユーロでのドルの下落が顕著である。ユーロドルは1.3の節目を抜けた後、上昇のスピードが加速。2005年3月以来、実に20ヶ月ぶりの高値水準にまで上昇してきている。

また、対円でのドルの下落より、対ユーロでの下落スピードがはるかに速いため、ユーロは対円でも上昇。史上最高値を連日更新し、いよいよ155円が視野に入ってきた。また、欧州サイドからユーロ高に対する楽観的な見方が示されていることもユーロ高の支援材料となっている。

< 5 >

 TS指数を見ると円高ドル安を予想している人が多い。今回のアンケートでは大きく円安に向かうという人は一人もいなかった。最近のドル安の傾向が今後も続くと見て、対円でもいずれドル安が加速する可能性が高いとする関係者は多い。

ただし、ユーロ円を中心に円安傾向が続いているため、対ドルで円が大きく下落する可能性は今の時点ではそれほど多くないと考える。しかし、中期的に見ると大きくドル安円高にいく可能性はかなり高くなってきている。