2005年 7月2日の放送

< 1 >

 5月から6月にかけて主要通貨に対してドルが上昇基調にある。アメリカとそれ以外の国での景況感に開きが出てきていることが背景にある。アメリカは6月30日に短期金利を0.25%切り上げ3.25%とした。市場では、好調な消費、住宅価格の上昇などを材料として、年内の更なる利上げを予想している。一方、欧州景気は依然不透明で、先週のスウェーデンに続き、ポーランドも0.5%の利下げを実施した。ECB、BOEにも利下げ圧力がかかっている。日本経済は足元好調ではあるものの、当座預金残高目標の引き下げ観測も一時的に終わり、依然としてゼロ金利が続く環境の中、行き場のない投資マネーが再びアメリカに向かっている。そのため、ドル円も徐々に円安方向に向かい、111円台まで上昇している。

< 2 >

 6月26日ASEM財務相会議で中国の温家宝首相が人民元改革に対しての、中国の3つの原則を発表した。7月サミットが開催され、中国からは胡錦涛主席が出席する予定である。これに向けて、中国が何らかの方向性を出すのではないかという観測も一部ではあるものの、温家宝首相が発表した3つの原則を踏襲して、繰り返し中国の立場を主張すると考えるのが妥当であろう。米国からの切り上げ圧力の中、主体的に段階的にやるという宣言をしていることは、外圧に屈せず、時間をかけて行うという宣言と理解できる。人民元改革は当面実施されないと考えてよさそうである。

< 3 >

 今年の4月から5月にかけては、人民元の切り上げ観測が急速に強まり、人民元も先物レートも人民元高に推移した。しかし、それ以降は市場は比較的冷静で、度重なる切り上げ観測にもかかわらず、比較的に安定した動きを見せている。市場関係者も早急な切り上げに対して、かなり懐疑的になってきているの現われとも言えるかもしれない。人民元に安心感が出てきたことも最近の円安の追い風になっている。

< 4 >

 米国では産業界、議会とも中国に対する人民元の切り上げムード一色という状況になる。しかし、中国の地域別貿易の状況を見てみると、確かに、北米に対しては、大きな貿易黒字があるものの、対アジアで見ると、むしろ中国は貿易赤字国である。グローバルな視点で考えたときに、人民元の切り上げが世界全体にとって有効であるか、中国にとってはどうであるかははっきりと断定するのは困難である。

< 5 >

 GSEC指数は円安が進行しているにもかかわらず、来週は円高を予想するという意外な結果となった。やはり、今週かなり速いスピードで円安が進行したことに対する警戒感が市場にあるということであろう。また、今回の円安は一時的でせいぜい112円程度までと予想する人が多いため、ここからの円安展開というのをなかなか想像できないということも影響していると考えられる。