2005年 6月25日の放送
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ヨーロッパの利下げ観測が急浮上している。フランスが2005年の経済成長見通しを下方修正した。「ECBは利下げを視野に入れているが、行動は今後の指標次第」というECB筋からのコメントも報道されたことも利下げ観測に拍車をかけた。そんな中、6月21日にスウェーデン中銀が予想外の0.5%の利下げを実施したことが、市場に大きな衝撃を与えた。スウェーデンの利下げがECBの利下げを睨んでの動きではないかと読む市場関係者の多く見られ、発表後はユーロが大きく売られる局面もあった。
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そうした憶測を受けて、欧州の長期金利は再び低下傾向に入っており、10年物で3%という水準が視野に入ってきた。また、22日発表されたイギリス中央銀行の6月の金融政策委員会で2名が利下げを主張したという発表も大きく材料視され、長期金利は欧州全般を中心に低下している。こうした動きを受け、日欧の長期金利も低下したものの、為替市場では、欧州での金利低下が大きく影響し、欧州通貨安の動きとなった。
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しかしながら、スウェーデンの利下げとECBの利下げを関連つけるのには若干の無理があるように見受けられる。図表のとおり、ユーロ圏の物価上昇率とスウェーデンの物価上昇率とは大きな開きが身られ、ECBにとっては物価上昇率が依然2%前後にある中での利下げというのは非常に難しい判断である。
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更に、ECBにととっての、悩みの種は原油価格の動向である。原油価格はOPECが増産を決定した後も、むしろ上昇傾向にある。ECBは今後の物価上昇については比較的楽観的な見通しを立てているものの、今後のリスクファクターとして原油価格を上げている。つまり、原油価格が安定するという条件のもとで楽観的な見通しを立てているのであり、原油価格がこの先上昇していくと、見通しを変更する必要もでてくる可能性がある。市場は利下げを織り込みにいっているが、ECBが利下げの判断をするのは、まだ先のことになるであろう。
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GSEC 指数はドル高派とドル安派で真っ二つに分かれ、結果として中立予想となった。中期的にはユーロの下落を予想する関係者が多いが、目先はまだ、材料不足と判断しているようだ。ドル円に関しては、7月のサミットに中国の国家主席が出席することで、人民元の切り上げが早まるのではないかと予想する関係者もおり、円安ドル高方向にはなかなか行きにくい。また、来週末に発表される日銀短観にも注目が集まっており、なかなかレンジからは抜け出せないと予想している。