2004年 12月4日の放送

< 1 >

 外国為替市場においては、今週も最近のドル安の流れが踏襲され、ドル円相場は99年来の安値の101円84銭をつけ、ユーロドル相場も、1.1384ドルと史上最高値を更新した。そのよう中、外為市場が注目している貿易加重平均で見たドルの実効為替レート(対主要7通貨・名目、いわゆるドル・インデックス、FRB発表)が、11月24日に79.48(1973年3月=100)と、ドル円相場が史上最安値の80円割れを記録した1995年の水準まで下落したことで、ドルはもう十分下落しているのではとの見方が浮上してきた。さらに、日欧によるドル買い協調介入実施の観測も出てきたことで、週の後半には、ドルがやや買い戻される流れとなった。

< 2 >

 しかし、現在、市場でテーマとなっている巨額の米経常収支赤字との関連でドル相場の水準を考える場合、市場が注目している主要7通貨に対する名目指数ではなく、より多くの米国の主要貿易相手国通貨を含めたベースの、しかも、物価調整を行った実質指数で現在のドルの水準を図るべきである。そこで、同じくFRBが発表している37通貨ベースの実質実効ドル相場をみると、本年11月の水準は96.53(1973年3月=100)と、最近のピークである2002年2月の113.45よりは、14.9%下落しているものの、95年7月の84.51からはいぜん14.2%も割高となっており、GDP比で見た米国の経常収支赤字が5.7%と史上最高を更新していることを考慮すれば、決してドルはすでに十分下落しているとはいえない。

< 3 >

 また、円も決して過大評価されているわけではない。ドルの場合と同様に、現在の円の水準を、日銀発表の実質実効為替相場(主要15通貨ベース)をみると、本年11月(17日までの途中推計)には120.6(1973年3月=100)となっており、1985年のプラザ合意以降で比較すると、むしろ円安圏で推移しており、また、最高水準を記録した95年4月の165.5に比べると、27.1%も円安となっている。したがって、歴史的にみれば、いぜん、円の上昇余地は大きいといわざるを得ない。

< 4 >

 一方、12月1日にFRBが発表したベージュ・ブックや、このところのFRB高官の発言をみると、FRB内部で、米国のインフレを懸念する動きが出てきているようにみえる。先月発表された米国の物価指数を振り返ると、エネルギー価格の上昇がすでに生産者物価段階では、波及し始めているものの、消費者物価への明確が波及はいまだ確認することができない。しかし、ベージュ・ブックによると、複数の地域で、コストの上昇を販売価格に反映させる動きが強まってきたという。

 FRBが、将来本格的に物価上昇の抑制に動き始めるとすれば、インフレに間違いなく悪影響を及ぼすドルの下落にFRBが何らかの懸念を表明する動きが出てくる可能性もある。そうなれば、最近のドル安の流れは終焉を迎えることになろう。

< 5 >

 以上みてきたように、実質実効為替相場で測れば、ドルはいまだ十分安くなったとはいえず、また、円の上昇余地も大きいといわざるを得ない。一方、FRB内部では、インフレを懸念する動きが出ているようであるが、FRBがドル安のインフレに与える悪影響に対して懸念を表明するまでには、まだ、しばらく時間がかかろう。したがって、最近のドル安の流れは、今後も、継続すると可能性が高いとみることができる。今週は、一旦、ドル安の調整局面を迎えた外国為替市場であるが、早晩、ドル安トレンドが復活し、1ドル=100円割れが実現すると私はみている。GSEC指数は42.3%と、市場が調整局面にあることを示している。