2006年 3月11日の放送
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3月9日、日銀は、5年間続けてきた量的緩和政策の解除を遂に決定した。金融調節の操作目標を日銀当座預金残高から無担保コールレートに変更し、量から金利への政策転換を決めた。その上で、当面の間、無担保コールレートを概ねゼロ%で推移させると発表し、ゼロ金利政策は当面継続することを強調して市場の混乱を回避した。
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日銀はもともと、量的緩和解除の条件として
1 物価が基調的にプラスになること
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2 再びデフレにならないことが確実となること
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3 その他のこと
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また日銀は、同時に今後の新たな金融政策運営の枠組みも発表している。大きなポイントは、中長期的な物価安定の“目安”を定めたことである。欧米諸国が多く採用しているインフレターゲットに近い考え方を金融政策に導入したわけである。当面の目安は、「消費者が物価指数が0〜2%の範囲」と設定されている。
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今後の金融政策は、数ヶ月間はゼロ金利を維持しながら、日銀当座預金の残高を現状の30-35兆円から徐々に削減して数ヶ月かけて6兆円程度にまで削減していくことになる。景気・物価動向が非常に順調であれば、前倒しでの利上げというのも考えられるが、常識的に考えれば、半年程度はゼロ金利は維持するであろう。年内は利上げしても0.25%程度にとどまる公算は非常に高い。
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量的緩和解除の発表を受け、金利高、円高、株安に動くのではないかと心配されたが、実際は事前に市場が織り込んでいたために、各市場とも安定し、特に株式市場は大幅な上昇となった。今回、日銀は市場に事前にメッセージを出して、コンセンサスを作っておいた上で政策変更を発表し、市場の混乱を回避することに成功した。今後も今回のような市場との対話を重視したやり方をとっていくであろう。また、当面ゼロ金利を維持することを強調したことで、金利上昇も抑制され、ジャパンマネーは再びリスク資産に向かいやすく、株式市場も、為替市場も安定した動きをするものと考えられる。
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GSEC指数を見ると、市場は円安予想にやや傾いている。量的緩和解除の後もゼロ金利は当面続くということで、市場は再び金利差に目を向け始めている。欧米は利上げサイクルの中におり、今後も利上げを継続していく公算が高いため、日本との金利差が益々拡大し、更なる円安を誘引する可能性は否定できない。3月28日のFOMCまで、当面新規材料が見当たらないため、どちらかといえば、円安に振れやすい環境にあるといえる。