2005年 1月15日の放送

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 今週、12日に発表された米国11月分の貿易統計によると、同月の財・サービスでみた貿易赤字額は、史上最大の603億ドルとなり、市場の事前予想である540億ドルを大幅に上回った。また、3ヶ月移動平均でみても、昨年9月の赤字減少は一時的であり、10月以降も、貿易赤字は引き続き増勢が継続していることが確認された。これを受けて、外国為替市場では、再び米国の双子の赤字問題が注目され、昨年末以降、買い戻し基調が続いていたドル相場は、対円、対ユーロで反落した。

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 しかし、外貨国為替市場において、再び、米国の赤字問題が主要テーマとなり、ドル安基調が戻ってきたかといえば、そうではない。というのは、11月の米貿易赤字急増をうけた市場の反応は、やはり鈍いとしかいいようがないからである。例えば、ユーロドル相場は、同指標を受けて同日に1.6%上昇したに過ぎず、翌日以降は、逆に1.5%反落している。また、ドル円相場にも同様のことがいえる。 12日の指標発表を受けた対円でのドルの下落は1.4%にとどまり、しかも、昨年12月2日につけた1ドル=101円84銭の最近の最安値を越えてドルが下落しなかった事実は、相場の勢いのなさを如実に物語っている。

 やはり、市場のセンチメントは気迷いで、約半数が昨年10月来のドル安基調がいまだ継続しているとみているものの、残りの半数は、相場の流れが変わったのではと思い始めている状況といえよう。

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 そのような中で、今週の相場の特徴は、私が先週予想したとおり、ユーロの対ドルの調整は一段落したものの、対円ではユーロが一段と下落したことである。ユーロ円相場は、昨年12月30日に、1ユーロ=141円61銭の史上最高値まで上昇したが、いくら、海外中銀やオイルマネー等によるドルからユーロへのポートフォリオ・シフトがユーロを押し上げているとはいえ、ファンダメンタルズからみて、これはあまりにも行き過ぎである。この水準では、日本の製造業者のいかなる製品も、EU向けに大幅な価格競争力を確保できるといっても過言ではない。

 今週は、このような対円でのユーロのオーバーシュートが是正され、1ユーロ=134円台までユーロ安が進んだが、私は、この流れが当面継続するとみている。ちなみに、99年1月基準で、ユーロ円の購買力平価を算出すると、消費者物価では1ユーロ=113円、生産者物価では111円となる。99年1月基準には大きな意味はないが、ユーロが円に対して、フェア・バリューからユーロ高方向に大きく乖離していることは、どうやら間違いなさそうである。

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 さらに、物価格差を是正した実質でみた円は、対ユーロだけでなく、主要貿易相手国通貨全体に対して、いぜん割安といえる。これは、名目でみたドル円相場が、大幅な円高水準を示していることと対照的である。すなわち、名目ドル円相場を99年1月を100として指数化してみると(指数の上昇は円安、下落は円高)、現在の水準は、91.6と99年以降では、もっとも円高水準に達している。

 一方、同様に、 99年1月を100とする貿易加重平均でみた実質実効為替相場(同じく指数の上昇は円安、下落は円高)は現在113.2と、99年以降ではむしろ最も円安の水準で推移していることがわかる。このように、実質実効相場と名目ドル円相場の水準が2002年以降、大きく乖離しているのは、日本においてデフレが進展したことや、ユーロ高が進んだことが主因であるが、重要なことは、名目ドル円相場のみに注目して、円はすでに割高と判断することは早計であるといえよう。

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 前述したとおり、市場のセンチメントは気迷いで、約半数が昨年10月来のドル安基調がいまだ継続しているとみているものの、残りの半数は、相場の流れが変わったのではと思い始めている状況といえよう。また、今後、3週間は、1月20日のブッシュ大統領就任演説、1月30日のイラク国民議会選挙、2月1-2日の定例米連邦公開市場委員会(FOMC)、2月2日のブッシュ大統領の一般教書演説、2月4-5日のロンドンにおける先進7カ国財務相・中央銀行総裁会議(G7)、2月7日の米予算教書発表と、重要なリスクイベントが目白押しである。

 したがって、ドル円相場は、当面、引き続き明確な方向感がないまま、荒っぽいな動きが継続するとみている。GSEC指数も、44.4%と、ディーラー達の間にも、明確な相場の方向性は見出せない。そのような中で、対円でのユーロ高調整は継続し、来週1ユーロ=133円に向けて、ユーロが下落するとみている。