2004年 10月23日の放送

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 先週のこのコーナーでは、私が最近ニューヨークを訪れた折に、現地の政策担当者や金融機関の経営者たちの間にみられた4つのコンセンサスについてのべた。それらを、簡単に振り返ると、第一に、彼らは、米国経済に対して非常に楽観的であり、今後の数四半期における米国経済の予測成長率は3%後半から4%台がコンセンサスであった。また、FRBが中立とするFFレートの水準も3.5%から4.0%という見方が多かった。第二に、原油価格は、需給構造からみて今後も高止まりするが、多くの人は、原油価格の上昇が米国経済に与える悪影響を比較的軽微なものとみていた。

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 第三に、これは、今回の出張において、私の最大の驚きであったのであるが、GDP比で年率6%に迫る米国の経常収支は長期的に維持不可能であり、したがって、米国経済にとって問題であり、しかも、ドルの下落が経常収支赤字の削減にある程度寄与すると主張する人々があまりにも多かった。最後に、実に多くの人が、中国は、数年以内に、中国元を切り上げるか、あるいは、柔軟な為替制度の導入するとみていた。そして、元の切り上げが米国の経常収支赤字の削減にある程度寄与すると考えられていた。

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 それを踏まえて、私が持った疑念は、1)米国の成長率や労働生産性の実績、あるいは、予測が下方修正されたとき、2)特に、1バレル=50ドルを超える原油価格の悪影響が彼らの予想を凌ぐものだったとき(米国のエネルギー効率は、G3中最悪であることに留意すべきである)、これが、3)経常収支赤字への懸念や、その削減のためにドル安を容認するコンセンサスと結びつき、米国政府が市場で生じるドル安を容認する蓋然性はきわめて高いものとなるというものである。特に、雇用増加が抑制されれば、政治的なドル安圧力に繋がる可能性も小さくない。多くの米国の政策担当者が中国元の切り上げを期待している中、中国政府がそれを先延ばしした場合、政治的な元の切り上げ圧力が激化することは必至であろう。 ブッシュ大統領、ケリー候補のどちらが大統領選で勝っても、ドルは、今後数ヶ月間に、100円程度まで下落するとみる。

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 この場合、ポイントとなるのは、わが国財務省の介入政策である。昨年の1月から本年3月までに、財務省が実に35兆円にのぼる円売り介入を実施したことは記憶に新しいが、これは極めてアブノーマルな状態であったといえよう。また、このときからみると、財務省の介入チームは交代しており、新チームは、もっと戦略的な介入政策を採用する可能性が高い。たとえば、現在、市場では、輸出企業の採算レートが1ドル=105円前後になっていることから、その水準では介入が再開されると見る向きが多いと聞く。しかし、効果的な介入とは市場の期待を裏切るものであるから、財務省はわざとその水準をはずしてくるかもしれない。また、現在の日本経済の状況をみても、1ドル=100円程度の円高であれば、十分耐久力がある。さらには、一般的に言えば、米国の大統領選挙前、あるは、選挙後であっても、ケリー候補が勝った場合、正式に政権が発足するまでのあいだに、大規模な介入をやりにくいことは確かである。案外、為替介入の再開は1ドル=100円を切ってからということになるかもしれない。

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 さて、これまで述べてきたような米国大統領選後をにらんだ米国の景気減速、経常収支赤字によるドル安シナリオは、すでに、海外投機筋によって、外国為替市場で具現化しつつある。したがって、今後も、全般的なドル安基調が継続する中、ドル円相場も頭の重い展開が予想される。特に、来週金曜日に発表される米国第3四半期のGDP統計が、事前予想の前期比年率4.1%を大幅に下回ることになれば、ドル円相場も、いよいよ105円を目指す展開となろう。ただ、GSEC指数は56.7%となっており、ディーラーたちは、ここまでのドル下落が急ピッチであったこともあり、一時的なドルの買戻しを予想しているようである。