2006年 11月18日の放送
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ここのところユーロ円が151円台に乗るなど、円安傾向が続いているが、こうした円安の傾向は短期的なものではなく、長期的な流れとして発生している。日銀が月次で発表している実質実効為替レートを見てみても、だらだらとした長い円安傾向にあり、2005年から約2年間に20%程度の円安が進行している。世界中の通貨の中で円だけが独歩安となっているのがここ数年の国際経済の中で起きている現象といえる。
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今週、日本の7-9月期のGDP速報値が発表された。事前の市場予想は前期比年率で1% であったが、実際の結果は2%と市場予想を上回るものとなった。また、4-6月期の数字と比べても上昇している。日本経済はすでにいざなぎ景気を超える長期の景気回復を遂げているのにも関わらず、円安になっているのは、日本の特殊環境が影響していると推測される。すなわち、規制緩和などによる価格の下落が多くの分野で見られることや、正社員から非正社員という雇用構造の変化によって賃金が上昇せず、それが原因で物価が上昇していかない、という構造的な問題である。
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こうした構造的な問題によりインフレは抑制され、円金利は長くゼロ%の状態にある。今年7月に利上げをしたものの金利水準は0.25%と極めて低い水準に留まっている。一方の欧米諸国では、インフレ防止のために継続的な利上げが実施されてきており、ここ2年だけを見ても各国と日本の金利差は拡大してきている。こうした金利差の拡大が現在の円安の大きな原因となっている。
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日銀は来年1-2月、早ければ12月にも利上げを実施する。しかし、市場はこの利上げをかなり織り込んでいると考えられ、実際に利上げが実施されても大きな円高を演出するのには不十分であろう。問題はその後、円金利が継続的に上昇していくかという点にあると考えられるが、現状ではそうした兆候は全く見られない。そうなると、もう1つの可能性として、主要国による「円安是正合意」が考えられる。欧州からすでにこうした不満の声が上がっており、問題は米国の姿勢がどうなるかにかかってくるであろう。
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来週は米国が感謝祭休暇に入るために、市場は閑散としてくる。大きな材料も乏しく、相変わらず狭いレンジでの取引に推移するであろう。そんな中、全体ではじわじわと円安が進む展開が続きそうだ。ドル円は119円台を試しにいくと予想している。市場関係者の見方もほぼ同様であるが、あまりに見方が偏っているときは調整も入るケースがしばしば見受けれられるのでやや心配なところでもある。