2005年 10月15日の放送
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今週発表になった、米国の貿易収支の中で、対中貿易赤字は通関ベースで184億6800万ドルと前年同月に比べて20%増と大幅な増加となり、過去最高を更新している。中国は7月21日に2.1%の切り上げと通貨バスケット制の採用などを含む人民元の改革を実施したが、その後も米中の貿易不均衡はむしろ増加しているという結果になっている。
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7月21日の人民元改革により、中国人民銀行は人民元の1日の変動幅を0.3%以内に抑えていく制度を採用している。その後の人民元相場を見てみると、約3ヶ月経った現在も切り上げ時の水準から見て0.3%程度上昇しているのにとどまっている。つまり、3ヶ月間でたった1日の許容変動幅程度しか人民元高が進んでいないという状態になっている。こうした中国側の対応に米国内でも不満の声が大きくなってきている。12日-から3日にかけて行われていた4回目の米中繊維協議も合意に至らないまま終了したこともこうした声に拍車を掛けることになるであろう。
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本日より北京にてG20が行われる。G20では人民元の問題は議論されない予定であるが、スノー米財務長官は中国側と日非公式にこの問題について協議をすると表明している。アメリカ側は為替制度の柔軟性と中国の内需拡大を求めていることに対し、中国側は内需拡大の必要性は認めているものの、為替制度の柔軟性に対しては独自のペースでやっていくと強硬な姿勢を見せている。
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実際の中国当局の動きを見てみると、中国が人民元の一層の改革に向けて着々と準備を整えているのがわかる。7月21日人民元の改革後も8月9日にはそれまで4大中国国有銀行などに限っていた顧客向けの為替先物業務を外資系銀行に開放し、更には銀行間の為替先物取引も認めると発表した。また、9月23日には銀行の顧客向け直物取引のスプレッドを従来の0.4%から1.00%と一気に2.5倍拡大した。これにより、銀行側が収益的に十分な余裕を持って為替取引が行えるようになった。次の動きは為替スワップ取引の解禁とも言われている。このように為替市場の整備を行いながら、今後のゆっくりとしたペースで改革を進めていくであろう。
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今週のGSECは円安予想にかなり傾いている結果となっている。アメリカの利上げが継続され、日本のゼロ金利政策解除には時間がかかるため、今後金利差はまだ拡大していく。そういった中で、ジャパンマネーがまだまだ、アメリカに流れていくということを円安の理由として上げている市場関係者が多い。また、日本の企業の財務体質改善によって、日本から海外への直接投資も増加していくことを指摘する関係者もいた。他に材料が見当らない中、当面金利差がテーマとなる可能性は高く、緩やかに円安は続くと予想する。