2006年 6月10日の放送
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アメリカのFRBのタカ派姿勢が鮮明になってきた。バーナンキFRB議長は5日、「月間のコアインフレ指標が上昇する最近のパターンが続かないように警戒を怠らない」とインフレの抑制に強い姿勢を示した。また、グイン・アトランタ連銀総裁や、プール・セントルイス連銀総裁らも、インフレに強い懸念を示す発言をしており、多少景気に影響があっても、インフレ抑制のために利上げを継続する姿勢だ。
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こうした、FRBの政策を嫌気して米国株式が続落した。一連の発言から、FRBは景気拡大の維持よりもインフレ抑制を優先すると理解した市場関係者は多い。これが、将来の景気後退懸念を呼び、株式市場に悪影響を与えている。市場関係者の中には、今回の世界中を巻き込んだ金融市場の混乱を「バーナンキショック」と呼ぶ者もいる。
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アメリカの株式市場の下落は世界中に波及し、中でもアジアでの株式市場の下落が顕著になっている。日経平均株価は1万4千円台まで下落し、年初の高値から16%以上の下落となっているが、他のアジア諸国の株式市場もほぼ並行する形で急落している。特に、インド株式の下落が激しい。投資家は昨年後半よりアジアの株式市場への投資を加速しており、今年前半も大幅な上昇をした。今回はそうした動きの反動であり、ヘッジファンドをはじめとする投資家は急速にリスクを縮小する行動に出ている。
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為替市場では、今週ドル高が進行した。アメリカの利上げ継続により、金利差が広がることを好感してドルが買われたというよりは、欧米の投資家がリスクを縮小するために、手持ちのドル売りを手仕舞いする行動にでていることが今回のドル上げの直接の原因であろう。ヘッジファンドなどは、アジア通貨でもドル売りアジア通貨買いのポジションを大量に持っていたが、そのリスクヘッジとして、ドル買い円売りを進めているようである。
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今回の一連の金融市場の混乱で投資家のリスクマインドがかなり後退したと考えられる。今週のドル買いも積極的なドル買いというよりは、リスクを減らす消極的なドル買いであったということができる。こうした動きにより、市場のポジションはかなり整理されたであろう。来週以降は依然不安定な動きが続くであろうが、当面は大きなリスクをとりにいくマインドが冷えるため、株式市場同様、為替市場も方向感のないレンジ相場に突入する可能性が高いと見る。