2006年 4月22日の放送
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今週20日にブッシュ米大統領と胡錦濤中国国家主席の会談が行われた。会談では米中関係、核不拡散問題、台湾問題、知財保護などの通商問題が話し合われたが、どれも一般的な内容にとどまり、踏み込んだ議論はなされなかった。また、人民元の問題についても、アメリカ側が一層の切り上げを要求したのに対して、中国側が引き続き改革を進めると回答したにとどまり、双方が従来からの態度を主張するだけの内容となった。これにより、今後一層、貿易摩擦が拡大していくという懸念も広がっている。
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3月28日に行われた米FOMCの議事録が18日に発表された。議事録の内容を見てみると、インフレが上向くリスクには引き続き注意するとの態度は変えていないものの、大半のメンバーが利上げ継続がそろそろ最終段階にきている、と考えているというものであった。アメリカの利上げがいつ終了するかというのが現在の市場の大きな関心事の1つであるため、このハト派の発言を受けて、市場金利が低下し、ドルは下落した。その一方で、株式市場は金利低下を好感して急進している。
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こうした、FRBのメンバーの慎重な姿勢の背景には、米国経済が利上げにより、そろそろ減速傾向に入ってきているのではないかとの懸念がある。今週発表されたアメリカの住宅着工件数を見てみると、今年の1月をピークに急速に減少傾向に入ってきていることがはっきりとわかる。住宅部門は金利の上昇の影響を直接的に受ける部門であり、これ以上金利を上げていけば、更に市場が冷え込む可能性が高く、FRBにとっても大きな懸念材料であることは間違いない。
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しかし、一方でインフレ懸念も依然払拭されていない。今週発表になったアメリカの消費者物価指数(コア)が前月比+0.3%と先月の+0.1%から上昇し、この数字は事前の予想を上回る結果となっている。また、年率で見ても+2.1%とFRBの目標水準である2%を上回る水準にある。更に4月に入ってから、原油価格などが急上昇しているため、4月の数字は更に上振れる可能性も高い。景気減速とインフレ加速という2つの大きな課題を突きつけられたバーナンキFRB議長は非常に難しい舵取りを迫られることになる。
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今週のトレーダーズセンチメント指数(TS指数)は、若干円安に傾いているものの、ここ数週間よりは中立に近づいている。米国の利上げが終了に近いとの見方が日増しに強くなる中、ドルは積極的に買える環境ではない。しかし、一方で日本サイドの金融政策も当面はゼロ金利の状態が続くため、市場の長短金利の上昇も限定的である。そうした中、ユーロの利上げ期待は依然強く、ドル円はもみ合いが続く中、対ユーロでは、徐々に円安が進行するような展開になる可能性が高いと考える。