2006年 11月25日の放送


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 今週21日、米大統領経済諮問委員会は2007年の米国経済見通しを発表した。その中で、2007年は今年に比べ、景気の拡大が鈍化するという見解を示している。また、経済成長率に関しても、今年6月時点ではGDP成長率+3.6%と予想していたところを+2.9%と、0.7%下方修正している。見通しの中で、住宅市場のここ最近の冷え込みが景気拡大減速の大きな原因となると指摘している点に注目したい。


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 実際のところ住宅市場の落ち込みは日を追うごとに鮮明になってきている。先週の週末に発表された米住宅着工件数の10月分は、148万6000戸と、事前の市場予想168万戸を大きく下回る結果となった。また、9月に一度反転したものの、10月分は再び前月を下回る結果となったことで、今年1月をピークとした下降トレンドが一層鮮明となった。

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 住宅市場に関しては、更に今後の先行きに関しても暗雲が立ち込めている。住宅着工件数と同時に発表された米住宅建設許可件数10月分は予想163万件のところ153.5万件と、これも市場予想を大きく下回った。グラフを見ても分かるとおり、これで9ヶ月連続の下げとなっている。建設許可の件数は今後の住宅市場の動向を示唆する重要な指標だ。こうした下落傾向は、今後も住宅市場が冷え込んでいくことを暗示している。

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 こうした経済指標に対して、発表時は市場の反応が鈍かった。しかし、今週後半は米国が感謝祭の休暇に入ることもあって、週半ばになり、急構えのポジション調整でドルが下落する展開となった。中国人銀行副総裁が、人民元柔軟性向上に向けて積極的な姿勢を示したことで、人民元が米ドル連動性廃止後の最高値をつけたことなども円高を加速させる要因となっている。その結果、ドル円は金曜日の東京時点で9月以来となる116円台前半にまで下落している。

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 先週、TS指数が大きく円安予想に傾いていることに対しての懸念をご紹介したが、その懸念が的中した一週間であった。今回の調整で更なる円安に対する楽観的な見方が後退したために、今後しばらくは大きく円安に傾くことはこれでなくなったのではないかと予想している。ただし、現状もそれほど大きく円売りに市場が傾いていないため、今回の市場の反応は一時的な調整である可能性が高い。ただし、来週は福井総裁の会見が何回か予定されている他、週末には10月の全国消費者物価指数の発表が控えている。来月日銀の利上げがあるかへ市場の注目が集まっているため、こうしたイベントの結果次第では波乱の展開になる可能性もあるので注目しておきたい。