2006年 3月25日の放送


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 今月14日に、中国の第10期全国人民代表大会第4回会議が閉幕した。会議承認された2006-2010年の第11次5カ年計画は、今後5年間の成長率を年率で7.5%に設定している。この数字は最近の9%を超える実績値よりは低目ではあるものの、5年という期間を考えたときには、依然成長重視の目標となっているということができる。


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 また、今回の会議では、国内での経済格差の是正に対する対策を大きく打ち出している点に大きな特徴がある。特に、3農問題といわれる農業従事者の生活改善について、農村の義務教育の無料化、医療サービスの充実、税負担の軽減などの方針が示され、中国経済のアキレス腱といわれる農村部の経済力改善に取り組む姿勢がより明確にされた。

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 また、会議後の会見で温家宝首相は日中の関係について言及。発言の内容は「第2次世界大戦のA級戦犯がまつられている靖国神社に日本の指導者が何度も参拝していることは、中国とアジアの人民の感情を著しく傷つけている」「中国が悪いのでもなく、日本国民が悪いわけでもなく、原因は日本の指導者にある」とかなり具体的な表現で、小泉首相らの靖国神社参拝を止めるように改めて強く求めている。

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 また、温家宝首相は今後の日中関係の改善策として、
1 政府間の戦略対話を継続し、日中関係の障害を取り除く
2 民間交流を強化し、相互理解と信頼を深める
3 経済関係の安定と発展で、相互に利益のある協力関係を拡大する
の3点をあげており、政治問題をいち早く解決して、経済関係の一層の強化を促したいというメッセージを日本に送っている。

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 アメリカから度重なる切り上げ圧力を受けている人民元に関しては、「人民元を1回で上げたり、下げたりするような状況は二度と存在しない。意表をつくようなこともない」と、政府主導で切り上げをする可能性をはっきりと否定し、今後は人民元の動きは市場にゆだねていくことを強調した。

今後人民元は、市場主導という形で徐々に上昇し今年中に3-5%程度上昇していくものと予想する。また、市場の動向を見ながら、近い将来、1日の変動幅の上限を現状の0.3%から拡大する公算が高い。

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こうした発表があった翌日の15日、人民元は対米ドルに対して0.12%上昇し、昨年7月21日の人民元改革の発表依頼1日の変動幅としては最大となった。こうした動きを当局が容認していることは、今後市場の動きにゆだねていくという政府の方針を改めて確認する動きであったということができるであろう。