2004年 12月18日の放送
< 1 >
アジアは、域内通貨統合に向けての長い道のりを歩み始めたのかもしれない。日銀は、今週、アジア債券市場の育成に向けて、 EMEAP(東アジア・オセアニア中央銀行役員会議、注)メンバーの中央銀行によるアジア・ボンド・ファンド第二段階(ABF2)の開始を発表した。ABF2とは、アジア・オセアニア11カ国・地域の中央銀行・政府当局が、日本、オーストラリア、ニュージーランドを除く8カ国・地域の国債と政府機関債に投資するために、20億ドル規模の外貨準備を拠出して設立するファンドである。日銀もその報告の中で述べている通り、ABF2の開始は、アジア・オセアニア地域の中央銀行間協力の歴史に残る一里塚を築くものである。
注)EMEAP(Executives' Meeting of East-Asia and Pacific Central Banks)正式名称は、東アジア・オセアニア中央銀行役員会議。オーストラリア、中国、香港、インドネシア、日本、韓国、マレーシア、ニュージーランド、フィリピン、シンガポール、タイの11ヶ国・地域の中央銀行・通貨当局から構成される。
< 2 >
一方で、ユーロは、着実にドル・ユーロ2基軸通貨体制に向けて歩んでいるといえよう。IMFの発表によれば、世界の外貨準備占めるドルの比率が、99年の64.9%から2003年には63.8%に低下している対し、ユーロのそれは、同期間に、13.5%から19.7%へ上昇している。また、最近でも、ロシア中銀が、外貨準備にしめるユーロの比率を高めることを検討すると公表したり、また、外国為替市場では、アジアを初めとする各国中銀が、同様の目的から、ドル売りユーロ買いを行っているいわれている。冒頭にも、述べたように、これは、ドル基軸通貨体制から、ドル・ユーロ基軸通貨体制への長期的かつ不可逆的な流れに沿ったものであり、決して一時的な動きではない。
< 3 >
すなわち、最近のユーロの上昇を、ユーロが基軸通貨の片翼を担う動きと捉えるなら、ABF2の開始は、将来、アジア通貨が、第3の基軸通貨として誕生するための端緒といえよう。アジア経済では、水平分業の欧州経済と異なり、垂直的な分業が行われており、アジア通貨の安定は、域内経済の成長と物価の安定に資するものである。また、アジア域内の中産階級の勃興によって、域内の内需が拡大すれば、経済の対米依存度も次第に低下してこよう。そのように考えれば、経済主導で、アジア共同通貨が誕生する日も、それほど遠くはないであろう。東アジア各国の外貨準備を合計すると、2兆ドルを超える。各国がその10%を拠出しただけで、2000億ドルにものぼる共通通貨創設のためのファンド設立が可能である。中長期的なドル離れ・ドル安の流れは、不変であろう。
< 4 >
1ドル=101円台からの反発で始まったドル安の調整局面も106円台をつけたことで、ほぼ終了としたみてよかろう。私は、中長期的なドル安の流れに変更はないとみているが、外国為替市場のセンチメントは、これまで市場を支配してきた「経常赤字のドル安」と「日米景気格差のドル高」の間で、気迷っているように思われる。来週は、重要な経済指標の発表や注目されるリスク・イベントもなく、もうしばらく、ドル円相場は、方向感のない展開を継続するとみている。GSEC指数も39.5%と、ディーラー達の相場観も、やや円高といった感じである。